【特定活動33号】高度専門職の配偶者ビザについて|概要や就労の可否について解説
「高度専門職として日本でキャリアを築くことになったけれど、妻や夫のビザはどうなるのだろう?」
「配偶者も日本で働きたいけれど、どんな選択肢があるのか?」
高度専門職の資格を持つあなたや、その大切なご家族は、これらの疑問やご期待をお持ちかもしれません。
日本の高度専門職制度は、世界から優秀な人材を惹きつけるため、ご本人だけでなく、その配偶者やご家族に対しても様々な優遇措置を用意しています。
まず理解しよう!「高度専門職」ビザとその配偶者への優遇措置の背景
高度専門職外国人の配偶者のビザ制度を深く理解するためには、まず「高度専門職」ビザそのものについて知る必要があります。
高度専門職ビザ制度は、日本の成長と発展に貢献できる優れた能力を持つ外国人を積極的に受け入れるために設けられました。
そして、高度専門職ビザの魅力的な制度内容は、配偶者を含む家族にも恩恵が及ぶように設計されています。
なぜ配偶者にも優遇措置があるのか、その背景を探ってみましょう。
高度専門職(HSP)ビザとは?ポイント制と優遇の概要
「高度専門職」ビザ、通称HSPビザは、学歴、職務経歴、年収、年齢、研究実績、日本語能力といった項目を点数化し、合計ポイントが一定基準(通常70点以上)に達した外国人に与えられる在留資格です。
活動内容によって「高度専門職1号イ(研究者など)」「高度専門職1号ロ(技術者や専門家など)」「高度専門職1号ハ(経営者など)」に分類され、それぞれに5年の在留期間が一律で付与されます。
3年以上「高度専門職1号」として活動した方は、さらに有利な「高度専門職2号」へ移行できる道も開かれています。
高度専門職ビザを持つ方には、複数の活動を同時に行える許可や、永住許可申請の際の在留期間要件が大幅に短縮される(最短1年)といった、手厚い優遇措置が用意されています。
なぜ配偶者にもメリットが?家族一体での受け入れ体制
日本政府が高度専門職人材を積極的に誘致するにあたり、その能力を最大限に発揮してもらうためには、本人が安心して日本で生活できる環境が不可欠であると考えています。
家族、特に配偶者の生活基盤が安定し、キャリアを継続できる可能性があれば、高度専門職の方も日本で長期的に活躍しやすくなります。
そのため、高度専門職制度では、本人の優遇措置に加えて、配偶者の就労機会の拡大や、一定条件下での親の帯同、家事使用人の雇用許可など、家族全体をサポートする仕組みが整えられています。
配偶者に対する特別な就労ビザ(特定活動ビザ)の提供は、まさに日本政府の「家族一体での受け入れ」という強い意志の表れと言えるでしょう。
配偶者のための2大ビザ選択肢:「家族滞在」と「特定活動」
高度専門職外国人の配偶者の方が日本で生活するためには、主に2つの在留資格の選択肢が考えられます。
一つは「家族滞在」ビザ、もう一つは就労を希望する場合に特に有利となる「特定活動」ビザです。
どちらのビザがご自身の状況や日本での生活設計に適しているのか、それぞれの特徴をしっかりと理解し、比較検討することが大切です。
ここでは、それぞれのビザの目的、許可される活動、主な要件、そして最新の制度変更点についても触れながら詳しく解説します。
【選択肢1】「家族滞在」ビザ – 扶養家族としての滞在
「家族滞在」ビザは、高度専門職外国人を含む、日本で適法に就労または就学している方の扶養を受ける配偶者や子供が取得できる在留資格です。
「家族滞在」ビザの基本的な考え方は、主たる在留資格を持つ方(この場合は高度専門職外国人)に経済的に支えられ、家族として日本で一緒に生活する点を目的としています。
法律上の婚姻関係にある配偶者が対象であり、事実婚や内縁関係の場合は認められません。
高度専門職外国人である扶養者には、配偶者を経済的に安定して支える能力が求められ、日本国内での同居が継続している必要があります。
許可される活動は、主に日常生活を送るためのものであり「家族滞在」ビザ自体には就労する権利は含まれていません。
もし就労を希望する場合は、別途「資格外活動許可」を取得し、原則として週28時間以内の就労制限のもとで行う必要があります。
