特定活動46号ビザとは?要件や技人国(ぎじんこく)ビザとの違いについて
【更新2025.05.07】わかりやすく加筆修正をおこないました。
「日本の大学を出たけど就きたい仕事が『技術・人文知識・国際業務』ビザに合うか心配…」
「うちの店で頑張ってくれている留学生アルバイトに、卒業後も接客や現場作業を含めて活躍してほしいんだけど…」
外国人材の採用や日本での就職活動において、こんな風に悩んでいませんか?
そんな時に頼りになる選択肢が近年注目されている「特定活動46号」という在留資格です。従来の就労ビザでは難しかった働き方も、この制度なら実現できるかもしれません。
どんな目的でできた制度なのか、取得するための詳しい条件、どんな仕事ができるのか具体例を挙げながら説明しよく比較される「技術・人文知識・国際業務(ぎじんこく)」ビザとの違いも明らかにしていきます。企業の採用担当者の方にも、日本での就職を目指す外国人ご本人にも役立つように、申請手続きのポイントやメリット・デメリットも、2025年現在の最新情報をもとに分かりやすくお伝えしますね。特定活動46号の全体像をつかみ、可能性を広げるための一歩にしてください。
目次
- 特定活動46号ビザの基本概要
- 【重要】特定活動46号ビザの取得要件をチェック!
- 特定活動46号でできる仕事・できない仕事
- 「技術・人文知識・国際業務」ビザとの違いと比較
- 特定活動46号ビザのメリット・デメリット
- Q1. 特定活動46号ビザの在留期間はどのくらいですか?更新に回数制限はありますか?
- Q2. 特定活動46号で働いていますが、別の会社に転職することはできますか?その場合の手続きは?
- Q3. 特定活動46号で働く場合、家族(配偶者や子供)を日本に呼ぶことは可能ですか?
- Q4. 特定活動46号の在留期間は、将来の永住権(永住者ビザ)申請に役立ちますか?
- Q5. 特定活動46号ビザで働きながら、副業としてアルバイトをしても良いですか?
- Q6. 日本の専門学校を卒業していれば、誰でも特定活動46号の対象になるのでしょうか?
- まとめ:特定活動46号を理解し、外国人材活用・キャリア形成へ
特定活動46号ビザの基本概要
「特定活動46号」という在留資格について最近耳にするけれど詳しくは知らない、という方もいらっしゃるかもしれません。
ここでは特定活動46号ビザがどのような理由で設けられ、どんな目的を持つのか、そして数ある在留資格の中でどのように位置づけられているのか、その基本的な事柄を解説します。まず、この制度の成り立ちを理解することが重要です。
創設の背景と目的:なぜこのビザが作られたのか?
特定活動46号は2019年5月にスタートした比較的新しい在留資格制度です。
この制度が生まれた背景には、日本の産業界における人手不足の問題と、日本で学ぶ外国人留学生の増加という二つの側面があります。
これまで日本の大学などを卒業した留学生が日本で働く場合、主に「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得するのが一般的でした。しかし、このビザは大学での専攻と仕事内容が関連している必要があり、専門職に限られるという制約がありました。そのため、例えば飲食店の接客スタッフや工場の製造ライン作業員など、いわゆる現場系の仕事に就くことは原則として認められておりませんでした。
一方で、日本の高等教育を受けた留学生は、専門分野の知識だけでなく、流暢な日本語能力や日本文化への適応力も身につけています。これらの能力は、多様化する企業の現場ニーズにとって非常に価値が高いと考えられます。
そこで優秀な留学生が卒業後も日本に定着し、その能力をより柔軟に活かせる環境を作るため、就労できる業務の範囲を広げた「特定活動46号」が創設されました。留学生の国内でのキャリア選択肢を増やし、同時に企業の幅広い人材需要に応えることを目指した制度なのです。
「特定活動」とは?:他の在留資格との位置づけ
そもそも「特定活動」という在留資格自体が少し特殊な位置づけにあります。
これは「技術・人文知識・国際業務」や「留学」、「技能実習」といった明確に活動内容が定められた在留資格のどれにも当てはまらない活動をする外国人に対して、法務大臣が個別に「あなたは日本でこういう活動をしても良いですよ」と許可を与えるものです。多種多様な活動をカバーするための、いわばオーダーメイドのような在留資格と言えるかもしれません。
