トルコ人を日本で雇用するための学歴要件とは?技人国(ぎじんこく)ビザは取れる?|【4+4+4制】日本との違いや就労ビザ要件を行政書士が解説
トルコ人候補者の履歴書にある「Lise(高校)」や「Lisans(学士)」といった学歴。あるいは、同国の教育制度である「4+4+4制」が日本のどの教育段階に相当するのか。こうした疑問を抱く人事担当者の方も少なくないでしょう。
親日国として知られ、優秀な人材も多いトルコ。しかし、その教育制度は日本と大きく異なるため、採用やビザ申請の際に学歴の評価で戸惑うケースは少なくありません。
本記事では、就労ビザの専門家が、トルコの教育制度「4+4+4制」の全体像から高等教育、そして日本の就労ビザ要件との関連性まで、図解を交えて体系的に解説します。最後まで読めば、トルコ人材の学歴を自信を持って評価できるようになります。
まずは結論!日本とトルコの教育制度「4+4+4制」の違いがわかる比較表
トルコの教育制度を理解する鍵は、2012年に導入された「4+4+4制」にあります。まず、日本の制度との主な違いを比較表で見て、全体像を把握しましょう。この基本的な違いを知るだけで、候補者の学歴背景がぐっと理解しやすくなります。
項目 | トルコ | 日本 |
---|---|---|
基本学制 | 4+4+4制 | 6-3-3制 |
義務教育 | 12年間 | 9年間 |
新学期開始 | 9月中旬 | 4月 |
高校の種類 | 普通科、職業科、宗教科など多様 | 普通科、専門学科、総合学科など |
基本学制は12年間の義務教育「4+4+4制」
トルコの現行制度は「4+4+4制」と呼ばれ、初等学校4年、中学校4年、高校4年の合計12年間が義務教育です。2012年の法改正により、従来の8年間から延長されました。これにより、6歳頃から18歳頃まですべての国民が教育を受けることになります。
日本との主な違い(学期、入学月、高校の種類)
学年暦は9月中旬に始まり、翌年6月中旬に終わる2学期制が一般的です。また、日本の高校に相当する「リセ(Lise)」には、大学進学を目指す普通高校(アナドル・リセ)の他、専門技術を学ぶ職業高校(メスレック・リセ)や宗教系高校など、多様な種類が存在する点も特徴です。
大学進学には全国統一試験「YKS」が必須
トルコで大学に進学するためには、「YKS(高等教育機関試験)」を受けなければなりません。これは全国統一の選抜試験であり、そのスコアが、進学できる大学や学部を決定づけます。トルコの若者にとって、その後のキャリアを左右する極めて重要な試験です。
トルコの12年一貫教育「4+4+4制」を4つのステージで解説
トルコの「4+4+4制」は、それぞれの4年間が明確な役割を持っています。各ステージを理解することで、トルコ人の教育課程をより深く知ることができます。
1. 初等学校(İlkokul):最初の4年間
「イルクオクール(İlkokul)」は、6歳頃から始まる最初の4年間の課程で、日本の小学校低学年にあたります。この段階で、読み書きや算数といった基礎学力の土台を築きます。
2. 中学校(Ortaokul):次の4年間
「オルタオクール(Ortaokul)」は、初等学校に続く4年間の課程で、日本の小学校高学年から中学校前半にあたります。より専門的な科目を学び始め、生徒の興味や関心が分かれる時期です。
3. 後期中等教育(Lise):最後の4年間
義務教育の最後を飾るのが「リセ(Lise)」と呼ばれる4年間の後期中等教育です。これが日本の高等学校に相当します。この段階で、生徒は将来の進路に応じて様々な種類の高校に進学します。
アナドル高校(普通科)とメスレック高校(職業科)の違い
大学進学を目指す生徒の多くは「アナドル・リセ」と呼ばれる普通高校に進みます。一方で、特定の専門技術を習得し、就職を目指す生徒は「メスレック・リセ」と呼ばれる職業・技術高校を選択します。
4. 高等教育(Yükseköğretim):大学・大学院
12年間の義務教育を終え、YKSに合格した学生は高等教育機関に進学します。これには、2年制の準学士課程、4年制の学士課程、そして大学院(修士・博士)が含まれます。
【採用担当者向け】トルコの高等教育と主要大学
トルコは高等教育にも力を入れており、国際的にも評価の高い大学が多数存在します。トルコ人材の専門性を評価する上で、大学のレベルや種類を知ることは非常に重要です。
トルコの大学の種類(国立大学と財団大学)
トルコの大学は、主に「国立大学(Devlet Üniversiteleri)」と「財団大学(Vakıf Üniversiteleri)」の2種類に分けられます。国立大学は国が運営し、財団大学は私的な財団が設立したいわゆる私立大学です。近年は、独自の特色を打ち出す質の高い財団大学が増えています。
2段階選抜の大学入学試験「YKS」
「YKS」は2つのセッションから構成されます。第1セッション(TYT)は全受験生必須の基礎能力テストです。4年制大学を目指す学生は、さらに第2セッション(AYT)で専門分野の試験を受ける必要があります。この合計スコアで、志望大学・学部への合否が判定されます。
トルコの主要大学ランキングTOP5
トルコには、特に工学や社会科学の分野で世界的に評価される大学があります。採用候補者の出身校を評価する際の参考にしてください。
- ボアジチ大学:イスタンブールにある名門。授業は全て英語で行われ、国際的な評価が非常に高い。
