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【外国人雇用完全ガイド2025年版】採用から定着までの全手順&注意点




外国人雇用完全ガイド2025年版:採用から定着までの全手順&注意点【行政書士監修】

少子高齢化による労働力不足が深刻化する日本において、外国人雇用は企業にとって重要な選択肢となっています。

厚生労働省の発表によると、令和6年10月末時点の外国人労働者数は230万2,587人に達し、過去最高を更新しました[1]。

外国人労働者は、労働力不足の解消だけでなく、企業のグローバル化、多様性の促進、新たな価値観の導入など、さまざまなメリットをもたらします。

しかし、外国人雇用には、日本人雇用とは異なる注意点や手続きが必要です。

在留資格の確認、労働条件の整備、異文化コミュニケーション、生活支援など、多岐にわたる課題に対応しなければなりません。

本ガイドでは、外国人雇用に関心のある企業担当者向けに、外国人雇用のメリット・デメリット、必要な手続き、注意点、成功のポイントなどを網羅的に解説します。

外国人雇用に関する疑問や不安を解消し、採用から定着までをスムーズに進めるための情報を提供します。

本ガイドは、外国人雇用に関する豊富な経験と専門知識を持つ行政書士が監修しています。法的な観点からも安心してご活用いただけます。

[1] 厚生労働省:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)

目次

  1. 外国人雇用の基礎知識:企業が知っておくべきこと
    1. 外国人雇用の現状と今後の動向
    2. 外国人雇用のメリット・デメリット
    3. 外国人雇用に関わる主な法律・制度
  2. 外国人採用のステップ:募集から内定までの流れ
    1. 採用計画の策定
    2. 募集活動
    3. 選考
  3. 在留資格の種類と手続き:就労ビザ取得のポイント
    1. 主な就労可能な在留資格
    2. 在留資格取得の手続き
    3. 在留資格の確認方法
  4. 外国人雇用後の手続きと注意点:労務管理のポイント
    1. 雇用契約
    2. 社会保険・労働保険
    3. 税金
    4. 外国人雇用状況の届出
    5. 労働時間・休日・休暇
    6. 給与
    7. 解雇
    8. ハラスメント防止
  5. 外国人労働者の定着支援:長く活躍してもらうために
    1. コミュニケーション支援
    2. 生活支援
    3. キャリア形成支援
    4. メンタルヘルスケア
  6. 外国人雇用に関するQ&A
  7. 外国人雇用成功事例紹介
  8. まとめ:外国人雇用で企業の未来を拓く

1. 外国人雇用の基礎知識:企業が知っておくべきこと

この章では、外国人雇用を検討する上で、まず企業が知っておくべき基本的な知識を解説します。

外国人労働者の現状、メリット・デメリット、関連法規など、包括的に理解を深めましょう。

1-1. 外国人雇用の現状と今後の動向

日本の労働力不足は深刻化の一途をたどっており、外国人労働者はその解決策としてますます重要な存在となっています。

厚生労働省の発表によると、令和6年10月末時点の外国人労働者数は230万2,587人に達し、過去最高を更新しました[1]。

外国人労働者の国籍別内訳を見ると、ベトナムが最も多く570,708人(全体の24.8%)、次いで中国408,805人(同17.8%)、フィリピン245,565人(同10.7%)となっています[1]。

在留資格別では、「専門的・技術的分野の在留資格」(いわゆる就労ビザ)が718,812人と最も多く、前年比20.6%増と大幅に増加しています。

これは、高度な知識や技術を持つ外国人材へのニーズが高まっていることを示しています。次いで、「身分に基づく在留資格」(永住者、定住者など)が629,117人、「技能実習」が470,725人となっています[1]。