付与される在留期間は、通常、扶養者である高度専門職の方の在留期間に合わせて決定される傾向にあり、例えば扶養者が5年の在留期間を持っていれば、配偶者も5年の「家族滞在」ビザを得られる可能性があります。
【選択肢2】「特定活動(告示33号)」ビザ – 配偶者のフルタイム就労を支援
高度専門職外国人の配偶者が、日本で専門的な分野でフルタイムの仕事に就きたいと考える場合、「特定活動(告示33号)」という在留資格が非常に有効な選択肢となります。
【特定活動の在留資格に関する告示(第33号)】
高度専門職外国人の配偶者(当該高度専門職外国人と同居する者に限る。)が、本邦の公私の機関との契約に基づいて、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬をうけて行う別表第5に掲げるいずれかの活動
この特定活動ビザは、高度専門職制度の優遇措置の一つとして特別に設けられたもので、配偶者の就労を積極的に支援する目的があります。
特定活動ビザを取得するための主な条件は、まず、申請者が高度専門職ビザを持つ方の法律上の配偶者であることです。
そして、日本において高度専門職の方と同居している事実が求められます。高度専門職外国人との同居は継続的な要件であり、別居した場合は就労活動の許可が失われる可能性があるため注意が必要です。
また、従事する仕事に対して、日本人が同じ業務を行った場合に受けるであろう報酬と同等額以上の給与を受け取る必要があります。
許可される就労活動の範囲は、法務省の告示(特定活動告示別表第五)で定められており、大学などでの「研究」活動、小中学校や高校などでの「教育」活動、専門的な技術や知識を要する「技術・人文知識・国際業務」に類する活動、そして一部の「興行」に関連する芸能活動などが該当します。
この「特定活動」ビザの最大の魅力は、指定された専門的業務に就くにあたり、通常求められる学歴や実務経験といった要件が免除される点です。
付与される在留期間は、1年、3年、または5年のいずれかで、個々の状況や雇用契約期間などを考慮して決定されます。
【2023年新設】「特定活動(告示33号の2)」ビザ – 特別高度人材(J-Skip)の配偶者向け
2023年4月からは、さらに優秀な外国人材を誘致するための新しい制度として「特別高度人材制度(通称:J-Skip)」が開始されました。
このJ-Skipの認定を受けた特別高度人材外国人の配偶者に対しては、さらに優遇された「特定活動(告示33号の2)」という在留資格が用意されています。
【特定活動の在留資格に関する告示(第33号の2)】
高度専門職外国人であって第2号の4イに該当する者の配偶者(当該高度専門職外国人と同居する者に限る。)が、本邦の公私の機関との契約に基づいて、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬をうけて行う別表第5の2に掲げるいずれかの活動
基本的な要件は通常の高度専門職の配偶者向け「特定活動(告示33号)」と類似していますが、認められる活動範囲がより広くなっている点が大きな特徴です。
具体的には、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、興行の活動に加えて、「教授」「芸術」「宗教」「報道」「技能」に該当する分野での就労も可能となります。
この拡充により、特別高度人材の配偶者は、日本でのキャリアの選択肢がさらに広がることになりました。
【配偶者の就労】どのビザで何ができる?メリット・デメリット比較
高度専門職外国人の配偶者の方が日本で働くことを考える際、どの在留資格を選ぶかによって、就労できる範囲や条件、そしてメリット・デメリットが大きく異なります。
「家族滞在」ビザに加えて「資格外活動許可」を得る方法、「特定活動(告示33号または33号の2)」ビザで働く方法、そして配偶者自身が独立して通常の「就労ビザ」を取得する方法、それぞれの特徴を比較検討し、あなたのキャリアプランやライフスタイルに最も合った選択をしましょう。
