特定技能に「倉庫管理」「産廃処理」「リネンサプライ」が追加!いつから?何が変わる?専門家が3分で徹底解説
「倉庫の仕事が人手不足で回らない」「産業廃棄物の現場で、若手が全く集まらない」
物流、環境、衛生を支える重要な業界で、多くの経営者様が深刻な人手不足に頭を悩ませています。そんな中、外国人材の新たな在留資格として「特定技能」に倉庫管理・産廃処理・リネンサプライの3分野が追加される方針が、2025年に入り政府より示されました。
しかし、「閣議決定はいつなのか?」「具体的にいつから受け入れられるのか?」など、具体的なスケジュールが気になるところです。
この記事では、特定技能の新分野追加に関する最新情報と、企業が今から何を準備すべきかを、ビザ申請の専門家が分かりやすく解説します。
まずは結論!特定技能「新3分野」の概要と今後の見込みスケジュール
結論から申し上げますと、政府は「倉庫管理」「産業廃棄物処理」「リネンサプライ」を特定技能の対象分野として追加する方針を固め、2025年12月の閣議決定を目指しています。
その後、各分野での技能評価試験の準備などを経て、実際の受け入れ開始は2027年頃になる見通しです。 人手不足に悩む企業にとって、まだ少し時間はありますが、事業の継続と成長に向けた大きなチャンスであり、今からの情報収集と準備が成功の鍵を握ります。
そもそも特定技能とは?技能実習との3つの大きな違いを解説
特定技能制度とは、国内での人材確保が困難な産業分野において、一定の専門性・技能を持つ外国人を受け入れるための在留資格です。よく比較される「技能実習」が国際貢献を目的とした研修制度であるのに対し、特定技能は労働力の確保を目的とした「就労」のビザである点が最大の違いです。
主な違いは以下の3点です。
1. 在留期間と転職の自由度
特定技能1号の在留期間は通算で最長5年です。また、技能実習では原則として転職が認められませんが、特定技能では同一分野内での転職が可能です。これにより、企業はより長期的かつ安定した労働力を確保でき、労働者側もキャリアプランを描きやすくなります。
2. 求められるスキルレベルと業務範囲
特定技能は、一定の技能水準と日本語能力を持つ「即戦力」の人材を対象としています。そのため、受け入れ後すぐに現場で活躍してもらうことが可能です。技能実習のように、行える業務に厳しい制限がなく、関連業務に幅広く従事させることができます。
3. 受け入れ企業の義務と支援体制
特定技能では、受け入れ企業が外国人材の職場・日常生活・社会生活上の支援を行うことが義務付けられています。具体的には、住居の確保や各種行政手続きのサポートなどです。これらの支援を自社で行うのが難しい場合は、登録支援機関に委託することができます。
【分野別】特定技能に追加される3分野の具体的な業務内容
今回新たに追加される方針の3分野について、それぞれどのような業務が対象となるのか、その背景と合わせて見ていきましょう。
1. 倉庫管理|EC需要増に対応する物流の担い手
想定される業務内容:ピッキング、検品、在庫管理、入出庫作業など
倉庫内での一連の作業が対象となります。これまで「単純作業」と見なされ、就労ビザの取得が難しかった業務も含まれる見込みで、物流業界の企業にとっては朗報です。
追加の背景:物流の2024年問題とEC市場の急拡大
トラックドライバーの時間外労働規制による「物流の2024年問題」や、EC市場の拡大に伴う倉庫内作業の需要急増に対応するため、人材確保が急務と判断されました。
2. 産業廃棄物処理(産廃)|社会インフラを支える専門人材
想定される業務内容:選別、破砕・焼却などの中間処理施設の運転・保守など
廃棄物のリサイクルや適正処理に不可欠な、専門知識を要する現場作業が対象となる見込みです。単なる収集運搬だけでなく、処理施設のオペレーションを担う人材が期待されています。
追加の背景:深刻な人手不足と3Kイメージの払拭
いわゆる3K(きつい、汚い、危険)のイメージから若手人材が集まりにくく、従業員の高齢化が深刻な課題でした。 安定した社会インフラを維持するため、外国人材の活用が不可欠とされています。
3. リネンサプライ|観光・医療を支える衛生管理のプロ
想定される業務内容:洗濯物の受け入れ・仕分け、洗濯、プレス・仕上げ、出荷管理など
ホテルや病院などで使用されるリネン類(シーツ、タオル等)を回収・洗濯・仕上げて納品する一連の工程が対象となります。クリーニング工場での専門的な作業が中心です。
追加の背景:インバウンド回復と医療・福祉施設の需要増
コロナ禍後のインバウンド(訪日外国人旅行)の急回復によるホテル需要の増加や、高齢化に伴う医療・介護施設での需要増に対応するため、人材確保が必要とされています。