今後の動向としては、政府が推進する「特定技能」制度の拡大や、新たな在留資格の創設などにより、外国人労働者の受け入れはさらに加速すると予想されます。

特に、介護、建設、農業などの分野では、人手不足が深刻であり、外国人労働者への依存度が高まるでしょう。

企業は、こうした状況を踏まえ、外国人雇用の戦略を検討する必要があります。

1-2. 外国人雇用のメリット・デメリット

外国人雇用には、企業にとって多くのメリットがある一方、デメリットも存在します。

それぞれを理解し、自社にとって外国人雇用が適切かどうかを判断することが重要です。

外国人雇用の主なメリットとしては、まず、労働力不足の解消が挙げられます。

特に、人手不足が深刻な建設業、介護、製造業などでは、外国人労働者が貴重な戦力となっています。

また、外国人労働者の採用は、企業のグローバル化を促進する効果も期待できます。

海外市場への進出を検討している企業にとっては、外国人労働者の持つ語学力や異文化理解が強みとなるでしょう。

さらに、高いスキルや意欲を持つ外国人労働者を採用することで、企業の競争力強化にもつながります。

多様なバックグラウンドを持つ人材が集まることで、組織が活性化し、イノベーションが生まれやすくなるというメリットもあります。

加えて、外国人労働者の雇用や就労環境整備に関連する助成金制度を活用できる場合もあります。

一方で、外国人雇用にはデメリットも存在します。

まず、言語や文化の違いによるコミュニケーションの課題が挙げられます。職場での意思疎通がうまくいかないと、業務効率の低下やトラブルの原因となる可能性があります。

また、外国人雇用には、在留資格の確認や各種手続きなど、日本人雇用にはない手間やコストがかかります。

さらに、文化や生活習慣の違いから、日本人従業員や外国人労働者自身が戸惑うこともあります。

日本人とは異なる労務管理が必要になるケースもあり、企業側の負担が増加することも考慮しなければなりません。

外国人雇用を成功させるためには、これらのメリットを最大限に活かし、デメリットを最小限に抑えるための対策が必要です。

具体的には、採用前の段階で、求める人物像や必要な日本語能力を明確にし、採用後のミスマッチを防ぐことが重要です。

また、外国人労働者が安心して働けるよう、就労環境や生活面のサポート体制を整備することも欠かせません。

1-3. 外国人雇用に関わる主な法律・制度

外国人雇用には、日本の法律や制度が適用されます。

企業は、これらの法律や制度を正しく理解し、遵守する必要があります。

まず、外国人の入国・在留に関する基本法として、「出入国管理及び難民認定法(入管法)」があります。

入管法には、在留資格の種類や要件、手続きなどが定められています。

外国人を雇用する際には、必ず在留資格を確認し、就労が認められているかどうかを確認しなければなりません。

労働条件に関しては、「労働基準法」が適用されます。

労働基準法は、労働時間、休憩、休日、年次有給休暇、賃金など、労働条件に関する最低基準を定めた法律であり、外国人労働者にも適用されます。

最低賃金については、「最低賃金法」で定められており、外国人労働者にも日本人と同等以上の賃金を支払う必要があります。国籍を理由とした差別は禁止されています。

労働者の安全と健康を守るための「労働安全衛生法」も、外国人労働者に適用されます。

企業は、外国人労働者に対しても、安全衛生教育を実施するなどの義務を負います。

社会保険に関しては、「雇用保険法」、「健康保険法」、「厚生年金保険法」が適用されます。

一定の要件を満たす外国人労働者は、これらの社会保険に加入する必要があります。

また、外国人を雇用した場合、または外国人が離職した場合には、ハローワークに「外国人雇用状況の届出」を行う必要があります。

これは、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(旧雇用対策法)に基づく義務です。

外国人労働者の受け入れ制度としては、「技能実習制度」と「特定技能制度」があります。技能実習制度は、開発途上国への技能移転を目的とした制度であり、技能実習生は日本の企業で働きながら技能を習得します。

特定技能制度は、人手不足が深刻な特定の産業分野において、即戦力となる外国人労働者を受け入れるための制度です。

これらの法律や制度は、外国人労働者の権利を保護するとともに、企業の適切な雇用管理を促進するためのものです。

企業は、これらの法律や制度を遵守し、外国人労働者が安心して働ける環境を整備する必要があります。

[1] 厚生労働省:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)

2. 外国人採用のステップ:募集から内定までの流れ

この章では、外国人を採用する際の具体的なステップを、募集から内定までの流れに沿って解説します。

日本人採用とは異なる点も多いため、各ステップのポイントをしっかりと押さえましょう。

2-1. 採用計画の策定

外国人採用を成功させるためには、明確な採用計画が不可欠です。

まずは、どのような人材を求めているのか、具体的な人物像を定義しましょう。必要なスキル、経験、日本語能力などを具体的にリストアップします。

次に、採用方法を検討します。外国人採用には、求人サイト、人材紹介会社、ハローワークなど、さまざまな方法があります。

それぞれのメリット・デメリットを比較し、自社のニーズに合った方法を選択しましょう。また、海外から外国人を呼び寄せる場合は、現地の人材紹介会社や求人サイトを活用することも検討します。