現在この特定活動には非常に多くの種類があり、その中でもあらかじめ法律(告示)で活動内容が定められているものを「告示特定活動」と呼び、特定活動46号もこの告示特定活動の一つです。46号は告示特定活動の中でも特に「日本の大学等を卒業した者」という対象者を限定し、一定の条件を満たせば幅広い就労を認める、特別なカテゴリーとして設けられています。
2024年2月の重要改正:対象者の拡大について
特定活動46号の制度は時代の要請に合わせて進化しています。
特に大きな変化があったのが、2024年2月29日に施行された法務省告示の一部改正です。この改正によって、特定活動46号を取得できる人の範囲がぐっと広がりました。それまでは日本の4年制大学または大学院を卒業・修了した人に限られていましたが、改正後は、日本の短期大学や高等専門学校(高専)を卒業して「学士」の学位を取得した人、さらに、文部科学大臣から「外国人留学生キャリア形成促進プログラムの認定」を受けた専門学校を修了し「高度専門士」の称号を得た人も、新たに特定活動46号の対象者に加わりました。
この要件の緩和は、より多様なバックグラウンドを持つ優秀な外国人留学生が日本で活躍できる道を開いたと言えます。企業にとっても、採用できる人材のプールが広がった点で、非常に意義深い改正です。
【重要】特定活動46号ビザの取得要件をチェック!
特定活動46号ビザは確かに幅広い業務への道を開く可能性を秘めていますが、誰でも簡単に取得できるわけではありません。
申請にあたっては、学歴、日本語のスキル、雇用の形態、そして担当する仕事内容について、いくつかのクリアすべき重要な条件が定められています。ここでは、特定活動46号ビザを得るために満たす必要のある具体的な要件を、一つひとつ丁寧に確認していきましょう。ご自身、あるいは採用を検討している方がこれらの条件に合っているか、事前にしっかりチェックすることが、申請準備のスタートラインです。
入管が示しているガイドラインには以下のように明示されています。
本邦大学等卒業者が本邦の公私の機関において、本邦の大学等(大学、大学院、短期大学、高等専門学校、短期大学等の専攻科及び認定専修学校専門課程をいう。以下同じ。)において修得した学修の成果等のほか、留学生としての経験を通じて得た高い日本語能力を活用することを要件として、幅広い業務に従事する活動を認めるものです。
それでは詳しく見ていきましょう!
学歴要件:どの学校を卒業していれば対象?
まず基本となるのは学歴のバックグラウンドです。
特定活動46号では、日本の教育機関で所定の課程を修了した方に限定されます。具体的には、日本の四年制大学を卒業した方、あるいは大学院を修了した方が主な対象者です。
加えて、2024年2月に行われた制度の見直しにより、日本の短期大学または高等専門学校(高専)を卒業し、その上で独立行政法人大学改革支援・学位授与機構から「学士」の学位を正式に授与された方も対象となりました。
さらに専門学校卒業生についても道が開かれましたが、その学校・学科が文部科学大臣によって「外国人留学生キャリア形成促進プログラムの認定」を受けた専門学校を修了し「高度専門士」の称号を持っている場合に限り、学歴要件を満たすと認められます。
重要な注意点として、海外の大学や大学院の卒業資格、あるいは日本の日本語学校を卒業しただけでは、この特定活動46号の学歴要件を満たしません。あくまで日本国内の指定された教育機関での学修歴が求められるのです。
日本語能力要件:どのレベルが必要?
特定活動46号ビザが他の就労ビザと一線を画す点として、非常に高いレベルの日本語能力が要求されることが挙げられます。
申請者は、その卓越した日本語力を客観的に証明しなくてはなりません。証明方法としては、主に二つのルートがあります。
一つは、広く実施されている「日本語能力試験(JLPT)」において、最高レベルである「N1」に合格していること。
もう一つは、ビジネスシーンでの日本語運用能力を測る「BJTビジネス日本語能力テスト」で480点以上のスコアを獲得していることです。これらの高い基準は、申請者が複雑な業務上のコミュニケーションも含め、日本語で円滑に対応できる能力を持つことの証明となります。
ただし、例外も存在します。日本語を専攻して大学を卒業していることです。この場合、海外の大学も該当します。大学等で専門的に日本語を学んだ事実が、高い語学力の証明として認められるためです。
雇用条件:どんな働き方が求められる?
