【ビザ申請の専門家は?】行政書士・外国人雇用管理士・外国人雇用労務士の違いについて解説
外国人を雇用する上で欠かせない「就労ビザ」の手続き。専門家に依頼しようとした際、「外国人雇用管理士」「外国人雇用労務士」「行政書士」など、よく似た名前の専門家がいて、誰に何を依頼すべきか混乱する担当者も少なくありません。
専門家選びを間違えると、時間や費用を無駄にするだけでなく、法律違反(非行政書士行為)に繋がるリスクさえあります。
この記事では、外国人雇用に関わる各資格の役割と法的な立ち位置を明確にし、「ビザ申請は誰に依頼すべきか」という疑問に、専門家が法律に基づき解説します。
目次
結論|ビザ申請の代行は国家資格者である「行政書士」の独占業務
最初に、最も重要な結論をお伝えします。外国人雇用の手続きの中でも、根幹となる就労ビザの申請書類を作成し、本人に代わって出入国在留管理庁へ申請を取次することは、法律で定められた「行政書士」の独占業務です。
1. 外国人雇用に関する資格の種類(国家資格と民間資格)
混乱の原因は、国家資格と民間資格が混在している点にあります。ビザ申請のような、国民の権利義務に関わる重要な手続きの代理は、法律に基づく国家資格者にしか認められていません。
2. 法律で定められたビザ申請の専門家は行政書士
行政書士法という法律によって、行政書士は「官公署に提出する書類の作成・提出代理」を業務とすることが定められています。出入国在留管理庁へのビザ申請は、まさにこの業務の典型例です。したがって、ビザ申請を依頼すべき法的な専門家は、行政書士(または弁護士)です。
各資格の役割と業務範囲の比較
では、それぞれの資格はどのような役割を持つのでしょうか。その違いを具体的に見ていきましょう。
1. 行政書士(国家資格)
業務範囲:出入国在留管理庁へのビザ申請の取次(独占業務)、その他、建設業許可や飲食店営業許可など、各種行政手続きに関する許認可申請の代理をおこないます。
根拠法:行政書士法
注目ビザの専門家である行政書士とは?
2. 外国人雇用管理士(民間資格)
役割:一般社団法人外国人雇用協議会が認定する民間資格です。外国人雇用の在留資格、労働法、社会保険、文化理解といった、幅広い基礎知識を体系的に学習したことを証明するものです。
できること・できないこと:あくまで知識の証明であり、この資格でビザ申請の代行をおこなうことはできません。
3. 外国人雇用労務士(民間資格)
役割:一般社団法人外国人雇用支援機構が認定する民間資格です。特に外国人雇用の労務管理(雇用契約、就業規則、社会保険、助成金など)に関する専門知識の習得を証明します。
できること・できないこと:この資格でビザ申請の代行をおこなうことはできません。
4. 社会保険労務士(国家資格)との違い
「外国人雇用労務士」と名称が似ていますが、社会保険労務士(社労士)は国家資格です。社労士は、労働・社会保険に関する手続きや、就業規則・雇用契約書の作成、労務相談などを専門とするプロフェッショナルです。ビザ申請は業務範囲外ですが、外国人雇用における労務管理の面では、非常に重要な役割を担います。
比較表|各専門家の業務範囲
各専門家の役割を、具体的な業務内容で比較してみましょう。
業務内容 | 行政書士 | 社会保険労務士 | 外国人雇用管理士・外国人雇用労務士 |
---|---|---|---|
ビザ申請の代行 | ◎(独占業務) | × | × |
雇用契約書・就業規則の作成 | △ | ◎(独占業務) | × |
社会保険・労働保険の手続き | × | ◎(独占業務) | × |
外国人雇用の一般的な知識提供 | 〇 | 〇 | 〇 |
なぜ行政書士しかビザ申請の代行(取次)ができないのか
専門家選びを間違えないために、なぜビザ申請の代行が行政書士の独占業務なのか、その法的背景を理解しておくことが重要です。
1. 行政書士法で定められた独占業務
行政書士法第1条の2では、行政書士が「官公署に提出する書類」の作成・提出代理を業とすることが定められています。そして、同法第19条では、行政書士または弁護士でない者が、報酬を得てこの業務をおこなうことを禁止しています。
