アメリカ人を日本で雇用する際の学歴要件とは?技人国(ぎじんこく)ビザは取れる?|「K-12」を徹底解説!コミュニティカレッジと就労ビザ要件も
アメリカ人候補者の履歴書にある「Associate Degree」は大卒に相当するのか。コミュニティカレッジ卒業で就労ビザは取得できるのか。グローバル採用が活発になる中、アメリカの多様な教育制度に戸惑う人事担当者様は少なくありません。
アメリカの教育は、国が定めた統一基準ではなく州ごとに制度が異なり、「K-12」や「コミュニティカレッジからの編入」など、日本人には馴染みの薄い仕組みが数多く存在します。この違いを理解しないまま採用を進めると、ビザ申請で思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。
本記事では、就労ビザの専門家が、アメリカ教育制度の基本「K-12」から高等教育、そして日本の就労ビザ学歴要件との関連性まで、体系的に解説します。最後まで読めば、アメリカ人材の学歴を正しく評価し、自信を持って採用活動を進めるための確かな知識が身につきます。
まずは結論!日本と全く違うアメリカ教育制度の3大原則
アメリカの教育制度は自由と多様性を重んじる国の文化を色濃く反映しています。日本の画一的な制度とは大きく異なるため、まず3つの大原則を押さえましょう。この前提を理解することが、アメリカの学歴を正しく評価する上で不可欠です。
1. 国の統一基準はなく、教育の権限は「州」にある
アメリカには、日本のような全国共通の学習指導要領は存在しません。教育に関する権限は連邦政府ではなく、各州政府およびその下の学区(School District)が持っています。そのため、卒業に必要な単位数や義務教育の年数まで、州や学区によってルールが異なります。
2. 義務教育は「K-12」システム(幼稚園から高校まで)
アメリカの公教育の根幹をなすのが「K-12(ケートゥエルブ)」というシステムです。これは、幼稚園(Kindergarten)から始まり、12年生(高校3年生)までの合計13年間の一貫した教育期間を指し、多くの州でこの期間が義務教育と定められています。
3. 「コミュニティカレッジ」からの4年制大学編入が一般的
高等教育において、2年制の「コミュニティカレッジ」が非常に重要な役割を担っています。まず学費の安いコミュニティカレッジで2年間学び、そこから4年制大学の3年次に編入するのは、アメリカでは一般的な進学ルートの一つです。
アメリカの学校制度「K-12」システムを年齢別に解説
「K-12」は、具体的にどのような学校段階で構成されているのでしょうか。州によって区切り方は異なりますが、ここでは最も一般的な「5-3-4制」を例に解説します。
1. Elementary School(小学校):6歳~10歳頃
日本の小学校に相当する5年間の課程です(Kindergartenを含むと6年間)。1人の担任がほとんどの教科を教えるスタイルが一般的で、基礎的な読み書きや算数を学びます。
2. Middle School(中学校):11歳~13歳頃
日本の小学校6年生から中学校2年生あたりに相当する3年間の課程です。この段階から、教科ごとに専門の教師が教えるようになります。
3. High School(高校):14歳~18歳頃
日本の中学校3年生から高校3年生に相当する4年間の課程です。生徒は必修科目に加え、自分の興味や進路に合わせた多くの選択科目を履修します。
高校卒業資格「High School Diploma」
州や学区が定める卒業要件を満たすと、「High School Diploma」という高校卒業資格が授与されます。これがK-12教育の修了証明となります。
大学進学に重要な「GPA」と「SAT/ACT」
大学出願時には、高校での成績評価平均値である「GPA(Grade Point Average)」と、全国共通の学力適性試験である「SAT」または「ACT」のスコアが非常に重要視されます。
【採用担当者向け】アメリカの高等教育と大学の種類
K-12を終えた後の進路は多岐にわたります。特に「コミュニティカレッジ」と「4年制大学」の違いを理解することが、採用実務では極めて重要です。
1. コミュニティカレッジ(2年制)
地域住民のために開かれた公立の2年制大学で、職業訓練や4年制大学への編入など、多様なコースを提供しています。
取得できる学位は「Associate Degree(準学士)」
コミュニティカレッジを卒業すると、「Associate Degree(準学士号)」が授与されます。これは日本の「短期大学士」に相当する学位です。
4年制大学への「編入のステップ」としての役割
多くの学生にとって、コミュニティカレッジは最終学歴ではなく、より学費の高い4年制大学へ進むための「ステップ」です。ここで良い成績を収め、名門大学の3年次に編入するケースは珍しくありません。
2. 4年制大学(University/College)
学士号、修士号、博士号を授与する高等教育機関です。大規模な総合大学(University)と、学部教育に重点を置く小規模な大学(College)があります。
取得できる学位は「Bachelor’s Degree(学士)」
4年制大学の学部課程を卒業すると、「Bachelor’s Degree(学士号)」が授与されます。これが、日本の「大学卒業」に相当する学位です。
【専門家の視点】アメリカの学歴と日本の就労ビザ要件
ここからが最も重要な、ビザ専門家としての解説です。アメリカの多様な学歴は、日本の就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)の要件にどう影響するのでしょうか。
結論:「Bachelor’s Degree(学士)」以上であれば安心
日本の「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得するための学歴要件は、原則としてアメリカの4年制大学を卒業し、「Bachelor’s Degree(学士号)」を授与されていることです。この学位が、日本の「大学卒業」と同等とみなされ、専門的な知識を有する証明となるためです。
重要:「Associate Degree(準学士)」でもOK!