採用スケジュールと予算も重要な要素です。在留資格の申請には時間がかかるため、余裕を持ったスケジュールを組む必要があります。また、採用活動には、求人広告費、人材紹介会社への手数料、渡航費など、さまざまな費用がかかります。

事前に予算を確保し、計画的に採用活動を進めましょう。

2-2. 募集活動

採用計画に基づいて、募集活動を開始します。

求人広告を作成する際には、外国人労働者に魅力的だと感じてもらえるような情報を盛り込みましょう。

仕事内容、給与、勤務時間、休日などの労働条件だけでなく、企業のビジョンや社風、外国人労働者へのサポート体制などもアピールポイントとなります。

求人サイトを活用する場合は、外国人向けの求人サイトや、外国人登録者が多い求人サイトを選ぶと効果的です。

人材紹介会社を利用する場合は、外国人採用に特化した会社や、特定の国籍の外国人採用に強い会社を選ぶとよいでしょう。

ハローワークは、無料で求人情報を掲載できるため、費用を抑えたい場合に有効です。また、大学の就職課と連携し、外国人留学生を対象に求人を行うことも可能です。

自社のウェブサイトに求人情報を掲載する場合は、英語や中国語など、ターゲットとする国籍の言語に対応させることが望ましいです。

また、既存の外国人従業員や知人からの紹介も、有力な採用手段の一つです。

2-3. 選考

応募書類が届いたら、書類選考を行います。職務経歴、日本語能力、資格などを確認し、自社の求める人物像に合致するかどうかを判断します。

日本語能力については、日本語能力試験(JLPT)のレベルだけでなく、職務経歴書や自己PRの内容から、実際のコミュニケーション能力を推測することも重要です。

書類選考を通過した応募者とは、面接を行います。面接では、日本語でのコミュニケーション能力、異文化理解、日本での就労意欲などを確認します。

海外在住の応募者とは、オンライン面接を実施することも可能です。

オンライン面接は、時間や場所の制約を受けずに、多くの応募者と面接できるというメリットがあります。

選考の結果、採用したい候補者が決まったら、内定通知を出し、労働条件について最終的な交渉を行います。

給与、勤務時間、休日、福利厚生など、双方が納得できる条件で合意することが重要です。内定承諾後、雇用契約を締結します。

3. 在留資格の種類と手続き:就労ビザ取得のポイント

この章では、外国人が日本で働くために必要な在留資格(就労ビザ)の種類と、その取得手続きについて詳しく解説します。

在留資格は、外国人が日本に滞在し、活動を行うための資格です。

適切な在留資格を取得しなければ、不法就労となり、外国人本人だけでなく、雇用した企業も罰せられる可能性があります。

3-1. 主な就労可能な在留資格

外国人が日本で働くことができる在留資格は、活動内容や身分によっていくつかの種類に分かれます。

主な就労可能な在留資格は以下の通りです。

就労系の在留資格

  • 技術・人文知識・国際業務: 理系・文系の大卒者や、長年の実務経験者が対象となる在留資格です。システムエンジニア、プログラマー、技術開発、経理、人事、マーケティング、通訳、翻訳、デザイナーなど、幅広い職種が該当します。
  • 特定技能: 人手不足が深刻な12の産業分野(介護、建設、農業、外食など)で、即戦力となる外国人を受け入れるための在留資格です。特定技能には、1号と2号があり、2号の方がより高度な技能を要します。
  • 技能実習: 開発途上国への技能移転を目的とした制度です。技能実習生は、日本の企業で働きながら技能を習得します。最長5年間の実習が可能です。
  • 高度専門職: 高度な専門知識や技術を持つ外国人を対象とした在留資格です。ポイント制で評価され、一定のポイントを満たすと、在留期間や活動内容に優遇措置が与えられます。
  • 企業内転勤: 外国の事業所から日本の事業所へ転勤する外国人が対象となる在留資格です。
  • 経営・管理: 日本で会社を設立・経営したり、管理職として働く外国人が対象となる在留資格です。
  • その他: 教授、芸術、宗教、報道など、特定の分野で活動する外国人が対象となる在留資格があります。

身分系の在留資格

以下の在留資格を持つ外国人は、就労活動に制限がありません。

  • 永住者: 法務大臣から永住許可を受けた外国人です。
  • 定住者: 日系人やその配偶者、難民認定を受けた外国人など、特別な理由により日本に定住する外国人です。
  • 日本人の配偶者等: 日本人の配偶者や子、特別養子などが対象となる在留資格です。
  • 永住者の配偶者等: 永住者の配偶者や子が対象となる在留資格です。

