特定技能ビザから技術人文知識国際業務ビザへの変更方法
目次
特定技能ビザについて
2019年4月、深刻化する人出不足への対応として、生産性の向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野に限り、一定の専門性、技能を有し即戦力となる外国人を受け入れるために創設された在留資格です。
特定技能には「1号」と「2号」があり、2024年8月時点で以下の在留者数となっております。
特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する
【特定技能2号:314人】
特定産業分野に属する熟練した技能を要する
2024年4月には4つの分野が追加され現在では16の分野で外国人の受入れが可能となっております。
なお、1号と2号の違いは以下のとおりです。
特定技能1号
- 在留期間:1年、6月又は4月毎の更新、通算で5年まで
- 要件:[技能水準]-分野別に試験などで確認
[日本語能力水準]-生活や業務に必要な日本語能力を試験などで確認 - 家族の帯同:原則不可
特定技能2号
- 在留期間:3年、1年又は6月毎の更新
- 要件:[技能水準]-分野別に試験などで確認
[日本語能力水準]-試験での確認なし - 家族の帯同:要件を満たせば可能(配偶者、子)
※ 漁業及び外食(N3)を除く
国内、海外で実施される試験に合格することで特定技能1号を取得することができ、その後要件をクリアすれば特定技能2号の試験を受けることができる仕組みになっております。
また、介護分野は別に在留資格「介護」があるため特定技能2号は対象外。自動車運送業、鉄道、林業、木材産業も特定技能2号は対象外となっております。
技術・人文知識・国際業務ビザへ変更する際に注意するべきことは
特定技能ビザは、分野ごとの試験に合格をすれば学歴不問で取得が可能です。そのため、大学等を卒業していない方でも取得が容易な就労ビザのひとつといえるでしょう。
では、現在、特定技能ビザで在留をしている外国人が転職等を理由に、技術・人文知識・国際業務ビザへ変更を希望する場合に注意しなくてはならないことを、最も多い質問2つについて説明いたします。
1.学歴(または実務経験)が必要
技術・人文知識・国際業務ビザを取得するための申請人の要件として学歴要件があります。
従事しようとする業務について必要な技術若しくは知識に関する科目を専攻して大学を卒業、又は本邦の専修学校の専門課程を修了したことが求められています。
実務経験をもとに申請をおこなう場合には、該当する業務で10年以上(国際業務は3年以上)の実務経験が必要とされております。
2.技能実習から帰国せずに特定技能に移行をしている場合
当初、「技能実習生」として日本に来日をしてそのまま帰国をせずに「特定技能」に移行をしているケースですが、この場合には技術・人文知識・国際業務ビザへの変更はできません。申請人本人が大学を卒業済みであり、技術・人文知識・国際業務ビザの学歴要件を満たしていたとしてもです。
そもそも技能実習の制度とは、国際貢献のため開発途上国等の外国人を一定期間に限り受入れ、OJTを通じて技能を移転する制度として創設された経緯があります。そのため、実習を終えた外国人は帰国をして学んだ技能を移転しなくてはなりません。
これは、帰国をせずに特定技能に移行をした場合でも同様です。現に有する在留資格が「特定技能」であったとしても、内在的には技能実習のままということになります。
このことを知らずに技術・人文知識・国際業務への変更申請を行い不許可となってから相談に来られる方が一定数いらっしゃいます。
変更することのメリットとデメリット
特定技能から技術人文知識国際業務ビザへ変更をすることによるメリットとデメリットをあげてみました。ただし、本人が何を希望するかによってとらえ方が異なりますので、あくまでも参考程度にとどめておいてください。
≪メリット≫
「特定技能1号」から「2号」への変更は多くの分野で「特定技能1号」での在留期間中に管理者や指導者としての実務経験を2年以上求められますが、「技術・人文知識・国際業務」の場合には要件を満たせばすぐに変更申請を行うことができ分野ごとの試験に合格をする必要もありません。また、在留期間が特定技能よりも長い最長5年間が与えられ家族(配偶者や子)を呼ぶことも可能です。
≪デメリット≫
「技術・人文知識・国際業務」に変更をした場合、管理業務として現場に出て従業員の指導などはできますが、現場での現業作業はできなくなります。これは、本人というよりも人材不足に悩む企業側のデメリットかもしれません。
必要書類について
特定技能から技術人文知識国際業務ビザへ変更する場合の必要書類は以下のとおりです。
・顔写真 1葉
・パスポート及び在留カード 提示
以下、所属機関のカテゴリーによって必要書類が異なります。
・四季報の写し
・主務官庁から設立の許可を受けたことを証明する文書など
・専門学校卒の場合、専門士称号付与証など
※ 派遣契約に基づく場合、労働条件通知書など
・前年度の給与所得源泉徴収票の法定調書合計表
・専門学校卒の場合、専門士称号付与証など
※ 派遣契約に基づく場合、労働条件通知書など
・前年度の給与所得源泉徴収票の法定調書合計表
・労働条件通知書又は雇用契約書など
・卒業証明書及び成績証明書
・登記事項証明書
・直近年度の決算書
・会社概要のわかるもの
※ 派遣契約に基づく場合、労働条件通知書など
・給与支払事務所等の開設届出書の写し
・直近3カ月分の給与所得退職所得等の所得税徴収高計算書
・労働条件通知書又は雇用契約書など
・卒業証明書及び成績証明書
・登記事項証明書
・直近年度の決算書
・会社概要のわかるもの
※ 派遣契約に基づく場合、労働条件通知書など
まとめ
特定技能からの変更を希望する方々は、家族を呼びたいから、違う職種にチャレンジしたいから、という理由を多く見受けます。特定技能ビザは他の就労ビザとは異なり、特別なルールがたくさん課されているため初めから専門家に相談をすることをおすすめいたします。
この記事を読んだ方が他にも読んでいる記事
・技術・人文知識・国際業務とは
・在留資格変更許可申請書の書き方
・技術人文知識国際業務ビザで家族を呼ぶ方法
・技術人文知識国際業務ビザの必要書類
・特定技能とは
行政書士法人35
行政書士 萩台 紘史
2021年4月 個人事務所「SANGO行政書士事務所」を開業
2023年9月 法人化に伴い「行政書士法人35」を設立
年間350件超の就労ビザ申請を対応