就労ビザの在留期間はどのように決まるのか?長い年数をもらうために気を付けることとは
外国人材の採用を本格的に検討される中で、
「採用する外国人は、どのくらいの期間日本で働けるのだろう?」
「ビザの申請や更新には、具体的にどれくらいの日数がかかるのか?」
といった期間に関する疑問や不安をお持ちではないでしょうか。
外国人雇用に関する手続きは複雑に感じられることも多いかと思います。
当ページでは、外国人採用をご担当される人事の皆様が抱える疑問を解消するため、2025年の最新情報に基づき、主要な就労ビザの種類ごとに定められた在留期間を詳しくご紹介します。さらに、その期間がどのように決定されるのか、期間満了に伴う更新手続きの流れ、各種申請に要する標準的な日数、そして採用担当者として特に注意すべきポイントまで、網羅的に解説を進めていきます。
外国人材のスムーズな受け入れと、その後の安定した雇用管理を実現するために、ぜひご活用ください。
目次
そもそも就労ビザの「在留期間」とは?
外国人材の雇用を考える上で、まず基本となる「在留期間」について正確に理解しておくことが大切です。
在留期間の管理は、コンプライアンス遵守の観点からも非常に重要な要素となります。ここでは、就労ビザにおける在留期間の意味合いと、その重要性について解説いたします。
よく混同されがちな言葉に「ビザ(査証)」と「在留資格」があります。
「ビザ」は、外国にある日本大使館や領事館が、その外国人の入国が問題ないと判断した場合に発行する「入国推薦状」のようなものです。
一方で「在留資格」は、日本に入国した外国人が、国内でどのような活動を行い、どのくらいの期間滞在できるかを定めた資格であり、法務省(出入国在留管理庁)が管理しています。一般的に「就労ビザ」と呼ばれるものは、正確には「就労が可能な在留資格」のことを指す場合が多いです。
こちらも確認!ビザ(査証)と在留資格の違いとは?実は意味が全く異なります!
そして「在留期間」とは、各在留資格ごとに定められている、外国人が日本国内に合法的に滞在し、許可された活動(就労活動など)を行うことができる期間の上限を指します。例えば「1年」「3年」「5年」といった具体的な期間が、個々の外国人に許可されることになります。許可された在留期間は永久に続くものではなく、必ず満了日が設定されています。
許可された在留期間を超えて日本に滞在し続けることはできません。
もし、在留期間満了後も引き続き日本で就労・滞在を希望する場合には、期間が満了する前に必ず「在留期間更新許可申請」を行い、許可を得る必要があります。万が一、更新手続きを怠り、許可された期間を1日でも超えてしまうと「不法滞在(オーバーステイ)」の状態となります。不法滞在は、外国人本人に対する退去強制処分の対象となるだけでなく、雇用している企業側も「不法就労助長罪」に問われ、厳しい罰則(3年以下の懲役または300万円以下の罰金など)が科される可能性がある重大な違反行為です。したがって、企業の人事担当者様は、雇用する外国人材の在留期間を正確に把握し、期限管理を徹底することが求められます。
【2025年版】主要な就労ビザの種類と定められた在留期間
外国人材を受け入れる際には、従事する業務内容に合った適切な就労ビザ(在留資格)を選択することが第一歩です。
日本には多様な就労ビザが存在し、それぞれに活動範囲だけでなく、日本に滞在できる「在留期間」が法律で定められています。企業での採用シーンで関わることの多い主要な就労ビザについて、2025年時点での最新情報に基づき、許可される在留期間の種類を具体的に見ていきましょう。
技術・人文知識・国際業務(技人国)
「技術・人文知識・国際業務」
通称「技人国(ぎじんこく)」ビザは、エンジニアやプログラマー、設計者といった「技術」分野、経理や法務、マーケティングなどの「人文知識」分野、そして通訳・翻訳、語学指導、海外取引業務といった「国際業務」分野の専門職に従事する外国人のための、最も代表的な就労ビザと言えるでしょう。
「技術・人文知識・国際業務」ビザで許可される在留期間は「5年」「3年」「1年」「3ヶ月」のいずれかとなります。