3-2. 在留資格取得の手続き

在留資格の取得手続きは、外国人が海外にいる場合と、すでに日本にいる場合で異なります。

海外から呼び寄せる場合(在留資格認定証明書交付申請)

  1. 内定: 企業が外国人に内定を出します。
  2. 在留資格認定証明書交付申請: 企業が、外国人の居住予定地または企業の所在地を管轄する地方出入国在留管理局に、在留資格認定証明書の交付申請を行います。
  3. 審査: 出入国在留管理庁が、外国人の経歴や企業の事業内容、従事する職務内容などを審査します。
  4. 在留資格認定証明書の交付: 審査の結果、問題がなければ、在留資格認定証明書が交付されます。
  5. 査証(ビザ)の申請: 外国人は、在外公館(日本大使館や領事館)で、在留資格認定証明書を提出し、査証の申請を行います。
  6. 査証の発給: 査証が発給されたら、日本に入国できます。
  7. 入国・在留カードの交付: 日本に入国する際、空港で在留カードが交付されます。

日本国内にいる外国人を採用する場合(在留資格変更許可申請)

  1. 内定: 企業が外国人に内定を出します。
  2. 在留資格変更許可申請: 外国人本人が、居住地を管轄する地方出入国在留管理局に、在留資格変更許可申請を行います。
  3. 審査: 出入国在留管理庁が、外国人の経歴や企業の事業内容、従事する職務内容などを審査します。
  4. 在留資格の変更許可: 審査の結果、問題がなければ、在留資格の変更が許可され、新しい在留カードが交付されます。

在留期間更新許可申請

在留資格には有効期限があるため、期限が切れる前に在留期間更新許可申請を行う必要があります。申請は、在留期限の3ヶ月前から可能です。

  • 在留期間更新許可申請: 外国人本人が、居住地を管轄する地方出入国在留管理局に、在留期間更新許可申請を行います。
  • 審査: 出入国在留管理庁が、外国人の在留状況や企業の経営状況などを審査します。
  • 在留期間の更新許可: 審査の結果、問題がなければ、在留期間の更新が許可され、新しい在留カードが交付されます。

3-3. 在留資格の確認方法

外国人を雇用する際には、必ず在留カードを確認し、就労が認められているかどうかを確認する必要があります。

在留カードには、以下の情報が記載されています。

  • 氏名、生年月日、性別、国籍・地域
  • 住居地
  • 在留資格
  • 在留期間
  • 就労制限の有無: 「就労不可」「就労制限なし」「指定書記載機関でのみ就労可」などと記載されています。
  • 資格外活動許可の有無: 原則として就労が認められない在留資格の外国人が、アルバイトなどの資格外活動を行う場合に、許可を受けているかどうかが記載されています。

在留カードの記載内容をよく確認し、不明な点がある場合は、地方出入国在留管理局に問い合わせるか、行政書士などの専門家に相談しましょう。

4. 外国人雇用後の手続きと注意点:労務管理のポイント

この章では、外国人を雇用した後に行うべき手続きと、労務管理上の注意点について解説します。日本人従業員と同様の対応が必要な部分と、外国人特有の配慮が必要な部分がありますので、それぞれ確認していきましょう。

4-1. 雇用契約

外国人労働者と雇用契約を締結する際には、労働条件通知書と雇用契約書を作成します。

これらの書類には、労働条件(賃金、労働時間、休日、就業場所、業務内容など)を明確に記載する必要があります。労働条件通知書は、労働基準法で交付が義務付けられています。

日本の労働法規や雇用慣行は、外国人労働者にとって馴染みがない場合があるため、注意が必要です。

4-2. 社会保険・労働保険

外国人労働者も、日本人従業員と同様に、社会保険(健康保険、厚生年金保険)と労働保険(雇用保険、労災保険)の適用対象となります。

一定の要件を満たす場合は、加入手続きが必要です。

  • 健康保険・厚生年金保険: 適用事業所に常時雇用される外国人労働者は、原則として被保険者となります。
  • 雇用保険: 1週間の所定労働時間が20時間以上であり、31日以上の雇用見込みがある外国人労働者は、原則として被保険者となります。
  • 労災保険: 労働者を使用する事業は、原則として強制適用事業となります。外国人労働者も、アルバイトやパートなど、雇用形態に関わらず、労災保険の適用対象となります。

