バングラデシュ人を日本で雇用するための学歴要件とは?技人国(ぎじんこく)ビザは取れる?3年制大学卒(Pass Course)の要件等を徹底解説
日本企業からの期待が高まる優秀なバングラデシュ人材。しかし、その採用には「学歴」という、見過ごされがちな、しかし決定的な壁が立ちはだかることがあります。特に、バングラデシュの大学に存在する「3年制の学士課程(Pass Course)」は、日本の就労ビザ審査で「大卒」と認められない可能性がある、極めて重要な論点です。
この記事では、バングラデシュの高等教育で得た学歴が日本の就労ビザでどう評価されるのかを徹底解説。最大の懸念である「3年制大学」の問題を乗り越える申請戦略、さらに2025年からの「アポスティーユ」制度まで、専門家の視点から詳しくお伝えします。この記事を読み終える頃には、あなたのケースでの可能性と、そのための最適な道が明確になっているはずです。
目次
【大前提】日本の就労ビザ「技術・人文知識・国際業務」が求める学歴
バングラデシュの学歴を評価する前に、まずは日本の就労ビザ、特に多くの専門職が対象となる「技術・人文知識・国際業務」ビザの基本ルールを押さえましょう。この日本の「物差し」を正確に理解することが、バングラデシュの学歴を正しく評価するための第一歩です。
原則:「16年教育」と「学士号」が基準
日本の就労ビザにおける「大学卒業」とは、初等教育から数えて合計「16年間の教育」を受けていることが、国際的に通用する学士レベルの専門知識を十分に習得したと見なす一つの基準です。その上で、大学の課程を修了し、「学士(Bachelor’s Degree)」の学位が授与されていることが必須となります。
条件:「専攻と職務の関連性」が必須
ただ大学を卒業していれば良いわけではありません。就労ビザは、学んだ専門性を日本社会で活かしてもらうためのもの。そのため、大学での専攻と日本での仕事内容の間に、強い関連性があるかが厳しく審査されます。例えば、文学部卒の方がITエンジニアとして申請しても、専門性が異なると判断され許可は極めて困難です。
例外:学歴を満たせない場合の「実務経験」という道
万が一、学歴要件を満たせない場合でも、「技術・人文知識」分野で10年以上、「国際業務」分野で3年以上の実務経験があれば、ビザを取得する道も残されています。ただし、過去の全ての会社から具体的な業務内容が記された在職証明書を取り付ける必要があり、証明のハードルは学歴よりもはるかに高いのが実情です。
【最重要】バングラデシュの「3年制」と「4年制」学士号、ビザ審査での決定的な違い
日本の学歴要件を理解した上で、いよいよ本レポートの核心です。バングラデシュの大学には、主に「3年制」と「4年制」の2つの学士課程が存在し、この修業年数の違いが、日本のビザ審査において天と地ほどの差を生む、決定的な違いとなります。
ケース1:4年制「Honours Degree」→学歴要件クリアの有力候補
バングラデシュの大学で4年制の「Honours Degree(優等学位)」を取得した場合、その学歴は日本の4年制大学卒業(16年教育)と同等と評価されます。そのため、学歴要件をクリアする上で非常に有利な立場にあり、申請の焦点は、学歴そのものよりも「専攻と職務内容の関連性」に移ります。
ケース2:3年制「Pass Course」→原則、学歴要件を満たさない重大な壁
これが、バングラデシュ人申請者が直面する最大の壁です。3年制の「Pass Course」で授与された学士号は、初等教育からの合計教育年数が「15年」となり、日本の基準である「16年」に1年足りないと判断されます。これは、申請における「致命的な欠陥」と見なされかねない、極めて深刻な問題です。
【申請戦略】「3年制大学卒」でも諦めない!許可の可能性を探る3つの道
3年制大学卒という学歴が、日本のビザ審査で原則として要件を満たさないことは厳しい現実です。しかし、絶望する必要はありません。正面突破が難しいなら、戦略的に他のルートからアプローチすれば良いのです。ここでは、そのための3つの具体的な道筋を解説します。
戦略1:修士号(Master’s Degree)を取得する