特定技能人材の受け入れ企業が今から始めるべき4つの準備
2027年の制度開始後、スムーズに優秀な人材を受け入れるためには、事前の準備が欠かせません。方針が固まった今だからこそ、以下の4つのポイントについて社内で検討を始めましょう。
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受け入れ体制の構築(支援担当者の選任・生活サポートの準備)
特定技能人材の受け入れには、1人以上の支援担当者を置くなど、社内の支援体制構築が必須です。外国人が日本で安心して生活し、仕事に集中できるよう、住居探しの手伝いや公的な手続きの補助などを誰がどのように行うか、今のうちから計画しておく必要があります。
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雇用条件の整備(日本人従業員との同等以上の報酬)
特定技能人材の給与は、同じ業務に従事する日本人従業員と同等額以上に設定しなければなりません。これは法律で定められた厳格なルールです。外国人だからという理由で不当に低い賃金を設定することは許されません。既存の給与テーブルを見直し、適切な報酬額を検討しておきましょう。
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登録支援機関の選定と比較検討
自社で支援体制を整えるのが難しい場合は、国から認可を受けた「登録支援機関」に支援業務を委託できます。多くの登録支援機関がありますが、サポート内容や費用は様々です。今のうちから複数の機関をリストアップし、比較検討を始めると良いでしょう。
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最新情報の継続的な収集と社内共有
今後、閣議決定や省令の公布など、制度に関する正式な情報が順次発表されます。出入国在留管理庁や厚生労働省のウェブサイトを定期的にチェックし、最新情報を常に把握しておくことが重要です。社内の関係者間で情報を共有し、認識を合わせておくことも大切です。
新分野追加に関するよくあるご質問
ここでは、新分野追加に関して経営者の皆様からよくいただく質問にお答えします。
Q1. いつから正式に受け入れを開始できますか?
A. 2025年12月に閣議決定された後、各分野の技能評価試験や日本語試験の準備が進められ、2027年頃から開始される見込みです。 これはあくまで現時点での見通しであり、正式なスケジュールは今後の政府発表を待つ必要があります。
Q2. 技能実習や新しい「育成就労制度」とはどう違うのですか?
A. 技能実習(および後継の育成就労制度)が人材育成を目的とするのに対し、特定技能は人手不足解消を目的とした「労働力」の確保制度です。育成就労制度は、3年間の就労を通じて人材を育成し、その後、特定技能へスムーズに移行させることを目指すもので、両者は連携する関係にあります。
Q3. どんな企業でも受け入れ可能ですか?注意点はありますか?
A. 労働法規や社会保険関連法令を遵守しているなど、一定の基準を満たす企業のみが受け入れ可能です。過去に外国人材の失踪事案を発生させたことがあるなど、受け入れが不適切と判断される場合は許可されません。また、産業廃棄物処理業など、事業を行う上で許認可が必要な業種は、当然その許認可を適正に受けている必要があります。
Q4. 外国人本人がクリアすべき試験は何ですか?
A. 「日本語能力試験」と、各分野の業務に必要な技能を測る「技能評価試験」の両方に合格する必要があります。 この技能評価試験は、今後、各分野を所管する省庁や業界団体によって新たに作成される予定です。
まとめ:人手不足解消の切り札に。計画的な準備で円滑な受け入れを実現しよう
今回は、特定技能に新たに追加される方針の「倉庫管理」「産業廃棄物処理」「リネンサプライ」の3分野について解説しました。
この制度改正は、長年人手不足に苦しんできた業界にとって、事業を存続・成長させるための切り札です。しかし、その恩恵を最大限に受けるためには、制度を正しく理解し、今から計画的に準備を進めることが不可欠です。
受け入れ体制の構築、雇用条件の整備、そして信頼できる専門家の確保。これらを着実に進め、来るべき日に備えましょう。
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行政書士法人35
代表行政書士 萩台 紘史
2021年4月 SANGO行政書士事務所を開業
2023年9月 法人化に伴い「行政書士法人35」を設立
外国人の就労ビザ申請に専門特化した事務所として年間350件超の就労ビザ申請をサポート