補完的保護対象者とは?難民との違いや認定制度についてわかりやすく解説します!
「ニュースで『補完的保護対象者』という言葉を聞いたけど、難民とはどう違うの?」
「ウクライナから避難してきた人々に関係する制度らしいが、よく分からない」
2023年12月から始まった、この「補完的保護対象者認定制度」。これは、日本における外国人材の保護と共生を考える上で、非常に重要な新しい仕組みです。しかし、まだ新しい制度のため、その内容や「難民」との違いが広く知られていないのが現状です。
この記事では、補完的保護対象者認定制度の概要、難民との決定的な違い、そして認定された場合にどのような生活が可能になるのかを、ビザの専門家が分かりやすく解説します。
まずは結論!「補完的保護対象者」は、難民ではないが保護が必要な人を救う新しい仕組みです
結論から申し上げますと、補完的保護対象者認定制度とは、紛争などから逃れてきたものの、国際条約で定められた厳格な「難民」の定義には当てはまらない人々を、日本が独自に保護するための新しい仕組みです。
この制度の最大の特徴は、認定されると、日本で安定して暮らせる「定住者」という在留資格が与えられる点です。これにより、これまで不安定な立場に置かれがちだった紛争避難民などが、日本社会の一員として自立した生活を築くための道が大きく開かれました。
【比較表で解説】「補完的保護対象者」と「難民」の3つの決定的な違い
「補完的保護対象者」と「難民」。どちらも保護を必要とする人々ですが、法律上の定義は明確に異なります。以下の比較表で、その決定的な違いを理解しましょう。
項目 | 補完的保護対象者 | 難民 |
---|---|---|
1. 保護される理由 | 紛争などによる無差別な暴力や人権侵害の危険 | 人種、宗教、国籍、政治的意見など特定の理由による迫害の恐れ |
2. 根拠となる法律 | 日本の国内法(改正入管法) | 国際条約(難民条約) |
3. 対象となる人の具体例 | ウクライナなど、紛争地域の住民 | 特定の政治活動を理由に本国政府から追われる人 |
簡単に言えば、「特定の誰かから命を狙われている」のが難民、「住んでいる地域全体が戦争などで危険」なのが補完的保護対象者、とイメージすると分かりやすいでしょう。
認定されるとどうなる?補完的保護対象者としての3つの権利
補完的保護対象者として認定されると、日本で安定した生活を送るための重要な権利が得られます。これは本人にとっても、受け入れる社会にとっても大きな一歩です。
1. 在留資格が「定住者」になり、安定した在留が可能になる
認定者には、原則として在留資格「定住者」が付与されます。これは、1年や3年といった期間の定めはありますが、問題なく日本で生活していれば更新が可能で、非常に安定した在留資格です。これまで多くの避難民が「特定活動」という不安定な資格で滞在していた状況が、大きく改善されます。
2. 就労制限が一切なくなり、日本人と同様に自由に働ける
在留資格「定住者」の最大のメリットの一つが、就労活動に一切の制限がないことです。エンジニア、事務職、販売、工場作業など、職種や業種を問わず、日本人と同様に自由に仕事を選び、働くことができます。これは、本人の自立に繋がり、日本社会の新たな担い手となることを意味します。
3. 国民健康保険など、社会保障制度の対象となる
「定住者」として日本に在留することで、国民健康保険や国民年金といった社会保障制度に加入できます。これにより、病気やケガをした際にも安心して医療を受けることができ、将来への備えも可能になります。日本で暮らす上での最低限のセーフティーネットが確保されるのです。
【企業様必見】補完的保護対象者の方を雇用する2つの大きなメリット
この新制度は、人手不足に悩む企業にとっても大きなチャンスです。補完的保護対象者の方を雇用することには、従来の外国人採用とは比較にならないほどのメリットがあります。
1. 面倒な就労ビザの取得手続きが一切不要
補完的保護対象者の方は、在留資格「定住者」を持っているため、就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など)を新たに取得する必要がありません。「学歴と職務内容が一致しているか」といった、就労ビザ特有の複雑な審査を気にする必要は一切なく、採用のハードルが劇的に下がります。
2. 採用手続きが日本人と全く同じでスピーディー
就労制限がないため、採用手続きは日本人を雇用する場合と全く同じです。ハローワークを通じての募集や、通常の採用面接を経て、双方が合意すればすぐに雇用契約を結び、勤務を開始できます。在留資格認定証明書(COE)の交付を待つ数ヶ月間といったタイムラグが発生しないため、スピーディーな人材確保が可能です。
補完的保護対象者認定制度に関するよくあるご質問
ここでは、新しい制度について皆様からよく寄せられる質問にお答えします。
Q1. この制度はいつから始まりましたか?
A. 2023年12月1日に施行された改正出入国管理及び難民認定法によって始まりました。比較的新しい制度ですが、ウクライナから避難されてきた方々を中心に、すでに認定手続きが進んでいます。
Q3. 企業がこの制度の方を雇用する際に、特別な届け出は必要ですか?
A. 雇用保険の加入手続きなど、日本人を雇用する場合と同様の届け出は必要です。一方で、新規で就労ビザの取得のような入管への特別な申請は不要です。採用手続きが大幅に簡素化されると考えてよいでしょう。
まとめ:新たな制度の理解が、日本で暮らす人々と企業の未来を拓く
今回は、2023年12月に始まった「補完的保護対象者認定制度」について解説しました。
この制度は、これまで保護の網の目からこぼれ落ちていた紛争避難民の方々に、日本で安定した生活を送るための道を開く、人道的に非常に意義深いものです。
そして同時に、就労制限のない優秀な人材の活躍の場を広げ、日本企業の成長とダイバーシティを促進する大きな可能性を秘めています。この新しい制度を正しく理解し、支援や雇用の輪を広げていきましょう。
補完的保護対象者認定制度は、日本がより多くの避難民を保護し、その方々が安定した生活を築くための重要な一歩です。そして企業にとっては、就労意欲の高い優秀な人材と出会う新たな機会でもあります。制度を正しく理解し、活用を検討してみませんか。
就労ビザ東京ドットコムは、外国人ビザ申請の専門家です。年間350件超のサポート実績。オンライン申請で全国の入国管理局への申請代行が可能です。失敗しないビザ申請ならお任せください。
関連するオススメ記事はこちら
- 就労ビザで求められる日本語能力について
- 再入国許可とみなし再入国許可について
- 【外国人雇用完全ガイド2025年版】採用から定着までの全手順&注意点|行政書士監修
- 上陸特別許可とは?上陸拒否されても日本に入国できる唯一の希望|その可能性と手続きを解説
- 外国人が国民健康保険に加入する際の要件や流れについて解説!
- 特定技能「外食業」についての制度やビザ取得要件等を徹底解説!
- 在学中で卒業証明書が用意できない!場合の対処法とは?|就労ビザ
- 【外食業向け】特定技能外国人を雇用するための会社の要件とは?
- 【特定活動】家事使用人ビザについて|高度専門職・特別高度専門職外国人などが雇用することが可能
- 【在留資格認定証明書交付申請(COE)】海外から外国人を呼び寄せる方法と流れについて

行政書士法人35
代表行政書士 萩台 紘史
2021年4月 SANGO行政書士事務所を開業
2023年9月 法人化に伴い「行政書士法人35」を設立
外国人の就労ビザ申請に専門特化した事務所として年間350件超の就労ビザ申請をサポート