カテゴリー1のメリットは?就労ビザ申請時に優遇される企業|概要や要件等を徹底解説!
外国人を雇用する企業にとって、ビザの申請・更新手続きは時間と労力がかかる大きな負担です。しかし、企業の信頼度に応じて手続きが大幅に簡略化される「カテゴリー制度」があることはご存知でしょうか。
特に最上位の「カテゴリー1」に認定されると、提出書類の削減や審査期間の短縮など、大きなメリットがあります。
この記事では、ビザ申請のカテゴリー制度の基本から、多くの中小企業がカテゴリー1を目指すための具体的な方法、特に「一定の条件を満たす企業」として認められるための各種認定制度について、専門家が解説します。
目次
就労ビザ申請におけるカテゴリー制度の基本
まず、ビザ申請の効率化を考える上で不可欠な、所属機関(企業)のカテゴリー制度について、その仕組みとメリットを解説します。
1. カテゴリー1〜4の区分とは?企業の信頼度を示す指標
出入国在留管理庁は、外国人を雇用する企業を、その規模や信頼性に応じて4つのカテゴリーに分類しています。これは、企業の信頼度が高いほど、提出書類を簡略化し、審査を効率化するための制度です。
- カテゴリー1:日本の証券取引所に上場している企業など、特に信頼性が高いと認められる企業。
- カテゴリー2:前年の法定調書合計表の源泉徴収税額が1,000万円以上の企業。
- カテゴリー3:前年の法定調書合計表を提出した、カテゴリー2以外の企業。
- カテゴリー4:上記のいずれにも該当しない、新規設立の法人や個人事業主など。
2. 自社のカテゴリーの確認方法(法定調書合計表を見る)
自社がカテゴリー2または3に該当するかは、前年分の「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」を確認することで判断できます。この書類の「源泉徴収税額」の欄が1,000万円以上であればカテゴリー2、それ以外であればカテゴリー3となります。
3. カテゴリー1が持つ大きなメリット
カテゴリー1に認定されると、ビザ申請において他のカテゴリーとは比較にならないほどの優遇措置を受けられます。
メリット1:提出書類の大幅な削減(決算書等が不要に)
最大のメリットは、提出書類が大幅に削減される点です。通常カテゴリー3や4で求められる決算報告書の写しや、法定調書合計表の写しといった、会社の経営状況を示す書類の提出が一切不要になります。これにより、書類準備の負担が劇的に軽減されます。
メリット2:審査期間の短縮
提出書類が少なく、企業の信頼性も担保されているため、入管の審査期間が短縮される傾向にあります。これにより、外国籍従業員の入社や在留期間の更新を、よりスムーズに進められます。
メリット3:企業の社会的信用の向上
カテゴリー1であることは、入管から「特に信頼性の高い優良企業」と認められている証です。これは、企業のブランディングや、今後の外国人材採用においても大きなアピールポイントとなります。
カテゴリー1に該当するための4つのルート
では、どうすれば最上位のカテゴリー1になれるのでしょうか。その方法は、大きく分けて4つあります。
1. ルートA:日本の証券取引所に上場する
東京証券取引所などに上場している企業は、自動的にカテゴリー1と認められます。
2. ルートB:保険業を営む相互会社である
保険業法に基づき設立された相互会社も、カテゴリー1の対象です。
3. ルートC:国または地方公共団体である
日本の国や、都道府県、市区町村などの地方公共団体も、カテゴリー1に分類されます。
4. ルートD:「一定の条件を満たす企業」として認められる
上場企業や公的機関でなくても、厚生労働省などが管轄する特定の認定制度を受けている企業は、「一定の条件を満たす企業」としてカテゴリー1に該当します。
「一定の条件を満たす企業」になるための各種認定制度
ここでは、多くの中小企業がカテゴリー1を目指す上で鍵となる、具体的な認定制度を解説します。これらの認定は、働きやすい職場環境づくりの証でもあります。
1. 若者の採用・育成を促進する「ユースエール認定制度」
若者の採用や育成に積極的で、雇用管理が優良な中小企業を厚生労働大臣が認定する制度です。
認定基準の概要(新卒者の離職率、有給休暇取得実績など)
「新卒者の離職率が20%以下」「月間の平均所定外労働時間が20時間以下」「有給休暇の年間取得日数が平均10日以上」など、若者が働きやすい環境に関する複数の基準を満たす必要があります。
2. 女性の活躍を推進する「えるぼし認定・プラチナえるぼし認定制度」
女性の活躍推進に関する状況が優良な企業を認定する制度です。評価項目(採用、継続就業、労働時間、管理職比率、多様なキャリアコース)の達成状況に応じて、3段階の「えるぼし認定」、さらにその上の「プラチナえるぼし認定」があります。
3. 子育てサポート企業を示す「くるみん認定・プラチナくるみん認定制度」
従業員の子育てサポートに積極的に取り組んでいる企業を認定する制度です。「男性の育児休業等取得率が10%以上」「女性の育児休業等取得率が75%以上」などの基準があり、より高い水準を満たすと「プラチナくるみん認定」が受けられます。
