高度専門職1号ロとは?文系職のポイント計算を行政書士が解説|技人国ビザとの違い
「海外営業やマーケティングでキャリアを積んできたが、自分の経歴で高度専門職になれるのだろうか」
「MBAも取得したが、ポイント計算でどう評価されるのかわからない」
日本のグローバル企業で活躍するコンサルタントや法務・人事担当者、またそうした人材の採用を考える経営者の方は、このような課題をお持ちではないでしょうか。
結論として、「高度専門職1号ロ」は、人文科学・社会科学分野の専門知識を活かす、優秀な文系専門職(ビジネス・プロフェッショナル)のための特別な在留資格です。
ポイント計算で70点以上を獲得すれば、永住権取得までの期間が大幅に短縮されるなど、多くの優遇措置を受けられます。
この記事では、就労ビザ専門の行政書士が、「高度専門職1号ロ」の対象者から、最重要であるポイント計算の方法、そして申請手続きまでを、文系職のキャリアに特化して分かりやすく解説します。
ご自身の市場価値がビザにどう反映されるか、ぜひ最後までご確認ください。
まず結論!高度専門職1号ロはグローバル文系専門職のための優遇ビザ
高度専門職ビザは、日本の経済や文化の発展に貢献する優秀な外国人材を積極的に受け入れるための制度です。
その中でも「1号ロ」は、特に人文・社会科学系の分野で活躍するプロフェッショナルを対象としています。
1. 対象者は誰?「1号ロ」と「1号イ(理系)」の決定的な違い
高度専門職1号は、活動内容によって「イ」と「ロ」に大別されます。その違いは非常に明確です。
- 高度専門職1号イ:理系分野の研究者・エンジニアなどが対象。(例:IT技術者、メーカーの研究開発職)
- 高度専門職1号ロ:文系分野の専門知識を活かす職種が対象。(例:コンサルタント、法務、海外営業)
ご自身の専門分野が理系か文系かで、どちらを目指すべきかが決まります。
2. あなたの仕事は該当する?「1号ロ」の具体的な職種例
「1号ロ」は、大学などで得た人文科学・社会科学系の知識を必要とする業務が広く対象となります。
一般的には、現在の在留資格が「技術・人文知識・国際業務」の方が主な対象者です。
具体的には、以下のような職種が挙げられます。
- コンサルティングファームの経営コンサルタント
- 企業の法務、人事、経理、マーケティング担当者
- 商社やメーカーの海外営業、貿易実務担当者
- 語学学校の教師、通訳・翻訳者
3. 経営戦略としての「1号ロ」人材獲得
グローバル市場で勝ち抜くために、「1号ロ」に該当する文系高度人材の確保は極めて重要な経営戦略です。
彼らは、法務や会計といった専門知識だけでなく、異文化理解力や高度な語学力を兼ね備えています。
こうした人材がビザの心配なく長期的に活躍できる環境を整えることは、企業の海外展開や多様性推進を加速させます。
従業員の高度専門職化を支援することは、優秀なグローバル人材を惹きつける強力なアピールとなるでしょう。
70点以上で得られる!高度専門職ビザの7つのメリット(優遇措置)
ポイント計算で70点以上をクリアすると、通常の就労ビザにはない、7つのメリット(優遇措置)が適用されます。
これらの優遇措置が、日本でのキャリアを安定させる大きな魅力となります。
1. 在留期間が一律「5年」に
高度専門職1号の在留期間は、法律で一律「5年」と定められています。
1年や3年ごとの更新手続きの負担がなくなり、腰を据えて仕事に集中できます。
2. 永住許可申請までの期間が最短1年に
通常10年必要な永住申請までの期間が、70点以上で3年、80点以上ならわずか1年に短縮されます。
これは、高度専門職ビザを目指す最大の動機の一つです。
3. 関連事業の経営が認められる
本業と関連性があれば、個人事業主として活動したり、会社を設立して経営したりすることも可能です。
例えば、経営コンサルタントが、自身の専門分野でセミナー事業を始めるといった活動ができます。
4. 配偶者の就労が実質的に自由化される
配偶者は、学歴や職歴といった厳しい要件なしに、フルタイムで働くことが可能になります。
世帯収入の安定や、配偶者自身のキャリア形成にとって非常に大きなメリットです。
5. 親の帯同が一定条件で可能に
世帯年収800万円以上などの条件を満たせば、7歳未満の子の養育などを目的に、本人または配偶者の親と日本で同居できます。
6. 家事使用人の帯同が一定条件で可能に
世帯年収1,000万円以上などの条件を満たせば、外国から家事使用人を1名雇用することが認められます。
7. 入国・在留手続きが優先処理される
ビザの申請や更新手続きが、他の在留資格よりもスピーディーに処理されます。
【最重要】あなたのキャリアを点数化!「1号ロ」ポイント計算ガイド
「学歴」「職歴」「年収」「年齢」の基本項目と、特別な実績に応じた「加算項目」の合計で70点を目指します。
1. ポイント計算の大前提と「70点」の合格ライン
ポイントの合計が「70点」に達していることが、許可を得るための絶対条件です。
1点でも足りなければ許可されません。各項目を正確に評価し、証明書類を準備することが重要です。
2. 基本項目①:学歴(大学卒業で10点、MBA等で5点加算)
最終学歴に応じてポイントが付与されます。「1号ロ」では専門職学位も評価されます。
- 博士号:30点
- 修士号:20点
- 大学卒業:10点
- 経営管理修士(MBA)など専門職学位:5点加算
3. 基本項目②:職歴(実務経験10年以上で25点)
「1号ロ」の対象となる業務(人文・社会科学分野)に関する実務経験の年数です。
- 10年以上:25点
- 7年以上:20点
- 5年以上:15点
- 3年以上:10点
4. 基本項目③:年収(300万円以上が最低条件)
年収は、高度な専門性を評価する重要な指標です。
年齢別の基準はなく、最低でも300万円以上の年収が必要となります。