- 中東工科大学(METU):首都アンカラにある、工学・自然科学分野のトップ大学。
- イスタンブール工科大学(ITU):世界で最も古い工科大学の一つ。技術系で高い評価。
- コチ大学:イスタンブールの財団大学のトップ。医学部や経営学部が有名。
- イスタンブール大学:トルコで最も歴史のある総合大学の一つ。
【専門家の視点】トルコの学歴と日本の就労ビザ要件
人事担当者にとって最も重要な、「トルコの大学卒業資格は、日本の就労ビザの学歴要件として認められるのか」という点について、ビザの専門家として明確に解説します。
結論:トルコの4年制大学卒業「Lisans(学士)」は就労ビザの学歴要件を満たす
結論として、トルコの4年制大学を卒業して取得する「Lisans(リサンス)」の学位は、日本の「学士」に相当するため、「技術・人文知識・国際業務」ビザの学歴要件を満たします。採用候補者が「Lisans Diploması(学士号の卒業証書)」を所持しているかを確認することが重要です。
「Lise(高校)」卒業だけでは学歴要件に該当しない
トルコの義務教育は12年間ですが、「Lise(リセ)」の卒業だけでは、日本の「高等学校卒業」と同等の扱いになります。これだけでは大学卒業とは見なされず、「技術・人文知識・国際業務」ビザの学歴要件は満たせませんので注意が必要です。
「Ön Lisans(準学士)」のビザ申請における評価
トルコの2年制大学で取得できる「Ön Lisans(オン・リサンス)」は、日本の「短期大学士」に相当する準学士号です。日本の短期大学卒業者と同様、従事する業務との密接な関連性が認められれば、ビザ取得の可能性があります。
「Yüksek Lisans(修士)」は高度専門職ビザで有利に
「Yüksek Lisans(ユクセック・リサンス)」は日本の「修士」に相当する学位です。この学位を持つ候補者は、専門職としての就労ビザはもちろん、優遇措置のある「高度専門職」ビザのポイント計算で加点対象となり、採用において非常に有利になります。
【駐在員・移住者向け】イスタンブールの学校選択肢
トルコ、特にイスタンブールにご家族で赴任される場合のお子様の教育についても触れておきます。
1. 帰国後も安心「イスタンブール日本人学校」
イスタンブールには、小学部と中学部を持つ日本人学校があります。日本の学習指導要領に沿った教育が受けられるため、日本へのスムーズな帰国や編入を考えているご家庭に最適です。
2. 国際感覚を養う「インターナショナルスクール」
イスタンブールには数多くのインターナショナルスクールがあり、教育水準も高いことで知られています。英語で国際的なカリキュラム(IBなど)を学び、多様な文化に触れる機会が得られます。ただし、学費は高額な傾向にあります。
トルコの教育制度に関するよくある質問(Q&A)
- Q1. トルコの卒業証明書にアポスティーユは必要ですか?
- A. はい、必要です。トルコは「外国公文書の認証を不要とする条約(ハーグ条約)」の加盟国です。そのため、トルコの公文書(大学の卒業証明書など)を日本で公式に使用する際には、トルコ当局が発行したアポスティーユの添付が求められます。
- Q2. 「Lise」にはどんな種類がありますか?
- A. 大学進学を目指す「アナドル高校(普通科)」、専門技術を学ぶ「職業・技術アナドル高校」、理数系に特化した「理科高校」、宗教と科学を学ぶ「イマーム・ハティプ高校」など、多様な種類があります。候補者の出身高校の種類から専門性の一端を推測できます。
- Q3. トルコの大学を卒業すれば、どんな職種でも就労ビザは取れますか?
- A. いいえ。ビザの許可において最も重要なのは、大学での専攻と日本での職務内容との間に関連性が認められることです。例えば、大学で観光学を専攻した人が、日本でITエンジニアとして働くことは原則として認められません。
- Q4. 採用時に確認すべき学歴証明書は何ですか?
- A.「Diploma(ディプロマ)」と呼ばれる卒業証書です。この書類に、取得した学位(Lisans, Ön Lisansなど)が記載されています。併せて、履修科目を確認できる成績証明書の提出を求めると、専門性の評価がより正確になります。
まとめ:トルコの教育制度を正しく理解し、グローバル採用を成功させよう
トルコ教育制度の重要ポイント
トルコの教育制度について、最後に重要なポイントを振り返ります。
- 基本は「4+4+4制」の12年義務教育
- 4年制大学卒(Lisans)は日本の就労ビザの学歴要件を満たす
- 高校卒(Lise)だけでは学歴要件を満たさないので注意が必要
- 採用時には「Diploma」で学位を確認することが不可欠
複雑な学歴評価とビザ申請は専門家への相談が鍵
親日国でありながら、教育制度が大きく異なるトルコからの人材採用を成功させるには、学歴の正しい評価と、それを基にした適切なビザ申請が鍵となります。特に「Lise」や「Lisans」といった用語の正確な理解は、採用のミスマッチやビザの不許可を防ぐために不可欠です。不確かな情報で判断せず、ぜひ一度専門家にご相談ください。
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行政書士法人35
代表行政書士 萩台 紘史
2021年4月 SANGO行政書士事務所を開業
2023年9月 法人化に伴い「行政書士法人35」を設立
外国人の就労ビザ申請に専門特化した事務所として年間350件超の就労ビザ申請をサポート