資格外活動許可の「包括許可」と「個別許可」の違いとは?具体例で解説します
留学生や家族滞在ビザを持つ方が日本でアルバイトをする際、また企業がそうした方を雇用する際には、「資格外活動許可」が必ず必要です。「週28時間以内」というルールは有名ですが、「包括許可」と「個別許可」の2種類があることは、あまり知られていません。
この2つの違いを正しく理解しないまま働いたり、雇用したりすると、在留資格の取り消しや不法就労助長罪といった、取り返しのつかない事態を招く可能性があります。
この記事では、両者の違いと、どのような場合にどちらの許可が必要かを、具体例を交えて専門家が解説します。
目次
包括許可と個別許可の比較表
まず、包括許可と個別許可の主な違いを一覧表で確認しましょう。詳細は各章で解説しますが、全体像を掴むことで理解が深まります。
項目 | 包括許可 | 個別許可 |
---|---|---|
主な対象者 | 留学生、家族滞在ビザの方など | 全ての在留資格保持者(フリーランス、副業など) |
主な活動内容 | 一般的なアルバイト(雇用契約) | 個別の案件・契約に基づく活動(業務委託など) |
時間制限 | 原則週28時間以内 | 個別の許可内容による(時間制限がない場合も) |
勤務先の変更 | 自由(新たな届出は不要) | 不可(許可された勤務先・契約先でのみ活動可) |
申請の難易度 | 比較的容易 | 比較的難しい(個別審査が必要) |
包括許可とは?留学生・家族滞在の一般的なアルバイト
包括許可は、多くの留学生や家族滞在の方が利用する、最も一般的な資格外活動許可です。その名の通り、一定のルールの下で、幅広いアルバイト活動を「包括的」に認めるものです。
1. 対象となる在留資格(留学・家族滞在など)
包括許可の主な対象者は、就労を主目的としない在留資格を持つ方です。具体的には、「留学」や「家族滞在」の在留資格を持つ方がこれに該当します。
2. 許可される活動(雇用契約に基づく労働)
許可されるのは、特定の雇用主と「雇用契約」を結び、時給や日給などで働く一般的なアルバイトです。コンビニエンスストア、飲食店、スーパー、オフィスでの事務補助など、様々な職種が対象です。
3. 週28時間以内という厳格なルール
包括許可で最も重要なルールは、労働時間が「週28時間以内」に厳しく制限されている点です。これは、本来の在留資格である学業や家族との生活を阻害しないための大原則です。
【要チェック!】週28時間以内という計算方法について
28時間以内というのは月間で均した場合という意味ではありません!
例えば、第1週目は42時間勤務、第2週目は14時間勤務、この場合、2週間の平均は週28時間となりますが、これはNGです。
ここでいう週28時間以内とは、どこから計算しても常に28時間以内という意味です。
勘違いしている方が多いので十分に注意してください。
長期休暇中(夏休み等)は週40時間まで可能
留学生の場合、在籍する教育機関の学則で定められた長期休業期間中(夏休み、冬休み、春休みなど)は、例外的に「週40時間以内」まで働くことが認められています。
複数のアルバイトの合計時間で計算
注意すべきは、この時間制限が、全てのアルバイト先の合計時間で計算される点です。例えば、A店で週15時間、B店で週15時間働いた場合、合計30時間となり、ルール違反になります。
4. 禁止されている業務(風俗営業など)
たとえ週28時間以内であっても、パチンコ店、麻雀店、ゲームセンター、キャバレー、スナック、バーなど、風俗営業関連の店で働くことは固く禁じられています。これには、客席での接客だけでなく、皿洗いや清掃といった裏方の業務も含まれるため、注意が必要です。
個別許可とは?フリーランスや副業など特別な活動
個別許可は、包括許可の対象外となる専門的・個人的な活動に対して、内容を個別に審査した上で与えられる許可です。
1. 対象となる人(就労ビザ保持者、留学生フリーランスなど)
個別許可は、在留資格の種類を問わず、全ての人が対象となり得ます。例えば、普段は会社員として働く就労ビザ保持者が副業をする場合や、留学生がフリーランスとして活動する場合などが典型例です。
2. 許可される活動の具体例
個別許可が必要となる主なケースは、特定の企業に「雇用」されるのではなく、個人として業務を請け負う場合です。
個人事業主(フリーランス)としての業務委託
特定の企業と業務委託契約を結び、通訳、翻訳、プログラミング、ウェブデザインといった仕事を個人事業主として請け負う場合です。報酬は時給ではなく、成果物に対して支払われます。
報酬の発生するインターンシップ
留学生が、学業の専攻と関連する企業で、報酬を受け取りながらインターンシップに参加する場合も、個別許可が必要です。
就労ビザを持つ人の副業(本業とは別の会社でのアルバイトなど)
エンジニアとして働く人が、週末に別の会社で通訳のアルバイトをする、といったケースです。本業の会社の業務とは異なる活動のため、個別許可が必要となります。
大学のTA(ティーチング・アシスタント)やRA(リサーチ・アシスタント)
留学生が所属する大学と契約し、TAやRAとして活動する場合も、週28時間の枠とは別に個別許可を受けることが一般的です。
3. 時間や活動場所に個別具体的な制限がかかる
個別許可は、包括許可と異なり、活動内容に厳しい制限がかかります。
許可された特定の会社、特定の業務でしか働けない
