外国人が国民健康保険に加入する際の要件や流れについて解説!
日本で生活を始められた、あるいは生活が長くなってきた外国人の方にとって、病気やケガをしたときの医療費は大きな心配事の一つではないでしょうか。
日本の優れた医療サービスを安心して利用するためには、公的な医療保険制度への理解が欠かせません。
日本に住む多くの外国人の方が関わることになる医療保険が「国民健康保険」
通称「国保」です。
「自分は国保に加入する義務があるのだろうか?」
「加入手続きは具体的にどうすれば良い?」
「保険料は一体いくらくらいかかるのか?」
といった疑問や
「最近話題のマイナンバーカードと保険証の関係は、私たち外国人にも関係あるの?」
という新しい変化への戸惑いもあるかもしれません。
国民健康保険は、日本に住む上で非常に重要な制度であり、加入が法律で義務付けられている場合も多くあります。
制度を知らないままでいると、いざという時に高額な医療費を全額自己負担することになったり、後から未払い分の保険料を一括で請求されたりする可能性も否定できません。
この記事では、2025年現在の最新情報に基づき、日本に在留する外国人の方々を対象に、国民健康保険の基本的な仕組みから解説します。
具体的には、誰が加入しなければならないかという加入要件、加入や脱退の手続きの流れ、必要となる書類、気になる保険料の計算方法や支払い、そして保険で受けられる医療サービスの内容、さらに2024年末から本格的に始まったマイナンバーカードの保険証利用(マイナ保険証)についても分かりやすく説明していきます。
日本での健康と安心な暮らしのために、ぜひご一読ください。
目次
- 日本の国民健康保険(国保)とは?基本的な仕組み
- 【加入要件】あなたは国保に入る必要がある?対象となる外国人の条件
- 【加入対象外】国民健康保険に加入できないのはどんな人?
- 【国保加入の手続き】いつ・どこで・何が必要?
- 【国民健康保険料の仕組み】どうやって決まる?いつ支払う?
- 国保で受けられる医療サービス(給付内容)と自己負担額
- 【国保でカバーされない医療】保険適用外となるケースを知っておこう
- 【国保に関するその他の重要手続き】忘れると困る届出
- 【2025年注目】マイナンバーカードが保険証の代わりに!資格確認書とは?
- 【まとめ】国民健康保険を正しく理解し、日本での安心な生活を
日本の国民健康保険(国保)とは?基本的な仕組み
日本で安心して医療を受けるための鍵となる国民健康保険(国保)ですが、そもそも日本の医療保険制度はどのようになっているのでしょうか。
その全体像を把握することで、国保の役割がより明確になります。
日本の公的医療保険は「国民皆保険制度」と呼ばれ、原則として国内に住む全ての人がいずれかの保険に加入することになっています。
日本の公的医療保険制度は、大きく分けて二つの種類があります。
一つは、会社員や公務員などが勤務先を通じて加入する「健康保険(けんこうほけん)」いわゆる「社会保険(社保)」です。
もう一つが、自営業の方、退職された方、そして勤務先の社会保険に加入していない多くの外国人住民などが加入する「国民健康保険(こくみんけんこうほけん)」略して「国保」と呼ばれるものです。
国保は、皆さんがお住まいの市区町村(市役所や区役所)が運営主体となっています。
国民健康保険に加入する最大のメリットは、病気やケガで病院にかかった際の医療費負担が大幅に軽減される点です。
保険が適用される診療であれば、窓口での支払いは原則として医療費総額の3割(年齢などによって異なります)で済みます。
残りの7割は国保が負担してくれるため、高額になりがちな医療費の心配を減らし、必要な時に適切な治療を受けやすくなる、非常に重要なセーフティーネットなのです。
この国民健康保険への加入は、対象となる方にとっては選択肢ではなく、法律で定められた「義務」である場合が多いという点を理解しておくことが大切です。
加入対象となる条件については、次のセクションで詳しく見ていきますが、まずは「日本に住む多くの人が加入する公的な医療保険の一つであり、医療費の負担を軽減してくれる制度」という基本を押さえておきましょう。
【加入要件】あなたは国保に入る必要がある?対象となる外国人の条件