最も確実で、将来的なキャリアにおいても有利に働く王道が、修士号を取得することです。バングラデシュの修士課程は通常1〜2年。3年制の学士課程にこれを加えることで、合計の教育年数が16年以上に達し、日本の「大学卒業と同等以上」という学歴要件を完璧に満たすことができます。時間と費用はかかりますが、学歴のハンディキャップを根本から解消できる最善の策です。
戦略2:10年以上の実務経験で申請する
学歴ではなく、あなたのキャリアそのもので勝負する方法です。「技術・人文知識」分野で10年以上の専門的な実務経験を証明できれば、学歴は一切問われません。ただし、過去に在籍した全ての会社から、具体的な職務内容が記された在職証明書を集める必要があり、その証明のハードルは極めて高いことを覚悟する必要があります。
戦略3:「ワシントン協定」認定プログラムを活用する(エンジニア限定)
これは、エンジニア職の方にのみ開かれた、専門的な突破口です。もしあなたの卒業した大学の技術者教育プログラムが、国際的な技術者教育の枠組みである「ワシントン協定」の認定を受けている場合、話は別です。この認定は、あなたの教育が日本の技術者教育と同等レベルであることの国際的な証明となります。対象者は限定されますが、該当すれば学歴の同等性を主張する上で、非常に強力な武器となり得ます。
【2025年3月〜】アポスティーユ開始!バングラデシュの学歴証明が劇的に変わる
ビザ申請の準備において、バングラデシュ人申請者が直面してきた大きなハードルの一つが、学歴証明書の「認証」手続きでした。しかし、2025年3月30日以降、あなたの申請準備を劇的に簡素化する、画期的なルール変更が始まります。
これまでの「領事認証」との違い
従来の手続きは「領事認証」と呼ばれ、非常に煩雑でした。バングラデシュで発行された卒業証明書を日本で有効な公文書とするために、まずバングラデシュの教育省や外務省で認証を受け、最後に在ダッカ日本国大使館で領事の認証を得る、という複数の時間と手間のかかるステップが必要でした。
新しい「アポスティーユ」とは?
バングラデシュが「外国公文書の認証を不要とする条約(アポスティーユ条約)」に加盟したことで、2025年3月30日以降、この手続きが一変します。今後は、バングラデシュの指定当局(通常は外務省)で「アポスティーユ」という国際的な証明書を取得するだけで、日本の入管庁を含む公的機関で有効な書類として扱われます。日本大使館での手続きは一切不要となり、時間と費用を大幅に削減できるのです。これは、バングラデシュから日本への人材流動を加速させる、重要な国際的インフラと言えるでしょう。
注意点:私立大学の卒業証明書
一つだけ、潜在的な落とし穴に注意が必要です。国によっては、私立大学の書類は「私文書」と見なされ、アポスティーユを取得する前に、自国の公証人による認証を求められる場合があります。この一手間を怠ると、せっかくアポスティーユを申請しても、手続きが最初からやり直しになる可能性があります。この点は、申請前に必ずバングラディシュの担当当局にご確認ください。
【まとめ】バングラデシュの学歴評価は「修業年数」の理解が全て
バングラデシュの学歴で日本の就労ビザを目指す際、最も重要なのは「修業年数」の理解です。4年制の「Honours Degree」であれば道は拓けていますが、3年制の「Pass Course」では、日本の「16年教育」という基準に満たないという、動かせない現実があります。
しかし、道が完全に閉ざされたわけではありません。修士号の取得や10年以上の実務経験の証明といった代替ルートが存在します。ご自身の学歴を正確に把握し、正しい戦略を立てること。それこそが、日本でのキャリアを実現するための唯一の、そして最も確実な道筋です。あなたの素晴らしいポテンシャルを、学歴の壁で諦める必要は全くありません。
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行政書士法人35
代表行政書士 萩台 紘史
2021年4月 SANGO行政書士事務所を開業
2023年9月 法人化に伴い「行政書士法人35」を設立
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