社会保険・労働保険の手続きは、日本人従業員と基本的に同じですが、外国人労働者の在留資格や在留期間によっては、手続きが異なる場合があります。

不明な点がある場合は、社会保険労務士などの専門家に相談しましょう。

4-3. 税金

外国人労働者も、日本人従業員と同様に、所得税や住民税を納める義務があります。

所得税は、給与から源泉徴収し、企業が代わりに納付します。住

民税は、前年の所得に基づいて計算され、原則として、給与から特別徴収(天引き)されます。

外国人労働者が、租税条約の締結国出身である場合、租税条約の規定により、所得税や住民税が免除または軽減される場合があります。

租税条約の適用を受けるためには、所定の手続きが必要です。

4-4. 外国人雇用状況の届出

外国人を雇用した場合、または外国人が離職した場合には、ハローワークに「外国人雇用状況の届出」を行う必要があります。

これは、外国人労働者の雇用管理の改善や再就職支援を目的とした制度です。届出は、オンライン、郵送、窓口で可能です。

  • 提出期限:雇い入れの場合は翌月の10日、離職の場合は翌日から起算して10日以内です。

4-5. 労働時間・休日・休暇

外国人労働者にも、労働基準法に基づく労働時間、休日、休暇に関する規定が適用されます。

時間外労働をさせる場合には36協定の締結と届出が必要です。

  • 労働時間: 原則として、1日8時間、週40時間を超えて労働させてはいけません。
  • 休日: 毎週少なくとも1日、または4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。
  • 年次有給休暇: 6ヶ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した外国人労働者には、年次有給休暇を与えなければなりません。

外国人労働者の宗教や文化によっては、休日や休暇について特別な配慮が必要な場合があります。

例えば、イスラム教徒のラマダン(断食月)や、キリスト教徒のクリスマスなど、宗教上の行事や祝日に休暇を取得したいという要望があるかもしれません。

可能な範囲で、柔軟に対応しましょう。

4-6. 給与

外国人労働者には、日本人従業員と同等以上の賃金を支払わなければなりません。

最低賃金法で定められた最低賃金を下回ることはもちろん、同じ仕事をしている日本人従業員よりも低い賃金を支払うことは、不法行為となります。

同一労働同一賃金の原則に基づき、職務内容、能力、経験などが同じであれば、外国人労働者と日本人従業員の賃金に差をつけることはできません。

4-7. 解雇

外国人労働者を解雇する場合も、日本人従業員と同様に、労働基準法や労働契約法の規定に従う必要があります。

解雇は、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められる場合でなければ、無効となります。

  • 解雇制限: 業務上の負傷または疾病による療養のための休業期間およびその後30日間、産前産後の女性が労働基準法の規定により休業する期間およびその後30日間は、原則として解雇できません。
  • 解雇予告: 解雇する日の30日以上前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。

外国人労働者を解雇する際には、解雇理由を明確に説明し、理解を得ることが重要です。

また、解雇後の手続き(離職票の交付、社会保険・労働保険の資格喪失手続きなど)も、忘れずに行いましょう。

4-8. ハラスメント防止

外国人労働者に対するハラスメント(人種、国籍、宗教などを理由とする差別的な言動や嫌がらせ)は、絶対にあってはなりません。

企業は、ハラスメント防止のための措置を講じる義務があります。

  • ハラスメント防止規程の策定: ハラスメントの定義、禁止事項、相談窓口などを明記した規程を作成します。
  • 従業員への周知・啓発: 研修などを実施し、ハラスメント防止に関する意識を高めます。
  • 相談窓口の設置: 外国人労働者が安心して相談できる窓口を設置します。
  • 事実関係の迅速かつ正確な確認: ハラスメントの相談があった場合は、速やかに事実関係を確認します。
  • 被害者に対する配慮の措置: 被害者の意向を尊重し、適切な対応を行います。
  • 行為者に対する措置: ハラスメントを行った従業員に対して、厳正な処分を行います。
  • 再発防止措置: ハラスメントが再発しないよう、対策を講じます。