年収が高いほどポイントも高くなります。(例:年収500万円以上で15点、1,000万円以上で40点)
5. 基本項目④:年齢(29歳以下で15点のボーナス)
申請時の年齢が若いほど、将来性が評価されポイントが高くなります。
- 29歳以下:15点
- 34歳以下:10点
- 39歳以下:5点
6. 加算項目:「1号ロ」特有のボーナスポイントでスコアアップ
基本項目以外にも、様々なボーナスポイントが用意されています。
①経営管理修士(MBA)などの専門職学位
学歴の5点加算とは別に、「従事しようとする業務」に関連する分野の専門職学位(MBAなど)を保有している場合、さらに5点が加算されます。
②日本語能力(JLPT N1など)
日本語能力試験N1取得者や、外国の大学で日本語を専攻した方は15点が加算されます。
③出身大学が指定ランキング上位校
法務省が指定する3つの世界大学ランキングのいずれかで上位にランクインする大学の卒業者は10点が加算されます。
④勤務先が中小企業である
日本の「中小企業基本法」に定められた中小企業に勤務する場合、10点が加算されます。
⑤関連する日本の国家資格(中小企業診断士など)
中小企業診断士や社会保険労務士など、従事する業務に関連する日本の国家資格を保有している場合、5点または10点が加算されます。
⑥投資運用業等に関する実績
投資運用業などで、一定水準以上の運用実績をあげたことがある場合、最大50点の加算があります。
申請から許可まで!高度専門職「1号ロ」への変更 4つのステップ
ポイント計算で70点以上をクリアできる見通しが立ったら、具体的な申請手続きに進みます。
現在お持ちの「技術・人文知識・国際業務」ビザなどからの変更は、主に4つのステップで進みます。
1. ポイント計算の証明書類を準備する
ご自身の経歴を証明する公的な書類(卒業証明書、在職証明書など)を収集します。
これらは、ポイント計算表の各項目が事実であることを裏付ける、最も重要な証拠となります。
2. 在留資格変更許可申請書を作成する
出入国在留管理庁のウェブサイトから申請書とポイント計算表の様式をダウンロードし、必要事項を正確に記入します。
3. 地方出入国在留管理庁へ申請する
完成した申請書類一式を、住所地を管轄する地方出入国在留管理庁の窓口に提出します。申請は本人が行うのが原則ですが、行政書士による代理申請も認められています。
4. 審査を経て新しい在留カードを受領する
申請が受理されると、1か月から3か月程度の審査が行われます。
無事に許可通知を受け取ったら、手数料(4,000円)を支払い、新しい「高度専門職」の在留カードを受け取ります。
これだけは揃えたい!「1号ロ」申請の必要書類チェックリスト
申請の際には、ポイントを証明するための書類を漏れなく揃えることが重要です。
証明できなければ、その項目は0点として扱われてしまいます。
1. 申請者全員が必要な基本書類
まず、全員が提出する基本的な書類です。
- 在留資格変更許可申請書、ポイント計算表
- 証明写真
- パスポート及び在留カード
2. ポイント計算の根拠となる証明書類(学歴、職歴、年収など)
各ポイントを客観的に証明するための資料です。
- 学歴:大学の卒業証明書、MBAなどの学位証明書のコピー
- 職歴:これまでの勤務先が発行した、具体的な職務内容が記載された在職証明書
- 年収:住民税の課税証明書・納税証明書
3. ボーナスポイントを証明するための追加資料
加算を希望するボーナスポイントの証明資料です。
- 日本語能力:日本語能力試験(JLPT)N1の合格証明書
- 出身大学:大学ランキングのウェブサイトの写しなど
高度専門職1号ロに関するよくある質問
ここでは、「1号ロ」を目指す方からよくいただく質問にお答えします。
Q. 「技術・人文知識・国際業務」ビザとの違いは何ですか?
A. 活動内容の範囲は重なりますが、受けられる優遇措置が全く異なります。
「技術・人文知識・国際業務」ビザには、永住権の緩和や親の帯同といったメリットはありません。「高度専門職1号ロ」は、その中でも特に優秀な人材であると国から認められた者に与えられる、特別な資格と位置づけられています。
Q. 転職した場合、ポイントはどうなりますか?
A. 転職先の業務内容が「1号ロ」の範囲内であれば、資格を維持できます。
ただし、6か月以内に新たな職場で在留資格の変更申請を行い、再度ポイント計算で70点以上をクリアする必要があります。年収が下がったり、業務内容が変わったりする場合は特に注意が必要です。
Q. 営業職ですが、職歴の証明はどのようにすれば良いですか?
A. 在職証明書に、具体的な業務内容を記載してもらうことが重要です。
例えば、「海外営業担当として、主に東南アジア市場の新規開拓に従事。年間契約額〇〇ドルを達成」というように、専門性や実績がわかる形で記述してもらうと、審査で評価されやすくなります。
まとめ:文系専門職こそ高度専門職を。キャリアの可能性を広げよう
今回は、コンサルタントや海外営業など、グローバルに活躍する文系専門職のための「高度専門職1号ロ」について解説しました。
ご自身のキャリアをポイントで客観的に評価し、合計70点を超えるのであれば、この特別なビザの取得を目指すべきです。
日本でのキャリアと生活の基盤をより強固なものにし、さらなる活躍の可能性を広げることができます。
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行政書士法人35
代表行政書士 萩台 紘史
2021年4月 SANGO行政書士事務所を開業
2023年9月 法人化に伴い「行政書士法人35」を設立
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