日本の国民健康保険(国保)は、日本に住む多くの外国人の方に関係する大切な制度です。
しかし、全ての外国人の方が加入対象となるわけではありません。
ご自身が国保に加入する必要があるかどうかを判断するためには、いくつかの重要な条件を確認する必要があります。
ここでは、どのような外国人が国保の加入対象となるのか、その具体的な要件を見ていきましょう。
最も基本的な条件は、日本に住所を有し、適法に3月を超えて滞在する予定の外国人であることです。
これは、2012年の法改正により、3月を超える在留資格を持つ外国人が住民基本台帳(住民票が作られる制度)に登録されることになったのと連動しています。
住民票が作成される外国人の方は、原則として国民健康保険への加入義務が生じます。
具体的に対象となる在留資格は多岐にわたります。
例えば、企業で働くための「技術・人文知識・国際業務」や「技能」「経営・管理」、「高度専門職」といった就労系の在留資格を持つ方。
大学や専門学校で学ぶための「留学」の在留資格の方。
また、これらの方々の扶養家族である「家族滞在」の方や、日本人や永住者と結婚している「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の方も対象です。
もちろん、活動に制限のない「永住者」や「定住者」の方、そして「特別永住者」の方も国民健康保険に加入します。その他「特定活動」(ワーキングホリデーなど、活動内容によります)や「文化活動」「研修」といった在留資格で3か月を超えて滞在する方も含まれます。
重要なのは、これらの条件に当てはまり、かつ後述する「加入できないケース」に該当しない限り、国民健康保険への加入は任意ではなく、法律上の義務であるという点です。
日本で生活する以上、原則として何らかの公的医療保険への加入が求められます。
もし勤務先の健康保険(社会保険)に加入していないのであれば、国民健康保険への加入手続きが必要となります。
【加入対象外】国民健康保険に加入できないのはどんな人?
前のセクションでは、国民健康保険(国保)に加入する必要がある外国人の条件について確認しました。
一方で、日本に滞在している外国人であっても、国保の加入対象から外れる、つまり加入できないケースも定められています。
ご自身がいずれかに該当しないか、あるいは将来的に該当する可能性があるかを知っておくことは、適切な保険加入のために重要です。
ここでは、国保に加入できない主なケースを具体的に説明します。
まず、最も一般的なケースとして、勤務先の健康保険(社会保険)に加入している方は、国保には加入できません。
日本の会社などに雇用され、一定の条件を満たす場合は、会社の社会保険に加入することが義務付けられています。
社会保険に加入している方の扶養に入っているご家族も同様に、国保の対象外となります。
年齢によって加入する医療保険制度が変わることもあります。
75歳以上の方は、後期高齢者医療制度という別の制度の対象となるため、国民健康保険からは脱退することになります。
また、経済的な理由で生活保護を受けている方も、医療費は生活保護制度の中でカバーされるため、国民健康保険には加入しません。
在留資格の種類によっても加入対象外となる場合があります。
「短期滞在」の在留資格で観光や短期商用などで日本を訪れている方は、滞在期間に関わらず国保には加入できません。同様に、「外交」の在留資格を持つ方も対象外です。
原則として、日本での在留期間が3月以下と定められている方も、国保には加入できません。
当然ながら、有効な在留資格を持っていない方や、在留期間が切れてしまっている方(不法滞在の状態)は、国民健康保険に加入することはできません。
適法な在留が前提条件となります。
最後に、出身国と日本の間で社会保障協定(医療保険分野)が結ばれており、母国の社会保険に加入していることを証明する「適用証明書」を持っている方も、日本の国民健康保険への加入は免除されます。
これは、保険料の二重払いを防ぐための措置です。
これらのいずれかに該当する場合は、国民健康保険には加入できません。
もしご自身の状況が変わってこれらのケースに該当しなくなった場合(例:会社を退職して社会保険を喪失した場合など)は、速やかに国保への加入手続きが必要となります。
【国保加入の手続き】いつ・どこで・何が必要?