「家族滞在」+資格外活動許可での就労
「家族滞在」ビザで滞在している配偶者の方が働くためには、まず出入国在留管理庁から「資格外活動許可」を取得する必要があります。
資格外活動許可を得て就労する場合のメリットは、職種の自由度が比較的高い点です。
公序良俗に反しない限り、いわゆる単純労働と見なされるような仕事も含め、様々な分野で働くことが可能です。
しかし、デメリットとして最も大きいのは、就労時間が原則として週28時間以内に制限される点です。フルタイムでの勤務はできません。
また、あくまで主たる活動は「家族滞在」であり、扶養を受けて生活していることが前提となるため、資格外活動による収入が扶養者の収入を大幅に上回るような状況になると、次回の在留期間更新時に「扶養を受けている」という点について厳しく審査される可能性があります。
「特定活動(告示33号・33号の2)」での就労
「特定活動(告示33号または33号の2)」ビザは、高度専門職外国人の配偶者が専門的な分野でフルタイム就労するための優遇措置です。
「特定活動」ビザの最大のメリットは、通常の就労ビザで求められる学歴や実務経験の要件が免除されるにもかかわらず、フルタイムで働ける点です。
研究、教育、技術・人文知識・国際業務、興行(一部)、さらに特別高度人材の配偶者であれば教授、芸術、宗教、報道、技能といった専門分野での活動が可能です。
一方でデメリットとしては、活動できる職種がこれらの専門分野に限定されており、単純労働は認められない点が挙げられます。
また、高度専門職である配偶者との同居が必須条件であり、転職して勤務先が変わる場合には、その都度、在留資格の変更許可申請が必要になるなど、一定の制約があります。
独立して通常の「就労ビザ」を取得する選択肢
高度専門職外国人の配偶者であっても、ご自身が学歴(例えば大学卒業など)や職歴といった、通常の「技術・人文知識・国際業務」ビザなどの就労ビザの取得要件を満たしているのであれば、独立してこれらの就労ビザを申請することも可能です。
通常の就労ビザを取得する場合のメリットは、高度専門職である配偶者の在留状況や雇用状況に左右されず、ご自身の資格と能力に基づいて安定した就労資格を得られる点です。
また「特定活動」ビザのように活動範囲が限定されることなく、取得した就労ビザが許容する範囲内で自由にキャリアを追求できます。
デメリットとしては、当然ながら、通常の就労ビザ取得のための厳格な学歴・職歴要件をクリアしなければならない点が挙げられます。
「特定活動」ビザで得られるような学歴・職歴要件の緩和措置は適用されません。
高度専門職の配偶者ビザに関する重要注意点
高度専門職外国人の配偶者として日本で在留資格を得た後も、いくつか知っておくべき大切なポイントがあります。
配偶者ビザに関する注意点を理解しておかないと、意図せず在留資格の条件に違反してしまったり、将来のビザ更新や永住許可申請で不利になったりする可能性があります。
安心して日本での生活を継続するために、以下のポイントをしっかりと確認しておきましょう。
【同居義務の重要性】「特定活動」ビザの場合
「特定活動(告示33号または33号の2)」ビザで日本に在留し就労する場合、最も厳格に守らなければならない条件の一つが、高度専門職外国人である配偶者との「同居」です。
高度専門職の配偶者との同居義務は、ビザが許可される際の根幹となる要件であり、在留期間中も継続して満たされている必要があります。
もし、夫婦が別居するような状況になった場合、たとえ就労自体は継続していても、「特定活動」ビザの前提条件が崩れるため、その在留資格が取り消されたり、次回の更新が認められなかったりする重大なリスクが生じます。
正当な理由なく同居の実態がないと判断されると、就労活動の許可も失われる可能性があります。
HSP本人の転職や離職が配偶者のビザに与える影響
高度専門職外国人の配偶者の在留資格は、そのHSP本人の在留資格に大きく依存しています。
特に「高度専門職1号」のビザは、特定の受け入れ機関(勤務先の会社など)と紐づいた「指定書」と共に交付されるため、HSP本人が転職する際には、新しい勤務先で改めて高度専門職1号のビザ(または他の適切な就労ビザ)を取得し直す必要があります。