特定活動46号ビザの申請には日本国内の企業や団体(公私の機関を問いません)との間で結ばれた、適切な雇用契約が不可欠です。
この雇用契約は、二つの重要な条件を満たしている必要があります。第一に、雇用形態が「フルタイム(常勤)」であることです。短時間勤務のパートタイムやアルバイト、または派遣会社から派遣される形態での就労は、この在留資格の対象外となります。安定した雇用関係の下で活動することが前提条件なのです。第二に、給与水準に関する規定です。外国人であることを理由に不当に低い賃金を設定することは許されません。もし同じ職場で同様の業務に従事している日本人がいる場合、その日本人従業員と同等額以上の給与を受け取ることが明確に求められています。
これは外国人労働者の適正な待遇を保証するための重要なルールです。
業務内容の要件:どんな仕事内容である必要がある?
最後に実際に従事する仕事の内容についても、特定の要件を満たす必要があります。
特定活動46号で許可される業務は、まず「日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務」でなければなりません。これは、単に日本語の指示が理解できるレベルを超え、例えば日本人のお客様への丁寧な接客、外国人スタッフへの通訳や業務指示、取引先との日本語での交渉や調整など、相手との間で日本語による双方向のやり取りが不可欠な業務を意味します。
さらに、その業務は、申請者が日本の大学等で「習得した広い知識や応用的な能力等を活用するもの」であることも求められます。卒業した学部や学科の専門分野と完全に一致している必要まではありませんが、大学等での学びが何らかの形で活かされる業務内容であることが期待されています。したがって、日本語でのコミュニケーション能力がほとんど求められず、学んだ知識も活用されないような、単純作業のみの業務に従事することは、原則としてこの在留資格では認められないと考えてください。
これらの要件はすべて満たす必要があります。一つでも欠けていると、残念ながら特定活動46号ビザの取得は難しくなります。
特定活動46号でできる仕事・できない仕事
特定活動46号ビザの大きな魅力は従事できる業務の範囲が比較的広い点にあります。
「技術・人文知識・国際業務(ぎじんこく)」ビザではカバーしきれなかった分野の仕事にも就けるチャンスが広がります。しかし、「どんな仕事でもOK」というわけではありません。ここでは、具体的にどのような業務が特定活動46号で認められ、逆にどのような業務は対象外となるのか、その境界線を明確にしていきます。採用計画を立てる企業担当者の方も、日本での就職を目指す外国人の方も、ぜひ参考にしてください。
認められる業務の具体例(日本語活用がポイント)
特定活動46号で働く上で最も大切なのはその仕事が「日本語を用いた円滑な意思疎通を必要とする」こと。
そして「大学等で学んだ広い知識や応用力を活かせる」要素を含んでいることです。
この二つの条件を満たせば、様々な業種で活躍の道が開けます。
例えば、飲食業においては、単に料理を運んだり作ったりするだけでなく、外国人のお客様に通訳をしながら接客する、あるいは日本人のお客様にメニューや食材について流暢な日本語で説明するといった業務が考えられます。店舗運営に関わる管理業務やスタッフ教育なども含まれるでしょう。ただし、厨房での皿洗いや清掃作業のみを専門に行うことは認められません。
製造業の現場であっても、可能性があります。
工場の生産ラインで作業しつつ、日本人管理者からの指示を他の外国人従業員や技能実習生に彼らの母国語で分かりやすく伝えたり、作業方法を指導したりする役割は、特定活動46号の対象となり得ます。また、大学で学んだ工学系の知識を活かして品質管理や工程改善に関わる業務も該当するでしょう。
しかし特別な日本語能力や専門知識を必要とせず、指示通りに黙々と部品を組み立てるだけの作業は、通常認められません。
小売業、例えばデパートやアパレルショップなどでは、語学力を活かして外国人観光客に商品説明や免税手続きの案内をする通訳兼販売スタッフとしての業務が考えられます。
また、市場調査やマーケティングの知識を活かして商品の仕入れ計画を立てたり、魅力的な売り場作りを企画したりする業務も可能です。しかし、商品の陳列作業やレジ業務、店内の清掃作業だけを担当する場合は、認められない可能性が高いです。
