ミャンマー人を日本で雇用するための学歴要件とは?技人国(ぎじんこく)ビザは取れる?大学・カレッジ・3年制学士の要件を徹底解説
勤勉で日本語習得能力も高いと評価され、日本企業からの注目が集まるミャンマー人材。しかし、その採用プロセスは、他の国とは異なる特有の難しさに直面します。候補者の学歴が「3年制大学」や「カレッジ」卒だった場合、果たして日本のビザ要件を満たすのか。さらに、近年の政情不安により、卒業証明書などの公的書類そのものの入手が困難になっているという現実もあります。
この記事では、ミャンマーの複雑な教育制度と日本のビザ要件との関係性を解き明かし、採用担当者が抱える二重の不安に専門家の視点からお答えします。それぞれの学歴がどのように評価されるのか、そして現代的な申請リスクにどう対処すべきかを具体的に解説します。
不確実性を乗り越え、優秀なミャンマー人材を確実に迎え入れるために、ぜひ本記事をお役立てください。
目次
ミャンマー教育制度の基礎知識|採用担当者が押さえるべきポイント
ミャンマー人材の学歴を評価するには、まず現地の教育制度の骨格を理解することが重要です。特に、学年制の変更があったため、候補者の卒業年次によって教育背景が異なる可能性がある点に注意が必要です。
変遷する学年制:11年制から12年制へ
ミャンマーの教育制度は、長らく小学校5年、中学校4年、高校2年の合計11年制が採用されていました。しかし、国際基準に合わせるため、現在は幼稚園から始まり高校までを12年間とする新制度へ移行しています。そのため、採用候補者の卒業時期によって、11年制と12年制のどちらの教育を受けたかが異なる点を念頭に置く必要があります。
全国統一の大学入学試験「セーダン試験」
ミャンマーの大学進学は、高校最終学年で実施される全国統一の卒業試験、通称「セーダン試験」の成績によってほぼ全てが決まると言っても過言ではありません。この試験の点数に基づき、進学できる大学や学部が厳格に振り分けられるのです。この難関を突破した学生は、基礎学力が高いと評価できるでしょう。
多様な高等教育機関:大学、ディグリー・カレッジ、カレッジ
高校卒業後の高等教育機関も、日本とは少し異なります。ミャンマーには、修士・博士課程まで有する総合的な「大学(University)」のほかに、主に学士課程のみを提供する「ディグリー・カレッジ(Degree College)」、そして多くは2年制の課程を置く「カレッジ(College)」が存在します。これらの教育機関の種類と、そこで授与される学位や資格が、後のビザ審査において重要な判断材料となります。
ミャンマーの学歴は日本の就労ビザで認められるか?
ここからは、ミャンマー人材採用における最大の関心事、学歴とビザ要件の問題を掘り下げます。ミャンマーの多様な高等教育の卒業資格が、日本の「技術・人文知識・国際業務」ビザの審査でどのように評価されるのか、その基準を具体的に見ていきましょう。
結論:学歴の種類と卒業時期によって評価が異なる
まず、ミャンマーの学歴がビザ要件を満たすかは、卒業した教育機関の種類、そして卒業した時期によって評価が分かれます。全ての「大学卒」が同じように扱われるわけではない点が、重要なポイントとなります。
日本の就労ビザにおける「大学卒業または同等以上」の定義
審査の基準となるのは、日本の就労ビザ制度が定める「大学を卒業し、又はこれと同等以上の教育を受けたこと」という学歴要件です。これには海外の大学も含まれ、日本の短期大学や一定の専門学校の卒業も「同等以上の教育」と見なされます。ミャンマーの学歴が、この基準に合致するかどうかが審査の分かれ目です。
ミャンマーの学歴別:ビザ申請における評価と注意点
4年制大学(University/Degree College)の学士号:最も確実に要件を満たす学歴
ミャンマーの4年制大学やディグリー・カレッジを卒業し、正規の「学士(Bachelor)」の学位を取得している場合は、日本の「大学卒業」と同等と評価されます。そのため、学歴要件は問題なくクリアできると考えてよいでしょう。
【注意】過去に存在した「3年制大学」の学士号
ミャンマーでは、過去の政治的な影響で、大学の課程が一時的に3年制に短縮されていた時期があります。この時期に取得した「学士号」も、学位であることに変わりはありません。しかし、日本の標準的な4年制大学と比較されるため、申請の際には、3年間で集中的に専門教育を受けたことなどを補足説明する必要が出てくる可能性があります。
【最重要】2年制カレッジ(College)の卒業資格:認められるのか?
