技術・人文知識・国際業務(ぎじんこく)とは|できる業務、要件を解説
代表的な就労ビザ「技術・人文知識・国際業務」で在留している外国人は2023年12月時点で約36万人と、在留外国人全体のおよそ10%、「技能実習」についで2番目に多い状況です。
省略して「技人国(ぎじんこく)」とも呼ばれています。
ここでは、技術・人文知識・国際業務でできる業務や要件、申請方法等について詳しく解説していきます。
目次
- 「技術・人文知識・国際業務」でできる業務とは?
- 「技術(ぎ)」に該当する業務
- 「人文知識(じん)」に該当する業務
- 「国際業務(こく)」に該当する業務とは
- 「技術・人文知識・国際業務」で認められていない業務とは?
- 【外国人】技人国ビザを取得する要件
- 【会社】技人国ビザを取得する要件
- 業務との関連性について
- その他の審査のポイントについて
- 技人国ビザの申請の流れと必要書類について
- 技人国ビザの在留期間について
- まとめ
「技術・人文知識・国際業務(ぎじんこく)」でできる業務とは?
入管法では次のように明記されています。
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務
要約すると以下のとおりです。
・技術若しくは知識を要する業務
・外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務
これではよく分かりませんね。
では、一つずつ詳しく見ていきましょう。
「技術(ぎ)」に該当する業務
技術開発、システムエンジニア、プログラマー、精密機器の設計など
大学等で理系科目を専攻、または長年の実務経験の過程で修得した専門技術的な知識等を有していなければ行うことのできない業務です。
代表的な理系科目
特徴
実験や観察、データ分析を通じて、批判的思考力や仮説検証能力も身につけている。
「人文知識(じん)」に該当する業務
事務、経理、会計、人事労務、コンサルティングなど
主に文系の学術上の素養を背景とする専門的知識を必要とする業務です。
代表的な文系科目
特徴
歴史、文化、社会、思想など、人間社会に関する幅広い知識を得ることで、物事を多角的に捉え、深く理解する力が身につけている。
文献研究や議論を通して、情報を分析し、論理的に思考する力を身に着けている。
「国際業務(こく)」に該当する業務
翻訳、通訳、語学講師、海外取引、広報、宣伝、デザイン編集、商品開発など
外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性に基づく専門的な能力を必要とする業務です。
外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務とは?
単に外国人であるだけでなく、日本国内の文化の中では育てられないような思考又は感受性に基づく一定水準以上の専門的能力を持って、その能力を要する業務に従事するものであることを意味します。
「技術・人文知識・国際業務(ぎじんこく)」で認められていない業務とは?
技人国ビザで従事できる業務とは、専門的な知識や技術などを要する、ということがお分かりいただけたかと思います。そのため、次のような業務に就くことはできません。
・単純労働といわれる業務(現場作業員、工場のライン作業員、レジスタッフ、清掃員、飲食店の接客スタッフなど)
・求人の際の採用基準に「未経験可、すぐに慣れます。」と記載のあるような業務
・特段の技術又は知識を要しない業務
・反復訓練によって従事可能な業務
入管の見解は?