外国人労働者が安心して働ける職場環境を作ることは、企業の責任です。ハラスメントのない、働きやすい職場環境を整備しましょう。

5. 外国人労働者の定着支援:長く活躍してもらうために

外国人労働者を雇用するだけでなく、長く活躍してもらうためには、定着支援が不可欠です。

この章では、外国人労働者が安心して働き、能力を最大限に発揮できるような環境づくりのための具体的な取り組みを紹介します。

5-1. コミュニケーション支援

外国人労働者との円滑なコミュニケーションは、良好な職場環境を築く上で最も重要な要素の一つです。

言語や文化の違いによる誤解や摩擦を防ぐために、以下のような取り組みが考えられます。

  • 「やさしい日本語」の使用: 専門用語や難しい表現を避け、わかりやすい日本語で話すように心がけます。単語を区切ってゆっくり話す、身振り手振りを交える、図やイラストを活用するなど、視覚的な情報も取り入れると効果的です。
  • 多言語対応: 社内文書や掲示物を多言語化する、翻訳ツールや通訳者を活用するなど、外国人労働者が母国語で情報を得られるようにします。
  • 定期的な面談: 定期的に面談を行い、仕事や生活に関する悩みや不安を聞き出し、解決策を一緒に考えます。
  • 日本語学習支援: 日本語学習の機会を提供します。オンライン教材の提供、日本語教室の紹介、日本語学習費用の補助など、さまざまな方法があります。
  • 異文化理解研修: 日本人従業員向けに、外国人労働者の文化や習慣に関する研修を実施します。異文化理解を深めることで、相互のコミュニケーションが円滑になります。

5-2. 生活支援

外国人労働者が日本での生活に安心して取り組めるよう、生活面のサポートも重要です。

住居、銀行口座、携帯電話など、生活の基盤となる部分をサポートすることで、外国人労働者の不安を軽減し、仕事に集中できる環境を整えましょう。

  • 住居探し: 社宅や寮を提供する、不動産業者を紹介する、賃貸契約のサポートをするなど、住居探しを支援します。
  • 銀行口座開設: 給与の振込先となる銀行口座の開設をサポートします。
  • 携帯電話契約: 携帯電話の契約手続きをサポートします。
  • 生活必需品の購入: 日本での生活に必要なものを揃えるためのサポートをします。
  • 日本の生活習慣・ルールの説明: ゴミ出しのルール、公共交通機関の利用方法、緊急時の連絡先など、日本の生活習慣やルールを説明します。
  • 地域社会との交流支援: 地域のイベントや交流会を紹介するなど、外国人労働者が地域社会に溶け込めるよう支援します。
  • 相談窓口の設置: 生活全般に関する相談にのる

5-3. キャリア形成支援

外国人労働者の長期的なキャリア形成を支援することも、定着率向上のためには重要です。外国人労働者が、将来の目標を持って働くことができるよう、以下のような取り組みが考えられます。

  • 日本語教育: 日本語能力の向上は、仕事の幅を広げ、キャリアアップにつながります。
  • OJT(On-the-Job Training): 実務を通して、仕事に必要な知識やスキルを習得できるよう、計画的にOJTを実施します。
  • スキルアップ支援: 資格取得支援、外部研修への参加支援など、外国人労働者のスキルアップを支援します。
  • キャリアパスの提示: 外国人労働者に対して、将来のキャリアパスを提示します。
  • 人事評価制度: 公正で透明性のある人事評価制度を構築し、外国人労働者のモチベーションを高めます。

5-4. メンタルヘルスケア

異文化での生活や仕事は、外国人労働者にとって大きなストレスとなることがあります。

メンタルヘルスの不調は、離職につながる可能性もあるため、企業は外国人労働者の心の健康にも配慮する必要があります。

  • 相談窓口の設置: メンタルヘルスに関する相談窓口を設置します。外国人労働者が母国語で相談できる体制を整えることが望ましいです。
  • ストレスチェックの実施: 定期的にストレスチェックを実施し、メンタルヘルスの状態を把握します。
  • 産業医との連携: 必要に応じて、産業医や専門機関と連携し、適切なサポートを提供します。
  • 職場環境の改善: 長時間労働の是正、ハラスメントの防止など、職場環境の改善に取り組みます。

これらの取り組みを通じて、外国人労働者が安心して働き、長く活躍できる環境を整えましょう。

6. 外国人雇用に関するQ&A

この章では、外国人雇用に関してよくある質問にQ&A形式で回答します。

外国人雇用に関する疑問や不安の解消にお役立てください。

Q1. 日本語能力はどの程度必要ですか?