宿泊業、ホテルや旅館などでは、フロントでの接客が代表例です。
外国人宿泊客への通訳案内や予約管理はもちろん、日本人のお客様に対しても質の高い日本語で対応する業務が求められます。翻訳スキルを活かして、多言語対応のウェブサイトを作成したり、館内案内を整備したりする仕事も良いでしょう。ただし、客室の清掃やベッドメイキングのみを行う業務は対象外です。
運輸業に目を向けるとタクシードライバーとして働きながら、その語学力で外国人観光客向けに観光案内を行うような、付加価値の高いサービスを提供する業務などが考えられます。単に車を運転するだけでは、要件を満たすのは難しいでしょう。
これらはあくまで例ですが、どの業種であっても共通するのは、単なるルーチンワークや肉体労働だけでなく、日本語での高度なコミュニケーション能力や、大学等で身につけた思考力・応用力が求められる業務内容である必要がある、という点です。
認められない業務
一方で、特定活動46号ビザでは明確に従事することができない業務も存在します。
第一に、「日本語を用いた円滑な意思疎通」も「大学等で習得した知識・能力の活用」もほとんど必要とされない、単純作業とみなされる業務だけに従事することはできません。工場での単純な組み立て作業、倉庫でのピッキング作業、清掃作業、皿洗いなどがこれにあたります。
第二に、日本の法律で禁止されている風俗営業に関連する業務、例えば、接待を伴う飲食店(キャバクラなど)やゲームセンター、パチンコ店などでの業務は一切認められません。
第三に、医師、弁護士、建築士、美容師など、その業務を行うために日本の国家資格が必須とされている「業務独占資格」が必要な仕事については、当然ながらその資格を持っていなければ就くことはできません。
「技術・人文知識・国際業務(ぎじんこく)」ビザとの違いと比較
外国人の方が日本で働く際よく耳にする在留資格が「技術・人文知識・国際業務(略して『ぎじんこく』)」ビザでしょう。
特定活動46号は、この技人国ビザとしばしば比較されます。どちらも日本の大学等を卒業した方が対象となることが多いものの、許可される仕事の範囲や求められる条件には、はっきりとした違いがあります。この章では、二つの在留資格の違いを浮き彫りにし、どちらがご自身や採用したい人材にとってより適しているかを見極めるためのポイントを解説します。正しいビザを選ぶことは、申請をスムーズに進め、日本で安定して働くための第一歩です。
業務範囲の広さ:最大の違いはここ!
両者の最も大きな隔たりは、従事できる仕事内容の範囲にあります。
技人国ビザは、基本的に大学などでの専攻分野と関連のある専門的・技術的な仕事、あるいは外国文化に関する知識や感性が必要とされる仕事に限定されます。
具体例としては、エンジニア、プログラマー、デザイナー、翻訳者、通訳者、語学教師、企業の経理・人事・マーケティング担当者など、いわゆるオフィスワーク中心の職種が主です。工場でのライン作業や店舗での接客販売といった、現場での作業(一般に単純労働と見なされる業務)を主たる業務とすることは、原則として認められていません。
それに対して特定活動46号は「日本語を用いた円滑な意思疎通能力」と「大学等で得た知識・能力の活用」が求められる仕事であれば、技人国ビザでは難しかった製造現場での作業(ただし指導や通訳を含む)や、飲食店・小売店での接客サービスなども対象となり得ます。
この職務範囲の柔軟性が、特定活動46号の最大の特色と言って良いでしょう。
学歴と業務の関連性:特定活動46号は緩和
技人国ビザを申請する際には、卒業した学校での専攻内容と、就職先で行う予定の仕事内容との間に関連性があるかどうかが、入国管理局によって厳しく審査されます。
例えば、文学部を卒業した方がITエンジニアとして働く場合などは、その関連性を合理的に説明できなければ許可を得るのは容易ではありません。一方、特定活動46号では、大学等で習得した「広い知識や応用的な能力」を活かす業務であれば認められるため、学歴と仕事内容の直接的な結びつきは、技人国ビザほど厳密には問われない傾向にあります。もちろん、全く無関係というわけにはいきませんが、より幅広く解釈される可能性が高いです。
この点は、大学での学びとは異なる分野に挑戦したいと考えている留学生にとって、特定活動46号が魅力的な選択肢となる理由の一つです。