初めて「技術・人文知識・国際業務」ビザを申請する場合、まずは「1年」の在留期間が許可されるケースが多く見られます。その後、日本での在留状況や勤務実績に問題がなければ、更新時に「3年」や「5年」といったより長い期間が認められる可能性が高まります。
特定技能
「特定技能」ビザは、国内での人材確保が困難な状況にある特定の産業分野において、一定の専門性・技能を持つ外国人を受け入れるために2019年に創設された比較的新しい在留資格です。
「特定技能」には「1号」と「2号」の二つの区分が存在します。
「特定技能1号」の場合、許可される在留期間は「1年」「6ヶ月」「4ヶ月」のいずれかであり、定期的に更新手続きが必要です。
ただし、日本に滞在できるのは通算で最長5年間という上限が設けられています。
一方「特定技能2号」は、1号よりも熟練した技能を持つと認められた場合に取得でき、在留期間は「3年」「1年」「6ヶ月」のいずれかとなります。
「特定技能2号」には通算の在留期間上限がなく、更新を続けることで実質的に無期限の滞在が可能になります。さらに、一定の要件を満たせば家族(配偶者や子)を日本に呼び寄せることも認められています。2025年には、「特定技能」制度に関して運用ルールの変更も予定されており、今後の動向に注意が必要です。
こちらも確認!特定技能1号で家族を帯同できる方法について
経営・管理
日本で会社を設立して事業の経営を行ったり、企業の管理職として活動したりする外国人には「経営・管理」ビザが該当します。
「経営・管理」ビザで許可される在留期間は「5年」「3年」「1年」「6ヶ月」「4ヶ月」「3ヶ月」と多岐にわたります。
新規に会社を設立して申請する場合などは、まず「1年」の期間が許可されることが一般的です。事業の準備段階では「4ヶ月」が付与されることもあります。事業が軌道に乗り、安定性や継続性が認められれば、更新時に「3年」や「5年」といった長期の在留期間が得られる可能性が出てきます。事業計画の実現性や収益性、適正な納税などが審査において重要視される点です。
その他の主な就労ビザ
これらの他に、企業の活動に関連する就労ビザとして、海外の関連会社からの転勤者を受け入れるための「企業内転勤」ビザ(在留期間:5年、3年、1年、3ヶ月)や、学術研究や専門技術分野で特に優れた能力を持つ人材を対象とする「高度専門職」ビザ(原則として5年)などがあります。それぞれの就労ビザに特有の要件や活動範囲、在留期間が定められています。
このように、就労ビザの種類によって定められた在留期間は様々です。採用したい人材の職務内容や経歴に合わせて、どの在留資格が適切か、そしてどの程度の期間、日本で活躍してもらえる可能性があるのかを事前に把握しておくことが肝心です。
就労ビザの在留期間はどのように決まるのか?
前のセクションでご紹介したように、同じ「技術・人文知識・国際業務」ビザであっても、許可される在留期間は1年、3年、5年と人によって異なります。
「なぜ同じ種類のビザなのに、もらえる期間に差があるのだろう?」と疑問に思われるかもしれません。実は、就労ビザの在留期間は、画一的な基準で自動的に決まるわけではありません。出入国在留管理庁が>個々の申請内容を審査した上で総合的に判断しています。ここでは、在留期間の判断において考慮される主な要因について解説します。
申請者(外国人本人)に関する要因
まず、申請する外国人本人に関する様々な要素が審査の対象となります。
日本でのこれまでの在留状況は重要なポイントです。過去にオーバーステイや資格外活動違反などの入管法違反がないか、法律を守って生活しているか、といった素行の善良さがチェックされます。また、住民税や所得税などの納税義務をきちんと果たしているかも見られます。職務に関連する学歴や職務経歴、保有している資格やスキルなども、専門性の高さを示すものとして考慮されるでしょう。日本での活動実績が長ければ長いほど、安定した在留が見込まれると判断されやすくなる傾向があります。
受入れ機関(企業)に関する要因
外国人材を受け入れる企業側の状況も、在留期間の決定に大きく影響します。