申請時に定めた契約相手との、特定の業務しかおこなえません。もし契約先を追加したり、業務内容を変更したりする場合は、改めて別の個別許可を取得し直す必要があります。
時間制限はケースバイケースで判断される
個別許可には、週28時間のような一律の時間制限はありません。本来の在留活動を阻害しない範囲で、個別の活動内容に応じて、妥当な活動時間が個別に判断されます。
ケーススタディ|この仕事はどっち?具体例で判断
ご自身の活動がどちらに当たるのか、具体的な職種を例に見ていきましょう。判断の鍵は「会社に雇われているか、個人で仕事を受けているか」です。
1. コンビニや飲食店でのアルバイト → 包括許可
店と時給で雇用契約を結び、シフトに入って働く、最も一般的なアルバイトです。これは包括許可の対象です。
2. Uber Eatsなどのフードデリバリー配達員 → 個別許可
配達員は、プラットフォーム運営会社に雇用されているわけではなく、個人事業主として配達業務を請け負う形態のため、個別許可が必要となります。
3. フリーランスの通訳・翻訳・プログラマー → 個別許可
企業からプロジェクト単位で仕事を請け負い、成果物を納品して報酬を得る働き方です。これも個人事業主としての活動なので、個別許可の対象です。
4. Youtubeの広告収入やライブ配信の投げ銭 → 個別許可の可能性
継続的に収益を上げて事業としておこなう場合、個人事業と見なされ、個別許可が必要となる可能性が非常に高いです。趣味の範囲を超えた活動は、事前に相談するのが賢明です。
資格外活動許可の申請手続き
包括許可と個別許可では、申請のタイミングや方法が異なります。
1. 包括許可の申請方法
包括許可は、比較的簡単な手続きで申請できます。
空港での上陸時申請が最もスムーズ
留学生として初めて日本に入国する際、空港の入国審査で在留カードが交付されるタイミングで同時に申請するのが、最も簡単で早い方法です。
在留資格の変更・更新時や、後からの申請も可能
入国時に申請し忘れた場合でも、在留資格の更新や変更と同時に申請したり、後から資格外活動許可だけを単独で申請したりすることも可能です。
2. 個別許可の申請方法
個別許可の申請は、活動内容を証明する必要があるため、より複雑になります。
勤務先や活動内容を証明する詳細な書類が必要
契約書や事業内容の説明資料を使い、活動の相手、場所、内容、期間、報酬などを詳細に立証する必要があります。
申請から許可までにかかる期間
個別に審査されるため、申請から許可までは2週間から2ヶ月程度かかるのが一般的です。許可が下りる前に活動を開始することはできません。
3. 必要書類一覧(申請書、理由書など)
どちらの許可を申請する場合でも「資格外活動許可申請書」は必須です。個別許可の場合は、これに加えて、活動内容を証明する契約書の写しや、なぜその活動が必要なのかを説明する理由書などを添付します。
違反した場合の罰則|知らなかったでは済まされない重いペナルティ
資格外活動のルールに違反した場合、本人と雇用主の双方に、将来を左右する重い罰則が科される可能性があります。
1. 外国人本人への罰則(在留資格の更新・変更不許可、退去強制)
ルール違反が発覚した場合、将来の在留資格の更新や変更が不許可になる可能性が非常に高くなります。悪質なケースでは、ビザが取り消され、日本から退去強制(強制送還)となることもあります。
2. 雇用主への罰則(不法就労助長罪)
許可の有無や種類、時間制限を確認せずに外国人を働かせた雇用主は、「不法就労助長罪」に問われます。これは、3年以下の懲役または300万円以下の罰金(あるいはその両方)が科されうる、非常に重い犯罪です。
違反が発覚する主なケース(更新時の提出書類、通報など)
違反は、在留資格の更新時に提出する課税証明書などから発覚することが最も多いです。また、同僚や第三者からの通報によって調査が入るケースもあります。
まとめ:「契約形態」が判断の鍵。ルールを守って安全な活動を
資格外活動許可の「包括許可」と「個別許可」の違いについて解説しました。最後に、安全に活動するための重要なポイントを振り返ります。
1. 会社に雇われるアルバイトは「包括許可」
留学生や家族滞在の方が、時給制などで一般的なアルバイトをする場合は、週28時間のルールを守れば「包括許可」で活動できます。
2. 個人で仕事を受けるフリーランス活動は「個別許可」
フリーランスの翻訳やプログラマー、フードデリバリー配達員など、雇用契約に基づかない働き方をする場合は、活動ごとに「個別許可」が必要です。
3. 違反すると本人と雇用主の双方に厳しい罰則
「知らなかった」では済まされません。ルール違反は、日本での生活や会社の信用を失いかねない重大なリスクを伴います。
4. 判断に迷ったら、必ず専門家へ相談を
ご自身の活動や、雇用したい外国人のケースがどちらに該当するか少しでも迷ったら、自己判断は禁物です。必ず、申請の前に専門家へ相談してください。
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行政書士法人35
代表行政書士 萩台 紘史
2021年4月 SANGO行政書士事務所を開業
2023年9月 法人化に伴い「行政書士法人35」を設立
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