日本語能力要件:明確な基準の有無
求められる日本語のレベルにも違いがあります。
技人国ビザの場合「日本語能力試験N●以上」といった明確な公式基準はありません。しかし、当然ながら担当する業務を支障なく遂行できるレベルの日本語能力は必要とされます。それに対し、特定活動46号を取得するには「日本語能力試験(JLPT)でN1に合格」しているか、「BJTビジネス日本語能力テストで480点以上を取得」している、という非常に高いレベルの日本語能力を客観的な証明書で示すことが必須条件です(ただし、大学等で日本語を専攻して卒業した場合は免除)。
この明確で高いハードルが設定されていることからも、特定活動46号が日本語での高度なコミュニケーション能力を前提とした活動を想定していることがうかがえます。
転職の自由度:手続きの違い
日本で働き始めた後、別の会社へ転職する場合の手続きも異なります。
特定活動46号では、許可時に就労する企業名が「指定書」という形で明記され、パスポートに貼付されます。
そのため、転職して働く会社が変わる場合は、たとえ新しい仕事内容が特定活動46号の活動範囲内であったとしても、必ず事前に入国管理局へ「在留資格変更許可申請」を行い、許可を得なければなりません。指定書に記載されていない企業で働くことは認められていないため、転職の都度、この変更手続きが必須となる点に十分注意してください。
どちらを選ぶべきか?判断のポイント
さて、技人国ビザと特定活動46号、どちらの申請を目指すのが良いのでしょうか。
選択の決め手となるのは、やはり「どのような仕事に就きたいか(就かせたいか)」という点です。もし、その仕事がエンジニアリング、国際業務、マーケティングなど、明らかに技人国ビザの対象となる専門的業務であり、かつ大学等での専攻との関連性も説明できるのであれば、転職のしやすさや初回から長い在留期間を得られる可能性を考慮すると、技人国ビザが有利かもしれません。
一方で飲食店のホールスタッフ、工場のライン管理(通訳・指導含む)、小売店の接客販売など、技人国ビザでは許可が下りにくい業務内容を希望する場合や、学歴と業務の直接的なつながりが弱い場合には、特定活動46号が唯一の、あるいはより適切な選択肢となるでしょう。
もちろん特定活動46号を目指すには、N1レベルの高い日本語能力が必須条件となります。企業の採用戦略やご本人の将来設計を踏まえて、どちらの在留資格が最も適しているかを総合的に判断することが大切です。
特定活動46号ビザのメリット・デメリット
特定活動46号ビザはこれまでの就労ビザとは異なる特徴を持っています。
そのためこのビザでの受け入れを考える企業にとっても、取得を目指す外国人ご本人にとっても、それぞれに良い面と注意すべき点があります。この章では、双方の立場から見た特定活動46号ビザの利点と課題を整理し、この在留資格への理解を深めていきましょう。導入を判断する上で、これらの点を総合的に見極めることが大切です。
企業側のメリット・デメリット
まず企業側から見たメリットです。
最大の利点は、採用できる職種の選択肢が大きく広がることでしょう。「技術・人文知識・国際業務」ビザでは採用が難しかった飲食店の接客担当や、製造ラインでの管理・指導業務、小売店の販売スタッフといった職種でも、高い日本語能力を持つ優秀な人材を迎える道が開かれます。人手不足に悩む様々な業界にとって、これは非常に大きな魅力となるはずです。また、日本語能力試験N1レベルという高い語学力が要件となっているため、お客様対応や社内でのコミュニケーションがスムーズに行える即戦力人材を確保しやすい点も見逃せません。
日本の大学等で学んだ経験から、日本の文化や働き方への理解も期待でき、職場への早期適応が見込まれるでしょう。さらに、これまでアルバイトとして活躍してくれた能力の高い留学生を、卒業後そのまま正社員として雇用し続けたい、といったニーズにも応えやすい制度です。
一方で、企業が注意すべき点もあります。
特定活動46号の申請や更新に関わる手続きは、他の就労ビザに比べてやや手間がかかると感じるかもしれません。特に、従事させる業務内容が「日本語を用いた円滑な意思疎通」や「知識・能力の活用」という要件をどう満たすのか、雇用理由書などで具体的に説明する必要があります。