国民健康保険(国保)の加入対象となることが分かったら、次はいよいよ具体的な加入手続きを進める段階です。
手続きには期限があり、必要な書類も状況によって異なります。
ここでは、いつまでに、どこへ行って、何を持っていけばよいのか、国保加入手続きの基本を詳しく解説します。スムーズな手続きのために、しっかりと確認しておきましょう。
まず最も重要なのが、手続きを行うタイミングです。
国保の加入資格が発生した日、例えば、日本に入国して住民登録をした日、以前加入していた会社の健康保険(社会保険)をやめた日の翌日、あるいは在留資格が変更されて国保の対象となった日などから、原則として14日以内に加入手続きを行う必要があります。
この「14日以内」という期限は法律で定められており、必ず守るようにしてください。
もし、この14日間の期限を過ぎて手続きを行った場合でも、加入は認められます。
しかし、注意点があります。
保険料の支払いは、手続きを行った日からではなく、国保の加入資格が発生した日まで遡って請求されることになります。
つまり、手続きが遅れれば遅れるほど、一度に支払う保険料が高額になる可能性があるのです。さらに、手続きが完了するまでの間に病気やケガで医療機関にかかった場合、その医療費は全額自己負担となってしまうリスクもあります。
次に、手続きを行う場所です。
国保の加入手続きは、あなたが住民登録をしている市区町村の役所(市役所、区役所、町・村役場など)の国民健康保険担当窓口で行います。
一部の地域では、支所や出張所でも手続きが可能な場合がありますが、事前に確認しておくと確実です。
引っ越しをして住所が変わった場合は、新しい住所地の役所で手続きを行います。
手続きに必要な持ち物は何でしょうか。
基本となる書類として、まず有効な在留カードまたは特別永住者証明書の原本が必要です。
加えて、在留資格や上陸許可年月日を確認するためにパスポート(旅券)の提示を求められることがあります。
特に「特定活動」の在留資格の方は、活動内容が記された指定書も持参すると良いでしょう。
さらに、マイナンバー(個人番号)が確認できる書類、例えばマイナンバーカードや通知カード(記載事項に変更がない場合)、マイナンバー記載の住民票なども必要です。
上記に加えて、国保に加入する理由に応じて、追加で書類を準備しなければならない場合があります。
例えば、会社を退職して社会保険を喪失したことによる加入であれば、以前の保険をやめた日付がわかる「健康保険資格喪失証明書」や「離職票」などが必要です。
日本で赤ちゃんが生まれたことによる加入の場合は、出生を証明する「出生届受理証明書」や、場合により「母子健康手帳」の提示が求められます。
また、生活保護を受けなくなった場合は、「保護廃止決定通知書」などが必要になるでしょう。
手続きは、原則として本人または住民票上で同じ世帯に属する家族が行うことができます。
もし、それ以外の方(友人や会社の同僚など)が代理で手続きを行う場合は、本人が作成した委任状と、代理人自身の本人確認書類(運転免許証や在留カードなど)が必要となるのが一般的です。
市区町村によって代理手続きの要件が異なる場合があるので、事前に確認することをおすすめします。
【国民健康保険料の仕組み】どうやって決まる?いつ支払う?