2. 非行政書士による申請代行(非行政書士行為)のリスクと罰則
行政書士の資格を持たない者が、報酬を得てビザ申請を代行することは「非行政書士行為」と呼ばれる明確な法律違反です。これに違反した場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。
無資格のコンサルタントなどに安易に依頼すると、企業側もトラブルに巻き込まれ、社会的信用を失うリスクがあるため、絶対に避けなければなりません。
課題別|最適な専門家の選び方
では、企業が抱える課題に応じて、どの専門家に相談するのが最適なのでしょうか。具体的なケースで見ていきましょう。
1. ケース:「外国人のビザを取得・更新したい」→ 行政書士
これは最も明確な例です。ビザの新規取得、更新、変更など、出入国在留管理庁への申請に関する相談・依頼は、迷わずビザ専門の行政書士にしましょう。
2. ケース:「雇用契約書や就業規則を整備したい」→ 社会保険労務士
外国人材を雇用するにあたり、言語の問題や文化の違いに配慮した雇用契約書や就業規則を作成したい場合、その専門家は社会保険労務士です。労働法規のプロとして、適切な労務管理体制の構築をサポートします。
3. ケース:「社内の担当者が基礎知識を体系的に学びたい」→ 民間資格の取得を検討
人事担当者などが、外国人雇用に関する一連の知識(ビザ、労務、文化など)を体系的に学び、社内の対応力を高めたいという目的であれば、「外国人雇用管理士」などの民間資格の取得は、有効な選択肢です。
外国人雇用に関するQ&A
専門家選びについて、よくある質問にお答えします。
Q1. 資格を持っている行政書士なら、誰でもビザに詳しいですか?
いいえ、そうとは限りません。行政書士の業務範囲は非常に広く、建設業許可や相続などを専門にしている事務所もあります。外国人雇用を成功させるには、ビザ申請を専門に扱い、豊富な実績を持つ行政書士を選ぶことが極めて重要です。
Q2. 民間資格を持っている人に相談するメリットはありますか?
民間資格の保有者は、外国人雇用に関する幅広い知識を学んでいます。そのため、社内体制の構築や文化摩擦の解消といった、ビザ申請以前の一般的な相談に対応できるメリットはあるでしょう。ただし、ビザ申請の具体的な代理業務は依頼できないことを、明確に理解しておく必要があります。
Q3. 顧問の社会保険労務士に、ビザ申請も依頼できますか?
顧問の社労士がビザ申請を代行することは、法律で禁じられています。多くの誠実な社労士は、ビザの相談を受けた場合、提携している行政書士を紹介してくれます。労務とビザ、それぞれの専門家が連携してサポートする体制が理想です。
まとめ:「ビザは行政書士」が大原則。目的に応じて専門家を選ぼう
外国人雇用に関わる専門家たちの役割の違いについて解説しました。最後に、適切な専門家を選ぶための重要なポイントを振り返ります。
1. 就労ビザ申請の代理は、法律で行政書士の独占業務と定められている
これが最も重要な大原則です。ビザに関する手続きの依頼先は、行政書士(または弁護士)以外にありません。
2. 「外国人雇用管理士」「外国人雇用労務士」は知識を証明する民間資格であり、ビザ申請の代行はできない
これらの資格は、個人の知識レベルを示すものであり、他人のビザ申請を代行する法的な権限を持つものではありません。
3. 労務管理の相談は社会保険労務士が専門
ビザが取れた後の、雇用契約や社会保険、就業規則といった労務管理については、国家資格者である社会保険労務士の専門分野です。
4. 適切な専門家選びが、コンプライアンス遵守と円滑な外国人雇用の第一歩
それぞれの専門家の役割を正しく理解し、自社の課題に応じて適切な相談相手を選ぶことが、法律を守り、円滑に外国人雇用を進めるための鍵となります。
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行政書士法人35
代表行政書士 萩台 紘史
2021年4月 SANGO行政書士事務所を開業
2023年9月 法人化に伴い「行政書士法人35」を設立
外国人の就労ビザ申請に専門特化した事務所として年間350件超の就労ビザ申請をサポート