最も判断が難しいのが、2年制の「カレッジ」の卒業資格です。これが日本の「短期大学」に相当する高等教育と認められれば、学歴要件を満たします。しかし、もし「外国の専門学校」と同等と見なされた場合、原則として学歴要件を満たさないことになります。この判断は入管の裁量に委ねられる部分が大きく、申請における最大のリスクと言えます。カレッジ卒の人材を採用する場合は、その教育内容が日本の短大に匹敵する専門性を持つことを、成績証明書などを用いて積極的に証明していく必要があります。
ミャンマー特有の申請リスクと実践的な対処法
ミャンマー人材の採用では、学歴評価の複雑さに加え、現在のミャンマーが抱える特有の申請リスクにも目を向ける必要があります。ここでは、採用計画の成否に直結する二つの大きな障壁について解説します。
最大の障壁:政情不安による「公的書類の取得困難」
2021年以降のミャンマー国内の政情不安は、ビザ申請に深刻な影響を及ぼしています。大学をはじめとする行政機能が正常に機能しておらず、ビザ申請に必須となる「卒業証明書」や「成績証明書」といった公的書類の発行が大幅に遅れたり、場合によっては入手自体が極めて困難になったりするケースが頻発しています。この書類取得の問題は、採用プロセス全体の遅延に直結する最大の障壁です。
過去の申請との「不整合」という重大なリスク
もう一つの重大なリスクが、過去の申請内容との不整合です。日本の入国管理局は、一人の申請者が過去に提出した全ての情報を記録・照合しています。例えば、候補者が数年前に「高校卒業」の学歴で留学ビザを申請し、今回「大学卒業」として就労ビザを申請した場合、経歴に矛盾が生じ「虚偽申請」と見なされる可能性があります。これは、不許可に直結する非常に重大な問題であり、採用前に候補者の過去の申請歴を正確に確認することが不可欠です。
これらのミャンマー特有のリスクは、一般的なビザ申請の知識だけでは乗り越えることが困難です。採用を確実に成功させるためには、最新の現地情報と専門的な知見が欠かせません。
【まとめ】ミャンマー人材の採用成功は、学歴の精査と申請リスクの理解が鍵
ここまで、ミャンマーの教育制度と日本のビザ要件、そして現代特有の申請リスクについて見てきました。重要なのは、ミャンマーの4年制大学卒であれば原則として学歴要件を満たす一方で、過去の3年制大学や2年制カレッジの卒業資格は、慎重な判断が求められるという点です。
そして、どの学歴であっても、専攻と職務内容の関連性を明確に証明することが不可欠です。しかし、それ以上に大きな障壁となるのが、政情不安による「公的書類の入手困難」という現実的なリスクと言えるでしょう。
優秀なミャンマー人材の採用は、こうした複雑な背景を理解し、一つ一つのリスクに的確に対処することから始まります。不確実性の高い申請だからこそ、専門家のサポートが成功への確実な道筋となります。採用を現実のものとするために、ぜひ一度ご相談ください。
私たちは外国人ビザ申請専門の行政書士法人35です。年間350件超のサポート実績。オンライン申請で全国の入国管理局への申請代行が可能です。失敗しないビザ申請ならお任せください。
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行政書士法人35
代表行政書士 萩台 紘史
2021年4月 SANGO行政書士事務所を開業
2023年9月 法人化に伴い「行政書士法人35」を設立
外国人の就労ビザ申請に専門特化した事務所として年間350件超の就労ビザ申請をサポート