コミュニティカレッジを卒業して得られる「Associate Degree(準学士号)」は、「短期大学卒」として扱われるため短期大学士と同等です。そのため技術・人文知識・国際業務ビザの要件でいうところの「大学卒業」相当に該当します。
採用時の注意点:「最終学歴」の確認が必須
アメリカ人候補者の履歴書を見る際は、「どこのコミュニティカレッジを卒業したか」ではなく、「最終的にどこの4年制大学を卒業し、Bachelor’s Degreeを取得したか」を確認することが決定的に重要です。コミュニティカレッジ卒業後に4年制大学に編入しているケースが多いため、卒業証明書(Diploma)や成績証明書(Transcript)で最終学歴をしっかり確認しましょう。
【駐在員・移住者向け】アメリカの日本人学校と日本語補習授業校
アメリカに家族で赴任される方向けに、お子様の日本語教育の選択肢をご紹介します。
1. 全日制日本人学校(ニューヨーク、シカゴなど)
ニューヨーク、シカゴ、グアムには、日本の学習指導要領に沿った教育を行う全日制の日本人学校があります。日本の学校へのスムーズな編入を希望する場合に最適な選択肢です。
2. 日本語補習授業校
全米各地には、土曜日などを利用して日本語や日本の科目を学ぶ「日本語補習授業校」が数多く存在します。平日は現地の学校で英語や多様な文化を学び、週末に日本語能力を維持・向上させるというスタイルです。
アメリカの教育制度に関するよくある質問(Q&A)
- Q1. アメリカの卒業証明書にアポスティーユは必要ですか?
- A. はい、必要です。アメリカはハーグ条約の加盟国です。大学の卒業証明書などの公文書は、州務長官室などでアポスティーユ認証を受けることで、日本の公的機関でも有効な書類として扱われます。
- Q2. GPAとは何ですか?どのくらいのスコアなら優秀と言えますか?
- A. GPAは、各科目の成績を点数化し、その平均を算出したものです(通常4.0が満点)。一般的に、3.0以上であれば「良好」、3.5以上であれば「優秀」と見なされます。
- Q3. 州によって教育制度が違うとは、具体的に何が違うのですか?
- A. 例えば、義務教育の開始・終了年齢、高校卒業に必要な単位数、必修科目などが州や学区ごとに異なります。そのため、A州の高校卒業資格とB州の高校卒業資格は、その中身が違うということが起こり得ます。
- Q4. 採用時に確認すべき学歴の証明書は何ですか?
- A. 「Diploma(卒業証書)」で取得した学位(Bachelor’s Degreeなど)を確認し、併せて「Official Transcript(公式成績証明書)」を取り寄せ、専攻や履修科目、GPAを確認することが最も確実です。
まとめ:アメリカの多様な教育制度を理解し、グローバル採用に活かす
アメリカ教育制度の重要ポイント
最後に、アメリカ人材の採用において重要なポイントを振り返ります。
- 教育制度は国ではなく州や学区が管轄する
- 基本は幼稚園から高校までの「K-12」システム
- 就労ビザの学歴要件は「Bachelor’s Degree(学士)」以上で安心
学歴評価の誤解はビザ不許可に直結する
アメリカ人材の採用で最も注意すべきは、「コミュニティカレッジ卒」を「大卒」と誤認してしまうことです。この誤解は、就労ビザの不許可に直結する致命的なミスとなり得ます。多様で複雑なアメリカの教育制度を正しく理解し、候補者の能力を適切に見極めるためには、専門的な知識が不可欠です。
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行政書士法人35
代表行政書士 萩台 紘史
2021年4月 SANGO行政書士事務所を開業
2023年9月 法人化に伴い「行政書士法人35」を設立
外国人の就労ビザ申請に専門特化した事務所として年間350件超の就労ビザ申請をサポート