就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)の転職について
社会人として仕事をしていく中で転職を考えることがあると思います。新しい会社でチャレンジしたい、もっと給与を上げたい、会社の都合で辞めることになった等、様々な事情があるかと思います。それは就労ビザで働いている外国人の方々も同じです。しかし、外国人の方々は就労ビザという制約の範囲内で働いているため、転職時には気をつけなければならないことがあります。それではそのポイントについて解説していきます。
目次
転職をすることは可能です
就労ビザで働いている外国人の方も日本人と同様に転職をすることは可能です。国内での中途採用者でもっとも多い年齢層は30代、次いで10代・20代と続いております。転職の理由で多いのが、仕事内容への不満、賃金への不満、人間関係への不満、労働条件や勤務地への不満が上位となっております。もっとも転職者が多い30代については、成長機会がない、会社の将来性や雇用安定性への不安等も挙げられます。(出典元:リクルートワークス研究所「中途採用実態調査2019年実績」)
転職時に気を付けるべき3つのポイント
以下は、在留資格「技術・人文知識・国際業務」で就労している外国人についての説明です。
①3ヵ月以内に次の仕事を見つけないとダメって本当?
次の仕事を見つけてから今の会社を退職するケースや今の会社を退職してから就職活動を開始するケースがあるかと思います。この場合、後者のケースでは注意が必要です。入管法には次のように規定されております。
6.別表第1の上欄の在留資格をもって在留する者が、当該在留資格に応じ同表の下欄に掲げる活動を継続して3月(高度専門職の在留資格(別表第1の2の表の高度専門職の項の下欄第2号に係るものに限る。)をもって在留する者にあっては、6月)以上行わないで在留していること(当該活動を行わないで在留していることにつき正当な理由がある場合を除く。)。
法務大臣はいくつかの場合により外国人の在留資格を取消すことができますが、その内のひとつに、在留資格の活動を継続して3月以上行わないで在留しているケースを挙げています。転職のための就職活動をするために会社を辞めたものの、次の仕事が中々見つからず3ヵ月以上経過してしまった場合等がこれに当てはまります。
その他のケースでよくあるのが、出産をするため母国に一時帰国をしたもののすぐに日本に戻ってこないため長期間の間、本来行わなければならない就労活動を行っていなかった等が挙げられます。
では、このようなケースで3ヵ月以上無職又は就労活動をしていない状態が継続した場合には必ず在留資格(就労ビザ)を取消されてしまうのか?というと、必ずしもそうではありません。無職又は就労活動をしていない状態が3ヵ月以上継続していたとしても、正当な理由がある場合にはその事情を考慮してもらえます。事故や病気、会社都合の解雇等、その他にも正当な理由があると認められた場合には在留資格を取消されることはありません。
しかし、正当な理由がないと判断された場合には在留資格を取消される可能性や、取消されはしないものの次回の更新時に不許可となるケースがあります。
弊社に相談に来られた事例でも、出産のために6ヵ月以上帰国していた方が次回の更新時に不許可となった方がおりました。
②その仕事大丈夫ですか?
転職は可能ですが、どんな仕事でもできるわけではありません。在留資格ごとに従事できる仕事内容は決まっています。技術・人文知識・国際業務では、…技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務、と規定されています。詳しい内容はここでは省略しますが、当該在留資格では従事することのできない業務に従事している場合には更新時に不許可となる可能性が大きいです。
注意!「技術・人文知識・国際業務」で出来る仕事とは?
③入管への届出を忘れずに
転職をしたら(会社が変わったら)、入管への届出義務があるのはご存じですか?
会社(所属機関)との契約の終了(退職など)若しくは新たな契約の締結(転職先)があった場合、14日以内に入管へ届け出る必要があります。(入管法第19条の16第2号)
これは所属機関等に関する届出といい、外国人本人が行う手続きです。この届出は義務になります。忘れずに行いましょう。
就労資格証明書交付申請のすすめ
上記で、転職は可能だがどんな仕事でもできるわけではない!と説明しましたが、この判断は一般の方には難しい部分があります。知らずに働いていた場合、知らずに雇用してしまった場合、外国人も会社も双方にリスクがあります。このようなリスクを未然に防ぐためにも就労資格証明書交付申請をおすすめいたします。
これは、外国人の方が自らの在留資格で行うことが出来る仕事の可否を入管が証明してくれる手続きです。この申請後に証明書が発行されますが、そこには従事しても大丈夫な仕事内容かの可否が記載されております。転職前でも転職後でもどちらのタイミングで申請をおこなっても問題ありませんが、標準処理期間が1ヵ月~3ヵ月となっておりますのでご注意ください。
転職後の初めての更新申請は要注意
技術・人文知識・国際業務ビザでの転職後の初めての更新申請では注意が必要です。その理由としては、ざっくりと説明すると、一度取得した就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)の審査を最初からやり直す、とイメージしてもらえば分かりやすいです。外国人本人の属性に変化はありませんが、会社及び従事する仕事内容(変わっている場合)が当初の申請時とは異なるからです。
日々の実務でも、この転職後の初めての更新申請で不許可になり相談に来られる方が一定数おります。更新時にあわてるのではなく、このことをしっかりと念頭において転職活動に励みましょう。
まとめ
外国人の方は転職時に気を付けるべきルールがいくつかございます。最悪の場合には、更新が許可されずに母国に帰国しなくてはならない、ということにまで発展するケースもあります。上記で説明した内容をしっかりと把握した上で転職活動を行いましょう。
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行政書士法人35
行政書士 萩台 紘史
2021年4月 個人事務所「SANGO行政書士事務所」を開業
2023年9月 法人化に伴い「行政書士法人35」を設立
年間350件超の就労ビザ申請を対応