タイ人を日本で雇用するための学歴要件とは?技人国(ぎじんこく)ビザは取れる?|日本の学制との違い、大学ランキングを解説
【更新2025.08.20】わかりやすくするため加筆修正をしました
「タイから採用する人材の学歴は、どう評価すべきか?」
タイの教育制度は日本と似ている点もありますが、学期制や大学入試制度など、独自のルールも少なくありません。不正確な情報に惑わされ、採用でミスマッチが生じる事態は避けたいものです。
本記事では、就労ビザの専門家が、タイの教育制度の全体像を小学校から大学まで網羅的に解説します。最後まで読めば、タイ人採用における学歴評価のポイントが明確になります。
まずは結論!日本とタイの教育制度の違いがわかる比較表
タイの教育制度は、日本の人事担当者や赴任予定者にとって分かりにくい部分もあります。まず、日本とタイの教育制度の主な違いを比較表で確認し、全体像を掴みましょう。
項目 | タイ | 日本 |
---|---|---|
基本学制 | 6-3-3制 | 6-3-3制 |
義務教育 | 9年間(小1~中3) | 9年間(小1~中3) |
新学期 | 5月中旬 | 4月 |
学期制 | 2学期制 | 3学期制(大学は2学期制が多い) |
基本学制は日本と同じ「6-3-3制」
タイの学校制度は、小学校6年・中学校3年・高校3年で構成される「6-3-3制」が基本です。この点は日本と共通しており、年齢と学年が対応するため理解しやすいのが特徴です。
義務教育は「9年間」
タイの義務教育は、満6歳から始まる初等教育6年間と、前期中等教育3年間を合わせた合計9年間です。これも日本の制度と共通しています。この期間、すべてのタイ国民は教育を受ける権利と義務を有し、公立学校の授業料は原則無料です。
新学期は5月スタートの「2学期制」
日本との大きな違いは、学年の開始時期と学期制度です。タイの学校は、一般的に5月中旬に新学期が始まり、翌年3月上旬に学年が終了します。学期は2学期制(セメスター制)が主流で、1学期(5月~9月)と2学期(11月~3月)の間に約1ヶ月の長期休みがあります。
タイの教育課程を4つのステージで解説
タイの教育は、大きく4つのステージに分かれています。それぞれのステージが日本のどの教育段階に相当するかを理解することが、学歴を正しく評価する第一歩です。
1. 幼児教育・就学前教育(アヌバーン)
「アヌバーン」は、日本の幼稚園や保育園にあたる3歳から5歳向けの就学前教育です(義務教育外)。小学校に併設されていることが多く、読み書きや計算の初歩を学ぶなど、早期教育の場としての役割も担っています。
2. 初等教育(プラトム):小学校6年間
「プラトム」は、満6歳から始まる6年制の小学校で、義務教育の一部です。「プラトム1」から「プラトム6」まであり、日本の小学校に相当します。国語(タイ語)、算数、理科、社会、英語などの基礎科目を学びます。
3. 中等教育(マタヨム):中学・高校の6年間
「マタヨム」は、日本の中学・高校にあたる6年間の課程です。前期・後期に分かれており、この段階で生徒は将来を見据えたコース選択を行います。
前期中等教育(マタヨム1~3):日本の中学校
「マタヨム1~3」の3年間は、日本の中学校に相当する前期中等教育であり、義務教育期間に含まれます。
後期中等教育(マタヨム4~6):日本の高校(普通科・職業科)
「マタヨム4~6」の3年間は、日本の高校に相当します。大学進学を目指す「普通科」と、専門技術を修得する「職業科」に分かれるのが大きな特徴です。
4. 高等教育(ウドムスックサー):大学・専門学校
「ウドムスックサー」は、大学や専門学校など、高校卒業後の高等教育機関全般を指します。タイ人材の学歴を評価する上で、最も重要なステージです。大学は4年制が基本ですが、学部により5〜6年制(医学部など)の課程もあります。
【採用担当者向け】タイの高等教育と大学ランキング
タイ人材の専門性を評価する上で、高等教育の理解は欠かせません。ここでは、タイの大学の種類や入試制度、国内トップクラスの大学をご紹介します。
タイの大学の種類(国立・私立・ラチャパット大学)
タイの大学は、大きく「国立大学」「私立大学」「ラチャパット大学」に分類されます。国立大学は政府からの助成で運営され、学費が安く優秀な学生が集まる傾向にあります。私立大学は独自の教育方針を掲げ、国際的なプログラムが充実しているのが特徴です。ラチャパット大学は、教員養成機関を前身とする大学群で、地域社会への貢献を重視しています。
大学入学に必要な全国共通テスト(TCAS)
タイの大学入試は、TCAS(Thai University Central Admission System)という統一システムで実施されます。このシステムでは、高校の成績(内申点)に加え、全国共通テストのスコアが合否の重要な判断材料となります。代表的なテストには、基礎学力を測る「O-NET」、適性検査の「GAT」、専門科目の学力を測る「PAT」などがあります。
タイの主要大学ランキングTOP5