また、このビザは働く会社が指定されるため、採用した人材がもし転職するとなると、企業側も退職に伴う入管への届出などの手続きが発生します。そして、そもそも申請できる人が、日本の大学等を卒業し、かつ日本語能力N1レベル以上という条件を満たす人に限られるため、採用対象者の母集団が狭まる点は認識しておく必要があります。自社が求める人物像と、このビザの要件がマッチするかどうか、よく検討することが求められます。
外国人側のメリット・デメリット
次に外国人ご本人の視点でのメリット・デメリットです。
最も大きなメリットは、日本で就ける仕事の選択肢が格段に増えることでしょう。大学での専攻と直接関係のない分野、例えば興味を持っているサービス業や製造業など、これまで留学生の就職先としては難しかった業界にもチャレンジしやすくなります。これは、日本でのキャリアプランをより自由に描けるようになることを意味します。また、特定活動46号ビザでは、条件を満たせば配偶者や子供といった家族を日本に呼び寄せ、一緒に暮らすことが可能です。(家族は特定活動47号を取得)
家族の存在は、異国での生活において大きな心の支えとなるでしょう。さらに重要な点として、特定活動46号で日本に滞在した期間は、将来的に永住者ビザを申請する際に必要な日本での居住歴や就労歴として認められます。つまり、このビザで真面目に働き、納税などの義務を果たしていけば、日本に永住するという目標にも近づけるのです。在留期間の更新回数にも上限はありません。
しかし、外国人本人にとっても知っておくべきデメリットがあります。
第一に取得の前提条件となる日本語能力のハードルが非常に高いことです。日本語能力試験N1合格、またはBJTビジネス日本語能力テストで480点以上というのは、かなりの努力を要するレベルです。
第二に転職の自由度が低い点です。働く会社を変えるたびに、必ず在留資格の変更許可申請という手続きが必要になり、時間も手間もかかります。「技術・人文知識・国際業務」ビザのように、比較的容易に職場を移ることはできません。
第三に特に留学ビザから初めて特定活動46号に変更する場合や、その後の最初の更新では、在留期間が「1年」と短めに許可されるケースが多いという実情があります。安定した長期の在留資格を得るまでには、数回の更新手続きが必要になる可能性を考慮しておくべきです。
特定活動46号に関するQ&A
特定活動46号ビザについて、基本的な情報から申請要件、仕事内容、他のビザとの違いまで見てきました。
しかしいざ自分が申請する、あるいは採用するとなると、「こういう場合はどうなるの?」といった、より具体的な疑問が出てくることでしょう。このセクションでは、特定活動46号に関して、特に多く寄せられる質問とその答えをQ&A形式でまとめました。皆さんの疑問点をクリアにする手助けになれば嬉しいです。
Q1. 特定活動46号ビザの在留期間はどのくらいですか?更新に回数制限はありますか?
A1. 特定活動46号で許可される在留期間は、5年、3年、1年、6ヶ月、3ヶ月のいずれかとなります。
どの期間になるかは、入国管理局が個々の申請内容や雇用主である企業の安定性などを総合的に審査して決定します。ただし、実務上、特に「留学」ビザから初めて特定活動46号に変更する場合や、その後の最初の更新申請では、「1年間」の在留期間が許可されるケースが多いようです。更新に関してですが、回数に上限は設けられていません。
特定活動46号の要件を満たし続けている限り何度でも更新申請を行うことができ、日本での滞在を継続することが可能です。
Q2. 特定活動46号で働いていますが、別の会社に転職することはできますか?その場合の手続きは?
A2. 転職すること自体は可能ですが、手続きが必要です。
特定活動46号は、許可を受けた特定の会社(パスポートに添付される指定書に記載された会社)でのみ働くことが認められています。そのため、他の会社に移る場合は、たとえ新しい仕事内容が特定活動46号の活動範囲内であっても、必ず事前に入国管理局に対して「在留資格変更許可申請」を行い、許可を得なくてはなりません。
許可が出る前に新しい会社で働き始めることはできませんので、転職活動のスケジュール管理には十分注意しましょう。内定を得たら、速やかに変更申請の手続きを開始することが重要です。
Q3. 特定活動46号で働く場合、家族(配偶者や子供)を日本に呼ぶことは可能ですか?