国民健康保険(国保)に加入すると、医療サービスを受ける権利を得ると同時に、保険料を納める義務が生じます。
保険料は、国保制度を支える重要な財源です。
「保険料は一体いくらになるのだろう?」
「どのように計算されるの?」
と疑問に思う方も多いでしょう。
ここでは、国保の保険料がどのように決まり、いつ、どのように支払うのか、基本的な仕組みについて解説します。
まず理解しておきたいのは、国保の保険料は全国一律ではなく、お住まいの市区町村によって計算方法や金額が大きく異なるという点です。
保険料は世帯ごとに計算され、その世帯の主(世帯主)が納付義務者となります。
世帯主自身が国保に加入していなくても、家族の中に加入者がいれば、納付通知書は世帯主宛てに送られてきます。
年間の保険料は、主に「医療分」「後期高齢者支援金分」「介護分(40歳から64歳の方のみ)」という3つの要素の合計で構成されます。
それぞれの要素について、各市区町村は条例に基づき、主に世帯の前年(1月~12月)の所得に応じて計算する部分(所得割)と、加入者の人数に応じて計算する部分(均等割)を組み合わせて保険料額を決定します。
自治体によっては、世帯ごとに定額がかかる部分(平等割)や、固定資産に応じて計算する部分(資産割)を加える場合もあります。
どの計算要素をどの程度の比重で用いるかが市区町村によって異なるため、同じ収入や家族構成でも住む場所によって保険料が大きく変動するのです。
日本に来たばかりの方や前年に日本での所得がなかった方は、最初の保険料が所得以外の要素(均等割など)だけで計算されることがあります。
その後、所得情報が市区町村に把握されると、所得に応じた保険料が追加で計算され、年度の途中で保険料額が変更(増額)される場合があるので注意が必要です。
算出された年間の保険料は、通常、毎年6月頃に「国民健康保険料(税)納入通知書」として世帯主宛てに郵送されます。
支払い方法は、一般的にその年の6月から翌年3月までの10回程度の分割払いが基本です。
納付書を使って銀行やコンビニで支払う方法、指定した銀行口座からの自動引き落とし(口座振替)、または特定の条件を満たす高齢者の方の場合は年金からの天引きといった方法が用意されています。
なお、前年の世帯所得が市区町村の定める基準よりも低い場合には、保険料のうち加入者数に応じてかかる部分(均等割)などが所得に応じて7割・5割・2割のいずれかの割合で自動的に軽減される制度もあります。
この軽減を受けるために特別な申請は通常不要ですが、所得の申告が正しく行われていることが前提となります。
最後に、加入手続きのセクションでも触れましたが、加入手続きが遅れた場合でも、保険料は資格が発生した月まで遡って支払う義務が生じます。
例えば、4月に加入資格が発生したにも関わらず、8月に手続きをした場合、4月分からの保険料を納める必要があることを覚えておいてください。
国保で受けられる医療サービス(給付内容)と自己負担額
国民健康保険(国保)に加入し、きちんと保険料を納めていると、病気やケガで医療機関を受診した際に、医療費の大部分を国保が負担してくれるという大きなメリットがあります。
これにより、日本国内で質の高い医療サービスを比較的少ない自己負担で利用することが可能になります。
ここでは、国保でどのような医療サービスが受けられるのか、そして窓口で支払う自己負担額はどのくらいになるのかを具体的に見ていきましょう。
国保が適用されるのは、病気やケガの治療を目的とした医療行為で、保険診療として認められているものです。
具体的には、病院や診療所、歯科医院での診察、検査、レントゲン撮影、処方箋に基づく薬代、注射や点滴、手術、入院(基本的な部屋代や看護料)などが含まれます。
医師が必要と認めた場合の訪問看護サービスや、コルセットなどの治療用装具の費用の一部も対象となる場合があります。
ただし、すべての医療が保険適用となるわけではなく、適用外となるケースもあります(詳細は後述します)
保険適用となる医療を受けた場合、医療機関の窓口で支払う金額(自己負担額)は、かかった医療費総額の一部です。