3~6ヵ月程度の研修があれば誰でも出来るような業務や、マニュアルを見ながらならできる業務等は、技人国ビザの対象外との見解です。
【外国人】技人国ビザを取得する要件
学歴について
当該技術若しくは知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し、又はこれと同等以上の教育を受けたこと。
当該技術又は知識に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了(当該修了に関し法務大臣が告示をもって定める要件に該当する場合に限る。)したこと。
・大学を卒業し学位を取得していること(短期大学でも可)
・大学と同等以上の教育を受けたこと
・日本の専門学校を卒業し専門士の称号を授与されていること
※ 海外の場合、専門学校と名の付くものであっても大学と同等の教育、いわゆる高等教育に該当する場合があります。詳しくは該当国の大使館又は行政書士等の専門家にご相談ください。
・中国での学歴について
・タイでの学歴について
・ドイツでの学歴について
※ 日本語学校は学歴要件に含まれません(海外、国内問わず)
実務経験について
・10年以上の実務経験(大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程又は専修学校の専門課程において当該技術又は知識に関連する科目を専攻した期間を含む。)を有すること。
・申請人が外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務に従事しようとする場合は、次のいずれにも該当していること。
・翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務に従事すること。
・従事しようとする業務に関連する業務について3年以上の実務経験を有すること。
ただし、大学を卒業した者が翻訳、通訳又は語学の指導に係る業務に従事する場合、実務経験は不要。
職種別にまとめると、
「技術」
・大学を卒業し学位を取得していること(短期大学でも可)
・大学と同等以上の教育を受けたこと
・日本の専門学校を卒業し専門士の称号を授与されていること
・実務経験10年以上
「人文知識」
・大学を卒業し学位を取得していること(短期大学でも可)
・大学と同等以上の教育を受けたこと
・日本の専門学校を卒業し専門士の称号を授与されていること
・実務経験10年以上
「国際業務」
・実務経験3年以上
・大学卒業者が翻訳通訳、語学指導に従事する場合は実務経験不要
【会社】技人国ビザを取得する要件
雇用契約
通常は、一般的な会社員での雇用で問題ございません。
しかし、近年は多種多様な働き方があるように、雇用主との契約についてもいくつかのケースが想定されます。
入管法で規定されている、本邦の公私の機関との契約とは、
会社、国、地方公共団体、独立行政法人、公益法人等の法人のほか、任意団体(ただし、契約当事者としての権利能力はありません。)も含まれます。また、本邦に事務所、事業所等を有する外国の国、地方公共団体(地方政府を含む。)、外国の法人等も含まれ、さらに個人であっても、本邦で事務所、事業所等を有する場合は含まれます。「契約」には、雇用のほか、委任、委託、嘱託等が含まれますが、特定の機関との継続的なものでなければなりません。
業務委託などの場合には注意が必要です
雇用の継続性という観点から考えると、委任や委託契約の場合には通常の正社員雇用と比べ、審査が慎重に行われる点には注意が必要です。そのため申請時には、継続性について問題がない旨を資料で立証する必要があります。
報酬要件
日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けることが必要です。国籍による差別は認められていないため、外国人だからといって日本人よりも安い報酬で雇用することはできません。
なお、最低賃金を下回っている場合には不許可になる可能性が非常に大きくなります。
ここでいう報酬とは、「一定の役務の給付の対価として与えられる反対給付」をいい、通勤手当、扶養手当、住宅手当等の実費弁償の性格を有するもの(課税対象となるものを除きます。)は含みません。
業務との関連性について
技人国ビザの申請において業務との関連性は重要です。関連性がない、関連性を上手く説明できなかった、という理由で不許可となるケースは多いです。
例えば、会計学を専攻していた者が経理の業務に従事する、情報工学を専攻していた者がエンジニアの業務に従事する、建築土木学を専攻していた者が施工管理業務に従事する、というのは非常に分かりやすいです。
では、上記の例のような専攻科目名と業務名が一致しないような場合にはどのように判断すればよいのでしょうか。
入管は、業務との関連性について次のように示しています。
大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とし、また、その目的を実現するための教育研究を行い、その成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するとされており、このような教育機関としての大学の性格を踏まえ、大学における専攻科目と従事しようとする業務の関連性については、従来より柔軟に判断しています。また、高等専門学校は、一般科目と専門科目をバランスよく配置した教育課程により、技術者に必要な豊かな教養と体系的な専門知識を身につける機関であるとされており、大学と同様、その目的を実現するための教育を行い、その成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとするものとされていることから、大学に準じた判断をしています。 他方、専修学校は、職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図ることを目的とするとされていることから、原則として専修学校における専攻科目と従事しようとする業務については、相当程度の関連性を必要とします。
入管庁:「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について
入管の見解として、大学卒業者の関連性は柔軟に判断し、専門学校卒業者の関連性は相当程度の関連性を求めています。
一般的な事務業務に従事するケースを例に説明します。
関連性は柔軟に判断されます。専攻科目を気にすることはほぼありません。
・専門学校卒業者
事務業務に必要とされる専攻科目との関連性が相当程度求められます。
Word、Excelなどのofficeツールの知識、一定以上の日本語能力(日本語文書作成能力、ビジネス日本語能力など)
なお、専門学校卒業でも大学卒業と同じく関連性を柔軟に判断してもらえる場合があります。
1.外国人留学生キャリア形成促進プログラム認定を受けている専門学校
「専修学校の専門課程における外国人留学生キャリア形成促進プログラムの認定に関する規程(令和5年文部科学省告示第53号)」第2条に定める文部科学大臣による認定を受けた専修学校の専門課程の学科を修了した者(以下「認定専修学校専門課程修了者」という。)については、企業等と連携して実習等の授業を行っていることや、日本社会に関する理解を促進する環境が整備されていることなどを認定要件とする専門課程を修了し、質の高い教育を受けたことにより、修得した知識を応用できると考えられることから、専攻科目と従事しようとする業務の関連性について、柔軟に判断することとしています。
2.専門学校卒でも実務経験が3年以上ある場合
専修学校の専門課程を修了した者が、従事しようとする業務に相当程度関連する科目を直接「専攻」したとは認められないような場合でも、履修内容全体を見て、従事しようとする業務に係る知識を習得したと認められるような場合においては、総合的に判断した上で許否の判断を行っているほか、関連性が認められた業務に3年程度従事した者については、その後に従事しようとする業務との関連性については、柔軟に判断します。
関連性の判断は何を見ればよいのか?