A3. はい、特定活動46号の在留資格を持つ方が、ご自身の収入で扶養する配偶者(夫または妻)やお子さんについては、「特定活動(告示47号)」という在留資格を申請することで、日本で一緒に暮らすことが認められる可能性があります。
ただし、大前提として、申請者本人に家族全員を安定して養えるだけの経済力があることを証明する必要があります。申請時には、婚姻証明書や出生証明書といった家族関係を証明する書類のほか、申請者本人の収入や資産を証明する書類などが求められます。
Q4. 特定活動46号の在留期間は、将来の永住権(永住者ビザ)申請に役立ちますか?
A4. はい、役立ちます。
永住許可を申請するための要件の一つに「原則として継続して10年以上日本に在留し、そのうち就労系の在留資格で5年以上在留していること」があります。特定活動46号は「就労資格」として扱われますので、このビザで日本に滞在した期間は、永住申請に必要な「就労資格での5年以上」の期間にカウントされます。
したがって、特定活動46号で真面目に働き、納税などの義務を果たしていれば、将来的に永住許可を申請する道が開けています。
Q5. 特定活動46号ビザで働きながら、副業としてアルバイトをしても良いですか?
A5. 原則、認められていません。
特定活動46号は、あくまで許可された会社でのフルタイム(常勤)の活動を行うための在留資格です。指定された活動以外の仕事(アルバイトや他の会社の業務など)をして収入を得ることは、資格外活動となり、許可なく行うことはできません。もしどうしてもアルバイト等を行いたい場合は、事前に入国管理局に「資格外活動許可」を申請し、許可を得る必要があります。しかし、特定活動46号はフルタイム就労が前提のため、資格外活動が許可されるケースはかなり限定的だと考えられます。
Q6. 日本の専門学校を卒業していれば、誰でも特定活動46号の対象になるのでしょうか?
A6. いいえ、全ての専門学校卒業生が対象となるわけではありません。
専門学校卒の方が特定活動46号の対象となるためには、二つの重要な条件があります。第一に、卒業した専門学校の学科が、文部科学大臣によって「外国人留学生キャリア形成促進プログラムの認定」を受けていること。第二に、その認定学科を修了し、卒業時に「高度専門士」の称号を授与されていることです。この両方を満たしている必要がありますので、ご自身の卒業校と学科がこれらの条件に合致するかどうか、事前にしっかりと確認することが非常に重要です。
まとめ:特定活動46号を理解し、外国人材活用・キャリア形成へ
この記事を通じて、特定活動46号ビザの全体像をご理解いただけたでしょうか。
この在留資格は、日本の大学や専門学校等で専門知識と高い日本語能力を身につけた外国人の方々が、日本社会の様々な分野で活躍するための道を開くものです。
従来の「技術・人文知識・国際業務」ビザでは難しかった、現場作業や接客を含むより広い範囲の業務への従事を可能にする点が、特定活動46号の際立った特徴です。
企業にとっては、人手不足が続く分野においても、日本語が堪能で日本の教育を受けた優秀な人材を採用する好機となります。特に、留学生アルバイトを正社員として登用したい場合には、非常に有効な選択肢となるでしょう。
外国人ご本人にとっては、自身の学歴や専門分野に過度に縛られることなく、多様なキャリアパスを描ける可能性が広がります。家族と共に日本で暮らし、将来的には永住を目指すことも可能な、魅力ある在留資格と言えます。2024年の対象者拡大により、その門戸はさらに広がり、今後ますます活用が進むことが予想されます。
ただし、メリットばかりではありません。特定活動46号を取得するには、N1レベルの日本語能力をはじめとする厳しい要件をクリアする必要があります。また、就労先が指定されるため、転職の際にはその都度、在留資格の変更申請という手続きが必要になる点は理解しておくべきです。申請手続き自体も、必要書類が多く、準備には相応の時間と注意が求められます。企業担当者の方も、外国人ご本人も、この制度の特性を正確に把握し、計画的に準備を進めることが、スムーズなビザ取得と、その後の日本での成功への第一歩となります。
私たちは外国人ビザ申請専門の行政書士法人です。年間350件超のサポート実績。オンライン申請で全国の入国管理局への申請代行が可能です。失敗しないビザ申請ならお任せください。
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行政書士法人35
代表行政書士 萩台 紘史
2021年4月 SANGO行政書士事務所を開業
2023年9月 法人化に伴い「行政書士法人35」を設立
外国人の就労ビザ申請に専門特化した事務所として年間350件超の就労ビザ申請をサポート