特に企業の規模や経営の安定性・継続性は重要な判断材料です。出入国在留管理庁では、企業を事業規模などに応じてカテゴリー1からカテゴリー4までに分類しています。上場企業やそれに準ずる規模の企業(カテゴリー1・2)は、提出書類が一部免除されるだけでなく、一般的に信頼性が高いと見なされ、雇用する外国人の在留期間も長めに許可される傾向があります。反対に、設立間もない企業や小規模な企業(カテゴリー3・4)の場合は、事業の安定性をより慎重に審査されることになります。過去の外国人材の受け入れ実績や、受け入れた外国人の在留管理が適切に行われているか、社会保険への加入状況や労働関連法規の遵守状況なども評価の対象となります。企業として法令を遵守し、安定した経営基盤を持っていることを示すことが重要です。
初回申請と更新申請の違い
初めて就労ビザを申請する場合(海外からの呼び寄せや、留学からの変更など)は、入管としても申請者の日本での実績がないため、慎重な判断となることが多いです。
そのため、初回の申請では「1年」の在留期間が許可されるケースが多いでしょう。その後、日本での就労を継続し、在留状況に問題がない状態で更新申請を行う場合、企業や本人の状況に応じて「3年」や「5年」といったより長い在留期間が許可される可能性が高まります。日本での安定した就労実績と信頼を積み重ねていくことが、長期の在留期間を得るための鍵となると言えます。
より長い在留期間(3年・5年)を目指すためのポイント
外国人従業員に長く活躍してもらうためには、できるだけ安定した在留資格、つまり長い在留期間を得ることが望ましいですよね。
「3年」や「5年」といった期間は、頻繁な更新手続きの手間が省けるだけでなく、外国人本人にとっても将来設計がしやすくなり、永住許可申請を考える上での一つの目安にもなります。では、どうすれば初回申請や更新申請で、より長い在留期間を獲得しやすくなるのでしょうか。そのための重要なポイントを企業側・外国人側の双方から解説します。
まず企業側の取り組みとして重要なのは、安定した経営基盤と法令遵守の姿勢を示すことです。
企業の事業規模などに応じたカテゴリー分類は、在留期間の審査において大きな影響を持ちます。上場企業やそれに準ずる規模・実績を持つカテゴリー1やカテゴリー2に該当する企業は、社会的な信用度が高く、提出書類が簡略化されるメリットに加え、雇用する外国人に長期の在留期間が許可されやすい傾向が見られます。企業の成長や健全な財務状況を維持することが、間接的に従業員の在留期間にも繋がるのです。
次に、納税や社会保険に関する義務を適切に履行していることが極めて重要となります。
企業として法人税などをきちんと納めていることは当然として、雇用する外国人従業員の住民税や所得税の納税状況、さらに健康保険や厚生年金保険といった社会保険への加入と保険料の滞納がないかどうかも厳しくチェックされます。これら公的義務を果たしていることは、企業及び従業員の信頼性を示す基本的な要素となります。
また、入管法で定められた各種届出義務を怠らないことも大切です。
例えば、外国人従業員が住所を変更した場合や、雇用契約の内容に変更があった場合、あるいは退職した場合など、企業や外国人本人が行うべき届出がいくつか定められています。定められた届出を遅滞なく正確に行うことは、法令遵守の意識の表れとして評価されます。
外国人本人に求められる要素としては、第一に、許可された在留資格の範囲内で、安定して職務を継続していることが挙げられます。職務内容と本人の学歴・職歴との関連性が維持され、業務内容に見合った適正な報酬が支払われていることも重要です。頻繁な転職を繰り返している場合などは、安定性に欠けると判断される可能性もあります。
さらに、日本での生活態度、つまり素行の善良さも考慮されます。重大な犯罪歴がないことは当然ですが、交通違反の繰り返しなども、場合によってはマイナス評価に繋がる可能性が否定できません。日頃から日本の法律やルールを守って生活することが求められます。
企業の安定性・信頼性、納税・社会保険等の公的義務の履行、入管法上の届出の遵守、そして外国人本人の安定した就労と素行の善良さ、これらの要素が総合的に評価され、3年や5年といった長期の在留期間の許可に繋がっていきます。一朝一夕に達成できるものではありませんが、日頃から意識しておくことが肝要です。
在留期間の更新手続き:いつ・何を・どうすれば?