A. 必要な日本語能力は、職種や業務内容によって異なります。
一般的に、技術・人文知識・国際業務などの専門職では、ビジネスレベルの日本語能力(日本語能力試験N2以上)が求められることが多いです。
一方、特定技能や技能実習などの職種では、日常会話レベルの日本語能力(日本語能力試験N4程度)でも就労可能な場合があります。
ただし、日本語能力試験のレベルはあくまで目安であり、実際のコミュニケーション能力が重要です。
面接などを通して、業務に支障がないか確認しましょう。
また、採用後も日本語学習の機会を提供し、継続的な日本語能力向上を支援することが望ましいです。

Q2. 在留資格の手続きはどのくらい時間がかかりますか?

A. 在留資格の手続きにかかる時間は、申請内容や審査状況によって異なります。
一般的に、在留資格認定証明書交付申請の場合は、1〜3ヶ月程度、在留資格変更許可申請や在留期間更新許可申請の場合は、1ヵ月〜2ヶ月程度かかることが多いです。
ただし、これはあくまで目安であり、申請書類に不備があったり、審査が混み合っていたりすると、さらに時間がかかることがあります。
余裕を持って申請手続きを行うようにしましょう。
また、行政書士などの専門家に依頼することで、スムーズな手続きが期待できます。

Q3. 外国人労働者とのトラブルを防ぐには?

A. 外国人労働者とのトラブルを防ぐためには、以下の点に注意しましょう。

  • 明確な労働条件の提示: 労働条件通知書や雇用契約書で、労働条件(賃金、労働時間、休日、業務内容など)を明確に提示し、外国人労働者の理解を得ることが重要です。母国語に翻訳した書類を用意するとともに、口頭でも丁寧に説明しましょう。
  • コミュニケーションの促進: 言語や文化の違いによる誤解や摩擦を防ぐために、コミュニケーションを密に取ることが大切です。「やさしい日本語」の使用、翻訳ツールや通訳者の活用、定期的な面談の実施など、さまざまな工夫が考えられます。
  • 異文化理解の促進: 外国人労働者の文化や習慣を理解し、尊重する姿勢を持つことが重要です。企業全体で異文化理解研修を実施したり、外国人労働者が相談しやすい環境を整えたりすることが効果的です。
  • 日本の法律やルールの説明: 日本の労働法規や社会保険制度、税金制度などについて、外国人労働者にわかりやすく説明しましょう。
  • 生活面のサポート: 住居探し、銀行口座開設、携帯電話契約など、生活面のサポートを提供することで、外国人労働者の不安を軽減し、仕事に集中できる環境を整えましょう。

Q4. 外国人労働者が離職してしまった場合、どのような手続きが必要ですか?

A. 外国人労働者が離職した場合は、以下の手続きが必要です。

  • 外国人雇用状況の届出:ハローワークに外国人労働者が離職した旨を届け出ます。
  • 社会保険・労働保険の資格喪失手続き:健康保険、厚生年金保険、雇用保険の資格喪失手続きを行います。
  • 住民税の特別徴収から普通徴収への切り替え:外国人労働者が住民税を特別徴収(給与天引き)で納めている場合は、普通徴収(個人納付)への切り替え手続きを行います。
  • 離職票の交付:外国人労働者から請求があった場合は、離職票を交付します。

その他、外国人労働者の在留資格や在留期間によっては、出入国在留管理庁への届出が必要な場合があります。

7. 外国人雇用成功事例紹介

この章では、外国人雇用に成功している企業の事例を紹介します。

各社の取り組みから、外国人労働者が活躍できる環境づくりのヒントを探りましょう。

事例1:株式会社A社(製造業)

  • 業種: 製造業(電子部品)
  • 規模: 従業員数約300名
  • 採用した外国人労働者の国籍: ベトナム、中国、フィリピン
  • 在留資格: 特定技能、技能実習
  • 取り組み
    • 多言語対応の徹底: 作業指示書、安全マニュアル、社内掲示などを多言語化。
    • 「やさしい日本語」研修の実施: 日本人従業員向けに、「やさしい日本語」を使ったコミュニケーション研修を実施。
    • メンター制度の導入: 新入社員の外国人労働者一人ひとりに、日本人従業員のメンターを配置。仕事や生活に関する相談に乗り、早期の職場適応を支援。
    • 交流イベントの開催: バーベキュー大会、忘年会など、外国人労働者と日本人従業員が交流できるイベントを定期的に開催。
    • 日本語学習支援: 外部の日本語学校と提携し、外国人労働者の日本語学習を支援。
  • 成果
    • 外国人労働者の定着率が向上。
    • 外国人労働者の日本語能力が向上し、業務効率がアップ。
    • 日本人従業員と外国人労働者のコミュニケーションが円滑になり、職場の雰囲気が改善。
    • 外国人労働者の活躍により、生産性が向上。