この自己負担割合は、主に年齢によって決まります。
小学校入学前の未就学児は医療費の2割を負担します。小学生から69歳までの方は3割負担です。
そして70歳から74歳までの方は原則として2割負担となりますが、現役世代と同じくらいの所得がある方は3割負担となる場合があります。
例えば、医療費総額が1万円だった場合、69歳までの方であれば窓口での支払いは3,000円で済む計算になります。
医療機関を受診する際は、必ず有効な国民健康保険証(または2024年12月以降はマイナ保険証か資格確認書)を提示してください。
提示がない場合は、一時的に医療費の全額を支払う必要が生じることがあります。
もし、大きな病気やケガで手術や長期入院が必要となり、1か月の医療費が非常に高額になってしまった場合でも、自己負担額には上限が設けられています。
これが「高額療養費制度」です。
1か月の医療費(保険適用分)の自己負担額が、年齢や世帯の所得に応じて定められた上限額(自己負担限度額)を超えた場合、その超えた分の金額が後から払い戻されます。
例えば、一般的な所得(年収約370〜770万円程度)の69歳以下の方の場合、1か月の自己負担の上限額はおおよそ8万円台後半からとなる計算式が用いられます(所得区分により異なります)。
マイナンバーカードを保険証として利用登録(マイナ保険証)していれば、医療機関の窓口での支払いが自動的に上限額までとなるため、一時的な高額負担を避けることができます。
国保の給付は、医療費の補助だけではありません。
お子様が生まれた際には「出産育児一時金」としてまとまった金額(例えば50万円など、金額は変動します)が支給されたり、加入者が亡くなった際には葬儀を行った方に「葬祭費」が支給されたりする制度もあります(支給額や条件は市区町村により異なります)。
また、海外渡航中にやむを得ず治療を受けた場合に、申請により医療費の一部が払い戻される「海外療養費」の制度もありますが、日本の保険診療基準で計算されるため注意が必要です。
このように、国民健康保険は、日々の小さな不調から万が一の大きな病気やケガ、さらには出産といったライフイベントまで、幅広い場面で経済的な負担を軽減してくれる、日本で生活する上での重要な支えとなる制度です。
【国保でカバーされない医療】保険適用外となるケースを知っておこう
国民健康保険(国保)は、病気やケガの治療において非常に頼りになる制度ですが、すべての医療行為やサービスが保険の対象となるわけではありません。
どのような場合に国保が使えず、医療費が全額自己負担(自費診療)となるのかを知っておくことも、医療費に関する予期せぬトラブルを避けるために重要です。
ここでは、保険適用外となる主なケースについて説明します。
まず、病気やケガの治療を直接の目的としないものは、原則として保険適用外となります。
具体的には、健康維持や予防目的の健康診断や人間ドック、予防接種(インフルエンザワクチンなど、一部公費助成があるものを除く)が挙げられます。
また、美容を目的とした整形手術(例:二重まぶた手術)や、しみ・あざの除去(治療が必要と判断される場合を除く)、歯並びを整えるための歯列矯正(治療目的と認められる場合を除く)なども、通常は自費診療です。
正常な妊娠・出産にかかる費用も、病気ではないため基本的には保険適用外です。
ただし、妊娠中の合併症(妊娠高血圧症候群など)の治療や、帝王切開による出産など、医学的な処置が必要となった場合は保険が適用されます。
また、出産費用については、前のセクションで触れた「出産育児一時金」という別の形での補助があります。
日常生活における単なる疲労回復を目的としたマッサージや、肩こり・腰痛に対する整体・カイロプラクティックなどの施術も、原則として保険は使えません。
ただし、医師が治療のために必要と判断した柔道整復師(接骨院・整骨院)による施術や、鍼灸・あん摩マッサージ指圧の一部には、条件付きで保険が適用される場合があります。