外国人従業員に付与された在留期間には必ず満了日があります。
その満了日後も引き続き日本で就労してもらうためには「在留期間更新許可申請」という手続きが不可欠です。更新手続きを怠ると不法就労につながるため、人事担当者としては正確な知識を持って対応する必要があります。更新申請を行う適切なタイミング、必要となる主な書類、そして手続きを進める上での注意点について具体的に解説していきます。
更新申請のタイミング
在留期間の更新申請は、いつでも行えるわけではありません。
原則として、現在保有する在留期間の満了日を迎える3ヶ月前から申請を受け付けています。申請の提出期限は、在留期間の満了日当日までです。しかし、審査には一定の時間を要するため、満了日間際ではなく、余裕を持って申請を行うことが強く推奨されます。万が一、審査の途中で在留期間の満了日を迎えてしまった場合でも、申請が受理されていれば、結果が出るまで、または在留期間満了日から2ヶ月を経過する日まで、どちらか早い方までの期間は、適法に日本に滞在できる特例期間が設けられています。それでも、不測の事態に備え、早めの準備と申請を心がけるのが賢明でしょう。
更新申請に必要な主な書類(企業が準備するもの)
在留期間更新許可申請では、申請人である外国人本人だけでなく、雇用主である企業側も書類を準備する必要があります。
提出が求められる書類は申請する在留資格の種類や企業のカテゴリーによって異なりますが、一般的に企業側で準備が必要となる主な書類としては、まず指定された様式に従い雇用条件や職務内容などを正確に記入する在留期間更新許可申請書(所属機関作成用)が挙げられます。次に、前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の写しも必要です。e-Taxで提出した場合は受付完了通知を添付することになります。
さらに、企業のカテゴリーが3または4に該当する場合には、損益計算書や貸借対照表など、企業の経営状況を示す直近年度の決算文書の写しが求められる場合があります。これらはあくまで一例であり、申請する外国人の状況や企業の状況に応じて、追加で書類の提出を求められるケースも少なくありません。申請前には、必ず出入国在留管理庁のウェブサイトで最新の必要書類リストを確認するか、専門家にご確認ください。書類に不備があると、申請が受理されなかったり、審査に通常より長い時間がかかったりする原因となります。
更新時の注意点
更新申請の際には、いくつかの注意すべき点があります。
特に、前回の許可時から状況に変化があった場合は、慎重な対応が求められます。例えば、外国人従業員が転職して入社した場合、前職の企業で許可された在留資格と現在の職務内容が一致しているかを確認する必要があります。転職前に「就労資格証明書」を取得しておくと、更新時の審査がスムーズに進むことがあります。
また、同じ企業内であっても、部署異動などにより職務内容が大幅に変更された場合、従事している活動が許可された在留資格の範囲内であるかを再確認する必要が生じます。
報酬額が、前回の申請時や同職種の日本人従業員と比較して不当に低くなっていないか、という点も審査の対象となります。さらに、納税状況や社会保険の加入・納付状況、そして日本での在留状況(法令遵守など)に問題がないかも改めて確認されます。これらの点に問題があると、更新が不許可になったり、許可されたとしても在留期間が短縮されたりする可能性があります。
就労ビザ申請にかかる標準的な期間(日数)
外国人材の採用計画を具体的に進める上で「ビザの申請手続きには、実際どれくらいの時間がかかるのか?」という点は、入社時期や業務開始のタイミングを左右する非常に重要な要素です。
申請から許可までの期間を事前に把握しておくことで、より現実的なスケジュールを立てることが可能になります。主な就労ビザ関連の申請手続きについて、出入国在留管理庁が公表している標準的な処理期間の目安をご紹介します。
在留資格認定証明書交付申請(海外からの呼び寄せ)
海外にいる外国人を日本に呼び寄せて雇用する場合、まず初めに行うのが「在留資格認定証明書交付申請」です。