事例2:株式会社B社(IT企業)

  • 業種: IT企業(ソフトウェア開発)
  • 規模: 従業員数約100名
  • 採用した外国人労働者の国籍: インド、アメリカ、イギリス
  • 在留資格: 技術・人文知識・国際業務
  • 取り組み
    • 英語公用語化: 社内会議や資料を英語で実施。
    • 柔軟な働き方の導入: フレックスタイム制度やリモートワークを導入し、外国人労働者が働きやすい環境を整備。
    • 異文化理解研修の実施: 日本人従業員向けに、外国人労働者の文化や習慣に関する研修を実施。
    • ビザ申請サポート: 専門の行政書士と連携し、外国人労働者のビザ申請をサポート。
    • 住宅手当の支給: 外国人労働者に対して、住宅手当を支給。
  • 成果
    • 優秀な外国人エンジニアの採用に成功。
    • 外国人労働者の定着率が高い。
    • 外国人労働者の活躍により、グローバル展開が加速。
    • 社内の多様性が高まり、イノベーションが促進。

事例3:株式会社C社(介護施設)

  • 業種:介護施設
  • 規模:従業員約50名
  • 採用した外国人労働者の国籍:インドネシア、フィリピン
  • 在留資格:特定技能(介護)
  • 取り組み
    • 介護技術研修:日本人職員によるOJTに加え、外国人介護士向けの専門研修を定期的に実施。
    • 日本語教育:業務時間内に日本語学習の時間を設け、専門用語や利用者とのコミュニケーションに重点を置いた指導。
    • 生活相談:専任の相談員を配置し、住居、ビザ、家族の呼び寄せなど、生活全般に関する相談に多言語で対応。
    • 交流イベント:地域の祭りへの参加や、施設内での国際交流イベント(各国の料理紹介など)を定期的に開催。
    • キャリアアップ支援:介護福祉士資格取得のための勉強会を開催し、受験費用の補助も実施。
  • 成果
    • 外国人介護士の定着率が向上し、深刻な人手不足が改善。
    • 利用者やその家族からの評判が良く、サービスの質が向上。
    • 外国人介護士の日本語能力が向上し、日本人職員との連携がスムーズに。
    • 外国人介護士が介護福祉士資格を取得し、キャリアアップに成功。
    • 地域社会との関係が良好になり、施設のイメージアップに貢献。

これらの事例は、外国人雇用を成功させるためのヒントとなるでしょう。

各社の取り組みを参考に、自社に合った外国人雇用戦略を検討しましょう。

まとめ:外国人雇用で企業の未来を拓く

本記事では、外国人雇用の基礎知識から、採用、定着、労務管理、成功事例まで、企業が外国人雇用に取り組む上で必要な情報を網羅的に解説しました。

少子高齢化による労働力不足が深刻化する日本において、外国人雇用は、企業が持続的に成長するための重要な戦略の一つです。

外国人労働者は、単なる労働力の補充にとどまらず、企業のグローバル化、多様性の促進、イノベーションの創出など、さまざまな可能性をもたらします。

しかし、外国人雇用には、日本人雇用とは異なる注意点や手続きが必要です。

在留資格の確認、労働条件の整備、異文化コミュニケーション、生活支援など、多岐にわたる課題に対応しなければなりません。

本記事で解説した内容を参考に、外国人雇用に関する正しい知識を身につけ、適切な対応を行うことが重要です。

外国人雇用を成功させるためには、長期的な視点を持つことが大切です。

外国人労働者が安心して働き、能力を最大限に発揮できるような環境を整えることが、企業の成長につながります。

外国人労働者と日本人従業員が互いに尊重し、協力し合える関係を築き、共に未来を拓いていきましょう。

外国人雇用に関する疑問や不安がある場合は、専門家(行政書士、社会保険労務士など)に相談することをおすすめします。

専門家は、外国人雇用に関する最新の情報や法的な知識を持っており、企業の状況に応じた適切なアドバイスを提供してくれます。


記事監修者

行政書士法人35
行政書士 萩台 紘史

2021年4月 個人事務所「SANGO行政書士事務所」を開業
2023年9月 法人化に伴い「行政書士法人35」を設立
年間350件超の就労ビザ申請を対応

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