単なる所属機関の変更届だけでは済まないケースが多いです。
HSP本人のビザ変更手続きは、配偶者の在留資格にも直接影響を及ぼします。
配偶者が「家族滞在」ビザを持っている場合、HSP本人が有効な在留資格を維持できなければ、配偶者の「家族滞在」ビザも更新できなくなる可能性があります。
さらに、配偶者が「特定活動(告示33号)」ビザで就労している場合、HSP本人が転職などによりその活動の基礎を失った場合、配偶者も「特定活動」ビザを再申請し、許可を得直す必要があるとされています。
HSP本人が離職して無職になったり、ポイントが基準値を下回ったりして高度専門職のステータスを失った場合、配偶者のビザの法的根拠も失われるため、速やかに他の在留資格への変更などを検討しなければなりません。
在留期間の更新手続きを忘れずに
「家族滞在」ビザも「特定活動」ビザも、付与された在留期間には限りがあります。
(高度専門職2号の配偶者で、自身も永住許可などを取得していない限り)
在留期間満了日が近づいてきたら、必ず期限内に「在留期間更新許可申請」を行う必要があります。
通常、在留期間満了日の約3ヶ月前から申請が可能です。
更新を忘れてオーバーステイになってしまうと、不法滞在となり、退去強制の対象となるなど非常に深刻な事態を招きます。
日頃から在留カードの有効期限を意識し、余裕を持った申請準備を心がけましょう。
【永住許可への道】HSPの優遇措置と配偶者の可能性
高度専門職ビザの大きなメリットの一つに、永住許可申請における在留期間要件の大幅な緩和があります。
例えば、80点以上のポイントを持つ高度専門職1号の方は、日本での活動実績が1年あれば永住許可を申請できる可能性があります。
70点以上80点未満の方でも3年で申請可能です。HSP本人が永住許可を取得した場合、その配偶者も「永住者の配偶者等」として、通常の外国人よりも緩和された条件で永住許可を申請できる道が開かれます。
永住許可申請には、一定期間の婚姻継続や日本での同居などの要件がありますが、家族で日本に長期的に定住したいと考える場合には、非常に魅力的な選択肢となるでしょう。
【まとめ】高度専門職の配偶者ビザを理解し、最適な選択を
高度専門職外国人の配偶者として日本で生活し、また就労するためには、いくつかのビザの選択肢があることを本解説ページで詳しく見てきました。
主な選択肢は、扶養を受ける立場での滞在を基本とする「家族滞在」ビザと、一定の条件下でフルタイム就労が可能となる「特定活動(告示33号または33号の2)」ビザです。
特に「特定活動」ビザは、学歴や職歴の要件が緩和されるという大きなメリットがありますが、活動範囲の限定やHSP本人との同居といった厳格な条件も伴います。
どの在留資格が最適かは、配偶者の方の就労意欲、希望する職種、そしてキャリアプランによって大きく異なります。
週28時間以内のパートタイムで職種を選ばず働きたいのか、専門分野でフルタイムのキャリアを築きたいのか、あるいはご自身の学歴・職歴を活かして独立した就労ビザを目指すのか、それぞれの道を慎重に検討する必要があります。
また、高度専門職1号のHSP本人が転職する際には、配偶者の「特定活動」ビザも影響を受ける可能性があるなど、HSP本人の状況との連動性も常に念頭に置かなければなりません。
日本の高度専門職制度は、優秀な人材がその家族と共に日本で安心して活躍できる環境を提供することを目指しています。
配偶者に対する就労支援や、条件付きでの親の帯同といった優遇措置は、その表れです。
これらの制度を正しく理解し、適切に活用することで、あなたとご家族の日本での生活はより豊かで安定したものになるでしょう。
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行政書士法人35
代表行政書士 萩台 紘史
2021年4月 SANGO行政書士事務所を開業
2023年9月 法人化に伴い「行政書士法人35」を設立
外国人の就労ビザ申請に専門特化した事務所として年間350件超の就労ビザ申請をサポート