この証明書は、外国人が日本で行おうとしている活動が、特定の在留資格に該当するものであることを法務大臣が事前に認定するものです。申請から証明書が交付されるまでの標準的な処理期間は、およそ1ヶ月から3ヶ月程度とされています。ただし、これはあくまで目安であり、申請内容や提出書類に不備があった場合、あるいは審査が慎重に行われるケースなどでは、3ヶ月以上かかることもあります。特に、企業の規模や業種、申請者の経歴などによっては、審査に時間を要する傾向が見られます。
在留資格変更許可申請(ビザの変更)
既に日本に留学や他の在留資格で滞在している外国人を、就労可能な在留資格に変更する場合に必要なのが「在留資格変更許可申請」です。
例えば、日本の大学を卒業した留学生を採用し「留学」ビザから「技術・人文知識・国際業務」ビザへ変更するケースなどが該当します。変更許可申請の標準的な処理期間は、およそ2週間から1ヶ月程度とされています。認定証明書の交付申請に比べると、比較的短い期間で結果が出る傾向にあります。しかし、申請内容によっては審査に時間がかかる場合があるため、油断は禁物です。
在留期間更新許可申請(ビザの延長)
現在保有している就労ビザの在留期間を延長するための手続きが「在留期間更新許可申請」です。
更新申請の標準的な処理期間も、変更許可申請と同様に2週間から1ヶ月程度が目安となります。在留状況に特に問題がなく、提出書類も揃っていれば、比較的スムーズに許可が得られることが多いでしょう。ただし、転職を伴う更新や、在留状況に懸念事項がある場合などは、審査が長引く可能性も考慮しておく必要があります。
審査期間が変動する要因
示されている標準処理期間はあくまで目安であり、実際の審査期間は様々な要因によって変動します。
申請内容が複雑であったり、提出書類に不備や不足があったりすると、追加書類の提出を求められたり、確認に時間がかかったりして、結果的に審査期間が長引くことになります。また、出入国在留管理庁の窓口が混雑する時期も影響します。特に、例年1月から4月頃は、新年度に向けて留学ビザから就労ビザへの変更申請などが集中するため、入管の繁忙期となり、通常よりも審査に時間がかかる傾向が顕著です。
特に春入社の人材を採用する場合は、可能な限り早期に申請を完了させることが重要です。採用計画においては、変動要因も考慮に入れ、余裕を持ったスケジュールを設定することを強くお勧めします。
人事担当者様が特に注意すべきこと
外国人材を雇用し、共に働く上では、日本の法律、特に出入国管理及び難民認定法(入管法)を正しく理解し、遵守することが企業に求められます。
知らなかったでは済まされない重要なルールも多く、違反した場合には厳しい罰則が科される可能性もあります。外国人雇用に関わる人事担当者の皆様が、日々の業務の中で特に注意すべき点を具体的に解説します。
まず基本中の基本となるのが、採用時および在留期間更新時における「在留カード」の確認です。
在留カードは、日本に中長期間滞在する外国人に交付される身分証明書であり、就労が可能かどうか、どの範囲の活動が許可されているか、そしていつまで日本に滞在できるか(在留期間)といった重要な情報が記載されています。必ず原本を確認し、氏名、在留資格の種類、在留期間の満了日、そして「就労制限の有無」の欄をチェックする習慣をつけましょう。「就労不可」と記載されている場合や、指定された活動以外の就労は原則としてできません。
次に、雇用する外国人に、その在留資格で許可されている活動範囲を超えた業務をさせない、という点が極めて重要です。
例えば「技術・人文知識・国際業務」のビザを持つエンジニアに、人手が足りないからといって工場での単純作業や店舗での接客業務などをメインに従事させることは、原則として認められません。在留資格外の活動をさせる行為は「不法就労」にあたり、外国人本人だけでなく、そうした業務をさせた企業側も「不法就労助長罪」に問われる可能性があります。悪質なケースでは刑事罰に処されることもあり、企業の信用失墜にも繋がるため、業務内容と在留資格の適合性には常に注意を払う必要があります。
採用決定から入社までのプロセスにおいては、雇用契約書の取り扱いにも注意が必要です。
特に新卒採用などで、入社前に就労ビザへの変更申請を行う場合、必ずしもビザが許可されるとは限りません。そのため、万が一ビザが不許可になった場合に備え、雇用契約書には「在留資格の取得(または変更・更新)が許可されることを雇用契約の発効条件とする」といった趣旨の停止条件条項を設けておくことが一般的です。この条項により、ビザ不許可の場合に円滑に契約を解消することが可能となります。