4. 従業員の健康管理を経営的に実践する「健康経営優良法人認定制度」
地域の健康課題に即した取り組みや日本健康会議が進める健康増進の施策に基づき、特に優良な健康経営を実践している法人を顕彰する制度です。大規模法人部門の上位500社は「ホワイト500」、中小規模法人部門の上位500社は「ブライト500」として認定されます。
5. 安全で健康に働ける職場を示す「安全衛生優良企業認定(ホワイトマーク)」
労働者の安全や健康を確保する対策に積極的に取り組み、高い安全衛生水準を維持・改善している企業を厚生労働省が認定する制度です。通称「ホワイトマーク」とも呼ばれます。
課題別|自社に合った認定制度の選び方
どの認定制度を目指すべきか、企業の課題や理念に合わせて検討することが重要です。
ケース1:若手人材の採用と定着を強化したい場合 → ユースエール認定
若者の採用ブランディングを強化し、新卒・第二新卒の定着率を高めたい中小企業には、ユースエール認定が最適です。
ケース2:女性従業員が多く、働きやすい環境をアピールしたい場合 → えるぼし認定
女性の管理職登用や、性別に関わらずキャリアを継続できる職場環境を目指す企業には、えるぼし認定がおすすめです。
ケース3:育児中の従業員を支援し、企業のイメージアップを図りたい場合 → くるみん認定
男性の育休取得促進など、次世代育成支援に力を入れている企業は、くるみん認定が企業の姿勢を示す強力なアピールになります。
ケース4:従業員の健康と生産性向上を両立させたい場合 → 健康経営優良法人
従業員の心身の健康を資本と捉え、生産性の向上を目指す全ての企業にとって、健康経営優良法人の認定は有効な目標となります。
認定取得とカテゴリー1適用の注意点
認定制度の活用には、いくつか知っておくべき注意点があります。
1. 認定の取得には相応の準備期間が必要
各認定制度にはクリアすべき具体的な基準(離職率や有給取得率など)があり、その実績を作るためには相応の時間が必要です。思い立ってすぐに取得できるものではなく、中長期的な計画で取り組む必要があります。
2. 認定には有効期限があり、更新が必要な場合がある
多くの認定制度には有効期限が設けられており、継続して優良な状態を維持し、更新手続きをおこなう必要があります。一度取得すれば永続的にカテゴリー1というわけではありません。
3. 認定取得後、自動的にカテゴリー1になるわけではない
認定を取得した後、ビザ申請の際に自社が「一定の条件を満たす企業」であることを、認定書の写しなどを提出して証明する必要があります。入管がその事実を確認して初めて、カテゴリー1として扱われます。
カテゴリー制度に関するQ&A
カテゴリー制度に関して、よく寄せられる質問にお答えします。
Q1. カテゴリー2や3との具体的な違いは何ですか?
最大のメリットは、提出書類の差です。カテゴリー1では決算書や法定調書合計表が不要ですが、カテゴリー2では決算書が、カテゴリー3ではその両方が必要となります。この違いが、申請準備の手間を大きく左右します。
Q2. 前年の源泉徴収税額が1,000万円以上あればカテゴリー2ですか?
はい、その通りです。税務署へ提出した「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」の源泉徴収税額が1,000万円以上であれば、その企業はカテゴリー2に分類されます。
Q3. 認定を取得すれば、必ずビザが許可されますか?
いいえ、それは違います。カテゴリー1であることは、あくまで申請手続きが簡略化されるというメリットであり、ビザの許可自体を保証するものではありません。申請者本人の学歴や職歴、従事する業務内容などの審査は、通常通り厳格におこなわれます。
まとめ:認定取得はビザ申請の効率化と企業価値向上の両立
ビザ申請におけるカテゴリー制度と、最上位であるカテゴリー1を目指すための方法を解説しました。最後に、重要なポイントを振り返ります。
1. カテゴリー1になれば、ビザ申請の負担が劇的に軽減される
提出書類の削減と審査の迅速化は、外国人を継続的に雇用する企業にとって非常に大きなメリットです。
2. 上場企業でなくても「一定の条件を満たす企業」としてカテゴリー1を目指せる
多くの中小企業にとって、各種認定制度の取得が、カテゴリー1への現実的な道筋となります。
3. 鍵となるのが、ユースエールやプラチナくるみん等の各種認定制度
これらの認定は、ビザ申請のためだけでなく、働きやすい職場環境の証でもあります。
4. 認定取得は、企業のブランディングや人材採用にも繋がる戦略的な取り組み
認定取得を目指すプロセスは、企業の経営体質を改善し、社会的信用を高めることで、結果として優秀な人材(日本人を含む)の確保にも繋がる、価値ある投資です。
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行政書士法人35
代表行政書士 萩台 紘史
2021年4月 SANGO行政書士事務所を開業
2023年9月 法人化に伴い「行政書士法人35」を設立
外国人の就労ビザ申請に専門特化した事務所として年間350件超の就労ビザ申請をサポート