自身の故意や重大な過失による病気やケガの場合も、保険給付が制限されたり、受けられなかったりすることがあります。
例えば、犯罪行為や、ひどい泥酔状態でのケンカなどが原因である場合です。
医師の治療に関する指示に従わなかった結果、症状が悪化した場合なども給付が制限される可能性があります。
仕事中や通勤途中に発生した病気やケガは、国民健康保険ではなく労災保険(労働者災害補償保険)の対象となります。
交通事故など、第三者(加害者)の行為によってケガをした場合も、本来は加害者が医療費を負担すべきであるため、国保を使う際には必ず市区町村役場への届け出が必要です。
届け出を行うことで、国保が一時的に医療費を立て替え、後で加害者に請求することが可能になります。
さらに、先進医療など、まだ保険適用として認められていない特殊な治療法や、未承認の医薬品の使用、入院時の個室使用料(差額ベッド代)、保険適用外の歯科材料(金歯など)の使用なども、全額自己負担となります。
入院時の食事代も一部自己負担が必要です。
上記の保険適用外となるケースを理解しておくことで、医療機関にかかる際に、どの費用が保険でカバーされ、どの費用が自己負担になるのかを予測しやすくなります。
不明な場合は、医療機関の窓口で事前に確認することをお勧めします。
【国保に関するその他の重要手続き】忘れると困る届出
国民健康保険(国保)への加入手続きが完了し、保険証(または資格確認書)を受け取ったら、それで終わりではありません。
日本での生活状況に変化があった場合には、その都度、市区町村役場へ届け出る必要がある大切な手続きがいくつか存在します。
これらの手続きを怠ると、後々保険料のトラブルに繋がったり、必要なサービスが受けられなくなったりする可能性があるため、必ず覚えておきましょう。
特に重要なのが、国保の資格がなくなった際の「脱退手続き」です。
例えば、他の市区町村へ引っ越す(転出する)場合は、転出届と併せて国保の脱退手続きを行います。
そして新しい住所地で転入届とともに国保に再加入します。
また、日本から完全に出国する場合も、出国前に役所で「海外転出届」を提出し、国保の脱退が必要です。
手続きを怠ると出国後も保険料が請求されることがあります。
さらに、勤務先の健康保険(社会保険)に新たに加入した場合も、国保からは脱退しなければなりません。
新しい保険証などを持参し手続きを行います。
その他、生活保護を受け始めた場合や、加入者が死亡した場合にも脱退に関連する手続きが必要となります。
これらの資格喪失事由が発生したら、原則として14日以内に、お住まいの市区町村役場の国保担当窓口で脱退の届け出を行ってください。
もし、資格がなくなったにも関わらず脱退手続きを忘れたり、遅れたりするとどうなるでしょうか。
資格がない期間も国保の保険料が請求され続ける可能性があります。
また、誤って資格喪失後に国保の保険証を使って医療を受けてしまうと、国保が負担した医療費(費用の7割〜8割)を後日返還しなければならなくなるため、注意が必要です。
脱退手続き以外にも、登録している情報に変更があった場合の届け出も忘れてはいけません。
例えば、同じ市区町村内で引っ越しをした場合や、氏名が変わった場合、世帯主が変わったり、世帯を分けたり一緒にしたりした場合、そして在留資格や在留期間を更新・変更した場合などが該当します。
上記のような変更があった際も、速やかに役所の窓口に届け出て、保険証(または資格確認書)の記載内容を更新してもらう必要があります。
特に在留期間を更新した場合は、保険証の有効期限も更新されるため、忘れずに手続きを行いましょう。
手続きには、変更内容がわかる書類(新しい在留カードなど)と、現在お持ちの国保の保険証(または資格確認書)などが必要です。
国民健康保険は、加入時だけでなく、その後の状況変化に応じた届け出もセットで考えることが大切です。
適切な手続きを心掛けることで、常に正しい保険状態でいることができ、いざという時に安心して医療サービスを利用できます。
【2025年注目】マイナンバーカードが保険証の代わりに!資格確認書とは?