また、外国人従業員が退職した場合や、転職によって自社に入社・退社した場合などには、企業側にも入管への届出義務が発生します。
「中長期在留者の受入れに関する届出」や「中長期在留者の活動に関する届出」などが該当し、届出を怠ると罰則の対象となる場合があります。従業員本人にも、所属機関(勤務先)に関する届出義務がありますので、双方で必要な手続きを忘れないように管理体制を整えることが望ましいです。
最後に、これまでの解説でも触れてきましたが、外国人採用のスケジュール管理は特に重要です。
就労ビザの申請には一定の期間を要し、繁忙期にはさらに時間がかかることもあります。内定を出してから実際に入社して業務を開始できるまでには、ビザ手続きの期間を十分に考慮する必要があります。「すぐにでも働いてほしい」という現場の要望に応えられないケースも出てくるため、採用計画の初期段階からビザ申請にかかる期間を見込み、余裕を持ったスケジュールを設定することが、トラブルを防ぐ上で非常に大切になります。
就労ビザの手続きは複雑?専門家への相談も検討しよう
就労ビザの期間や更新、申請手続きについて解説してきましたが「思った以上に複雑だな」「自社だけで対応するのは大変そうだ」と感じられた人事担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
実際、就労ビザに関する手続きは、種類が多く、必要とされる書類も多岐にわたります。さらに、審査の基準が全て明確に公開されているわけではなく、法改正も頻繁に行われるため、常に最新の正確な情報を追い続けるのは容易ではありません。
自社で申請準備を進める場合、慣れない書類作成に多くの時間を費やしたり、些細なミスで申請が受理されなかったり、最悪の場合、審査の結果「不許可」となってしまうリスクも考えられます。一度不許可になると、原因を分析し、再申請を行うことはさらに難易度が上がります。採用計画が大幅に遅れるだけでなく、採用予定だった外国人材のキャリアプランにも影響を与えかねません。時間的・精神的な負担は決して小さくないでしょう。
もし、手続きの煩雑さや不許可リスクに少しでも不安を感じるようでしたら、就労ビザ申請の専門家である行政書士に相談することも有効な選択肢の一つです。
専門家は、最新の法令や審査の傾向を熟知しており、個別のケースに応じた適切なアドバイスや書類作成のサポートを提供してくれます。専門家に依頼するメリットは、単に手間が省けるだけではありません。申請書類の精度が高まり、結果として許可の可能性を高めることが期待できます。また、複雑な手続きから解放されることで、人事担当者様は採用活動や他のコア業務に集中できるようになるでしょう。急ぎの案件に対応できるスピード感も、専門家ならではの強みと言えます。
まとめ
当記事では、外国人就労ビザの「期間」に焦点を当て、種類別の在留期間、期間が決定される仕組み、更新手続き、申請にかかる日数、そして最新の制度変更について解説しました。
外国人材の採用と活躍を成功させるためには、在留期間に関する正確な理解と管理が不可欠であることがお分かりいただけたかと思います。
初回申請では1年の期間が多く付与され、日本での安定した就労実績や企業の信頼性、法令遵守状況などが評価されることで、更新時に3年や5年といった長期の期間が得られやすくなります。更新手続きは在留期間満了の3ヶ月前から可能であり、申請期間も考慮して余裕を持ったスケジュール管理が求められます。
最新情報を常に把握し、適切に対応していくことが、人事担当者様にとってますます重要になるでしょう。
私たちは外国人ビザ申請専門の行政書士法人35です。年間350件超のサポート実績。オンライン申請で全国の入国管理局への申請代行が可能です。失敗しないビザ申請ならお任せください。
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行政書士法人35
代表行政書士 萩台 紘史
2021年4月 SANGO行政書士事務所を開業
2023年9月 法人化に伴い「行政書士法人35」を設立
外国人の就労ビザ申請に専門特化した事務所として年間350件超の就労ビザ申請をサポート