タイには国際的にも評価の高い大学が数多く存在します。QS世界大学ランキング(2025年版)などを基に、国内トップクラスとされる大学を5つ紹介します。これらの大学の卒業生は、高い専門性を持つ人材として評価できるでしょう。
- チュラロンコン大学:タイで最も歴史と権威のある最高学府。「タイの東大」と称される。
- マヒドン大学:医学・薬学分野で特に評価が高く、アジアを代表する研究大学。
- チェンマイ大学:タイ北部における中心的な総合大学で、多様な学部を有する。
- タマサート大学:法学、政治学、経済学などの社会科学系で名高い名門大学。
- カセサート大学:農学分野でタイを牽引する、歴史ある国立大学。
【専門家の視点】タイの学歴と日本の就労ビザ要件
タイ人材を採用する人事担当者にとって最大の関心事は、「その学歴で、日本の就労ビザを取得できるか」という点でしょう。ここでは、就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)の要件と、タイの学歴との関係を解説します。
「技術・人文知識・国際業務」ビザの学歴要件
このビザを取得するための学歴要件は、原則として「大学を卒業し、学士以上の学位を有すること」または「日本の専門学校を卒業し、専門士の称号を有すること」です。重要なのは、従事する職務内容と大学での専攻内容との間に関連性が認められることです。
タイの大学(4年制)卒業者は学歴要件をクリア
タイの4年制大学を卒業し、「学士(Bachelor)」の学位を取得している場合、日本の就労ビザにおける学歴要件を満たします。チュラロンコン大学などの有名大学に限らず、タイの正規の大学を卒業していれば問題ありません。卒業証明書や成績証明書で、専攻内容と学位を確認することが重要です。
短期大学(2~3年制)卒業者の場合の注意点
タイには、短期大学に相当する2~3年制の課程(ディプロマやハイヤーディプロマ)もあります。これらの課程の修了が、日本の「短期大学卒業」と同等とみなされれば学歴要件を満たす可能性がありますが、個別の判断となるため、事前に専門家へ相談することをおすすめします。
専門学校・職業高校卒業者を採用する場合のポイント
タイの後期中等教育(マタヨム)の職業課程や、専門学校の卒業だけでは、原則として「技術・人文知識・国際業務」ビザの学歴要件を満たしません(※例外あり)。ただし、調理師として「技能」ビザを申請する場合や、10年以上の関連実務経験を証明できる場合など、別の要件でビザを取得できる可能性があります。
タイの教育制度に関するよくある質問(Q&A)
- Q1. タイの大学の卒業証明書は、そのまま日本で使えますか?
- A. いいえ、そのままでは公的な書類として通用しません。多くの場合、日本語翻訳の添付に加え、日本の外務省による「公印確認」と、在日タイ王国大使館による「領事認証」が必要です。これはタイが、書類手続きを簡略化するハーグ条約に加盟していないためです。
- Q2. タイの学歴で、日本の就労ビザが取れるか不安です。
- A. 正規の大学(4年制)を卒業し、学士の学位を持っていれば、学歴要件は満たせますのでご安心ください。重要なのは、その学歴と日本での職務内容が関連しているかです。ビザ専門の行政書士に相談すれば、採用前に取得可能性を診断できます。
- Q3. タイでは留年や飛び級は一般的ですか?
- A. 留年(落第)は日本より厳格に適用され、成績不振の場合は進級できません。一方、飛び級制度も存在しますが、ごく一部の優秀な学生に限られ一般的ではありません。基本的には年齢と学年が一致していると考えてよいでしょう。
- Q4. タイの識字率はどのくらいですか?
- A. タイの成人識字率は90%以上と高い水準にあります。これは、義務教育が国民に広く浸透している成果です。ただし、都市部と農村部における教育格差の是正は、依然として国の課題となっています。
まとめ:タイの教育制度を正しく理解し、人材採用に活かそう
この記事のポイント
本記事では、タイの教育制度について、基本構造から高等教育、就労ビザとの関連まで解説しました。要点は以下の通りです。
- 基本は日本と同じ6-3-3制、義務教育は9年間
- 新学期は5月開始の2学期制
- タイの4年制大学卒は日本の就労ビザの学歴要件を満たす
専門家への相談が成功の鍵
タイ人材の採用は、教育制度の正しい理解と、適切なビザ手続きが成功の鍵を握ります。複雑な制度や要件をご自身で調べるのは多大な労力を要します。特にビザ申請は、専門知識がないまま進めると、不許可となり計画全体に影響を及ぼすリスクを伴います。
タイ人材の雇用やご家族のビザについて、少しでも不安があればお気軽にご連絡ください。初回相談は無料です。私たちがあなたの不安を解消します。
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行政書士法人35
代表行政書士 萩台 紘史
2021年4月 SANGO行政書士事務所を開業
2023年9月 法人化に伴い「行政書士法人35」を設立
外国人の就労ビザ申請に専門特化した事務所として年間350件超の就労ビザ申請をサポート