2025年の国民健康保険(国保)制度を理解する上で、非常に重要な変更点があります。
それは、従来の紙やプラスチック製の健康保険証が原則として廃止され、マイナンバーカードが健康保険証として利用されるようになることです。
保険証の仕組みに関する変更は、日本に住むすべての人に関わるものであり、もちろん外国人住民の皆様も対象となります
。ここでは、保険証利用の新しい仕組みについて、何が変わり、どのように対応すればよいのかを解説します。
まず、大きな変更点として、2024年12月2日をもって、従来の国民健康保険証の新規発行が原則として停止されました。
現在お持ちの保険証は、券面に記載されている有効期限(最長でも2025年12月1日まで。ただし、自治体によっては有効期限がもっと早く設定されている場合もあります)までは、引き続き医療機関で使用できます。
しかし、有効期限が切れた後や、引っ越し・就職などで保険情報が変わった場合には、新しい従来の形式の保険証は発行されません。
これからの医療機関での保険資格の確認は、マイナンバーカードに健康保険証としての機能を登録した「マイナ保険証」が基本となります。
マイナ保険証を利用するには、まずマイナンバーカードを取得し、その後、スマートフォンやパソコン(マイナポータル)、セブン銀行ATM、または医療機関に設置されている顔認証付きカードリーダーなどを使って、保険証利用の初回登録を行う必要があります。
登録済みのマイナ保険証があれば、対応している医療機関の窓口でカードリーダーにかざし、顔認証または暗証番号で本人確認を行うことで、保険資格を確認してもらえます。
マイナ保険証を利用することには、過去の薬剤情報や特定健診の結果を医師と共有できたり(本人の同意が必要)、高額療養費制度の限度額適用認定証がなくても窓口での支払いが自動的に上限額までになったりするなど、いくつかのメリットがあります。
では
「マイナンバーカードを持っていない場合はどうなるの?」
と心配される方もいるでしょう。
そのために用意されているのが「資格確認書」です。
資格確認書は、マイナンバーカードを保有していない方や、持っていても保険証利用登録をしていない方、カードを紛失した方など、マイナ保険証を利用できない状況にある方に対して、申請に基づいて(または初回は申請なしで)交付される紙の証明書です。
有効期間は最長1年間で、従来の保険証と同じように医療機関の窓口に提示することで、保険診療を受けることができます。
つまり、マイナンバーカードがなくても、資格確認書があれば引き続き国保の医療サービスを受けられるので、ご安心ください。
保険証利用方法の変更に伴い、日本に在留する外国人の方々にとっても、マイナンバーカードの取得と適切な管理、そして保険証としての利用登録の重要性が増しています。
マイナ保険証を利用するにしても、資格確認書を利用するにしても、ご自身の保険資格情報を正確に把握し、医療機関でスムーズに提示できるように準備しておくことが大切です。
【まとめ】国民健康保険を正しく理解し、日本での安心な生活を
今回は、日本で生活する外国人の方々にとって非常に重要な「国民健康保険(国保)」について、加入の必要性から手続き、保険料、給付内容、そして2025年における最新の変更点まで幅広く解説しました。
最後に、日本で安心して医療を受けるために、特に覚えておきたいポイントをまとめます。
まず大原則として、日本に3か月を超えて適法に滞在する外国人の方(勤務先の社会保険加入者などを除く)は、原則として国民健康保険への加入が法律上の義務です。
加入手続きは、資格が発生してから14日以内に、お住まいの市区町村役場で行う必要があります。
手続きが遅れても保険料は遡って請求されるため、速やかな行動が大切です。
国保に加入すると、保険料を納付する義務が生じますが、加入のメリットとして病気やケガをした際の医療費自己負担が原則3割(年齢等により変動)に軽減され、高額な医療費に対する高額療養費制度というセーフティネットも利用できます。
また、出産時には出産育児一時金などの給付も受けられます。
加入後も、引っ越し(市区町村外への転出)、日本からの出国、就職による社会保険への加入など、状況に変化があった場合には、必ず脱退手続きや住所変更等の届け出を忘れずに行いましょう。
手続きを怠ると、不要な保険料の請求や、将来的なトラブルの原因となる可能性があります。
そして2025年現在、最も注目すべき変化はマイナンバーカードの保険証利用(マイナ保険証)です。
従来の保険証は新規発行が停止され、マイナ保険証が基本となります。
マイナンバーカードをお持ちでない方や利用できない方には「資格確認書」が交付されるため、保険診療自体は引き続き受けられますが、マイナ保険証中心の新しいシステムへの理解と対応が求められます。
国民健康保険は、時に複雑に感じられるかもしれませんが、日本で健康に、そして安心して暮らすための重要な基盤です。
制度を正しく理解し、必要な手続きを確実に行うことが、ご自身とご家族の生活を守ることに繋がります。
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行政書士法人35
代表行政書士 萩台 紘史
2021年4月 SANGO行政書士事務所を開業
2023年9月 法人化に伴い「行政書士法人35」を設立
外国人の就労ビザ申請に専門特化した事務所として年間350件超の就労ビザ申請をサポート