大学又は専門学校の成績証明書を確認します。履修した科目の一覧から業務との関連性を見出します。専門学校卒業者の場合、入管のガイドラインにもあるとおり、直接「専攻」したとは認められないような場合でも、履修内容全体を見て、従事しようとする業務に係る知識を習得したと認められるような場合においては、総合的に判断した上で許否の判断を行っている、とあります。一般の方には難しい判断となりますので、行政書士等の専門家に相談することも検討しましょう。
その他の審査のポイント
会社の業績について
2年連続で債務超過となっている場合には注意が必要です。技人国ビザの審査では雇用主である会社の事業安定性及び継続性が審査されます。単に赤字であると理由から不許可になる可能性は低いと考えますが、2年連続で債務超過となっていると安定性・継続性という点については疑義が生じます。
その場合、公認会計士や中小企業診断士、顧問税理士等の専門家が作成した企業評価書の提出を行い将来的に問題はないことを説明する必要があります。
業務量について
外国人が従事する業務量が少ないと判断された場合、不許可となる可能性があります。
・来店客に占める外国人の割合が約3割
・外国人客のためにメニュー表を翻訳する
上記の理由で申請をしてもおそらく不許可となるでしょう。
外国人の割合が3割では殆どの時間帯で通訳業務を行っていない、メニュー表を翻訳することは常時発生する業務ではない、ということで業務量が少なく不許可となるでしょう。
素行が不良でないこと
まず、素行が善良であることが前提となります。
良好でない場合には消極的な要素として評価されます。よくあるのが、資格外活動許可の条件に違反して、恒常的に1週について28時間を超えてアルバイトに従事しているような場合です。(オーバーワーク)
他には、学校の出席率が極端に低い場合です。留学ビザから技人国ビザへの変更申請時に問題となることがあります。本来、留学生は勉強することが目的であるため、出席率が低いと素行不良と判断されてしまいます。特別な事情がある場合を除き、一般的には出席率が70%を下回っている場合には別途説明が必要でしょう。
届出義務の履行
日本で生活をする外国人にはいくつもの届出義務があります。
在留カードの記載事項に係る届出、在留カードの有効期間更新申請、紛失等による在留カードの再交付申請、在留カードの返納、所属機関等に関する届出など。この義務を履行していないからといって、ただちに不許可となる可能性は低いですが、長い在留期間をもらえる可能性は低くなります。
技人国ビザの申請の流れと必要書類について
申請の流れ
海外から招へいする場合の流れ
1.日本にいる代理人が入管へ在留資格認定証明書交付申請を行います。
2.許可後、認定書を海外にいる外国人本人へ送付します。
3.現地の日本大使館又は領事館でビザの発給申請を行います。
4.ビザ発給後、日本に入国。空港で在留カードを受け取ります。
技人国ビザへ変更する場合(留学ビザからの変更等)
1.入管へ在留資格変更許可申請を行います。
2.許可後、新しい在留カードの交付手続きを行います。
技人国ビザを更新する場合
1.入管へ在留期間更新許可申請を行います。(在留期限に3ヵ月前から申請可能です)
2.許可後、新しい在留カードの交付手続きを行います。
必要書類について
技人国ビザの在留期間について
在留期間は、5年、3年、1年、3ヵ月のいずれかとなります。
まとめ
技人国ビザは、一般的にはよく知られている就労ビザです。
そのため、Web上では色々な情報が飛びかっています。その情報を鵜吞みにして、自分で申請をして不許可になるケースも多く見られます。また、一度不許可になると、その後の申請はより難しい状況となってしまいます。技人国ビザの申請は専門家への相談も検討しながら準備をすすめていきましょう。
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