【技能ビザ】ソムリエを採用するための方法について|採用要件と申請手続きを専門家が解説
「店のサービスを一流にするため、海外から経験豊富なソムリエを呼びたい」。そう考えるレストランやホテル経営者様にとって、「技能ビザ」の要件は複雑に感じるかもしれません。調理師とは異なる、ソムリエならではの採用基準があるからです。
この記事では、ソムリエを技能ビザで採用するための具体的な要件を、専門家が分かりやすく解説します。
本人に求められる経歴から、受け入れ店舗に必要な条件まで、この記事を読めば、ソムリエ採用の全貌が明確になります。
目次
ソムリエの技能ビザ|採用に求められる3つの要件
ソムリエを技能ビザで日本に呼ぶためには、本人に求められる3つの重要な要件があります。採用したい候補者がこれらの基準を満たしているか、事前に確認することが不可欠です。
1. 5年以上の実務経験
ソムリエとして、5年以上の実務経験が必要です。これは、ワインの選定、仕入れ、品質管理、顧客へのサービスといった、ソムリエとしての専門業務に従事していた期間を指します。
この経験は、過去の勤務先が発行する「在職証明書」によって客観的に証明しなくてはなりません。調理師の技能ビザで求められる「10年」よりは短いですが、専門職としての経験が厳しく審査されます。
2. ワイン以外の酒類に関する知識
審査では、ワインに関する深い知識だけでなく、その他の酒類や飲料全般に関する知識も有していることが求められます。
これは、レストラン等において、提供する料理とのペアリングを考えたり、顧客の多様な要望に応えたりするためには、ワイン以外の知識も不可欠とされるからです。カクテルや日本酒、チーズなど、幅広い知識を持つ人材が評価されます。
3. 国際的な資格やコンクール受賞歴(※必須ではないが重要)
法律上の必須要件ではありませんが、国際的に権威のあるソムリエ資格や、著名なコンクールでの受賞歴は、審査において非常に有利に働きます。
例えば「A.S.I.国際ソムリエ協会」が認定する資格などが挙げられます。これらの実績は、本人の技能レベルを客観的に証明する強力な証拠となり、実務経験の証明を補強する役割を果たします。
調理師の技能ビザとの違い
「ソムリエ」と「調理師」は、どちらも技能ビザの対象ですが、求められる要件に明確な違いがあります。この違いを理解しておくことで、採用計画を正しく立てることができます。
1. 実務経験年数(ソムリエは5年、調理師は原則10年)
最も大きな違いは、求められる実務経験年数です。ソムリエは5年以上であるのに対し、調理師は原則として10年以上(タイ料理人などの例外を除く)が必要です。
サービスのプロであるソムリエと、調理技術のプロである調理師では、熟練に要する期間の考え方が異なると言えるでしょう。
2. 求められる資格や実績の性質
調理師の場合、実務経験そのものが重視され、特定の資格が必須となるケースは少ないです。一方、ソムリエの場合は、前述の通り、国際的な資格や受賞歴が技能レベルを証明する上で大きな意味を持ちます。
申請においては、候補者が持つ資格や実績が、いかにその専門性を高めているかをアピールすることが重要になります。
受け入れ店舗側に求められる3つの条件
ソムリエ本人だけでなく、受け入れる日本の店舗側にも、ソムリエを雇用するにふさわしい環境が整っているかが審査されます。以下の3つの条件を満たしているか確認しましょう。
1. 本格的なワインサービスを提供する店舗であること
ワインの提供を重要なサービスとしている、本格的なレストランやバーなどである必要があります。一般的な居酒屋やファミリーレストランなどでは、専門家であるソムリエの技能を活かす場がないと判断されてしまいます。
店舗のコンセプトや格付け、メニュー構成などから、専門性が判断されます。
2. ワインセラー等の設備と充実したワインリスト
ソムリエがその能力を十分に発揮できる設備が整っていることも重要です。具体的には、ワインを適切な状態で保管するためのワインセラーや、多様な顧客の要望に応えられるだけの充実したワインリストが挙げられます。
申請時には、これらの設備の写真やワインリストを提出し、受け入れ態勢が万全であることを示す必要があります。
3. 日本人ソムリエと同等額以上の報酬
調理師の場合と同様に、同じ店舗で働く日本人ソムリエがいる場合、その日本人と同等額以上の給与を支払わなくてはなりません。
これは、外国人であることを理由とする不当な搾取を防ぐためのルールです。雇用契約書に記載する給与額は、日本のソムリエの給与水準を参考に、妥当な金額を設定する必要があります。
申請からソムリエ来日までの4ステップ
海外にいるソムリエを日本に呼び寄せるには、「在留資格認定証明書」を日本で先に取得し、その後本人が自国でビザ申請をおこないます。ここでは、その手続きの流れを4ステップで解説します。
- ステップ1:雇用契約の締結
採用するソムリエを決定し、給与や勤務時間、業務内容などを明記した雇用契約を締結します。この契約書はビザ申請の根幹となる書類です。 - ステップ2:必要書類の準備
経営者側は会社の登記簿謄本や決算書、店舗の写真やワインリストなどを用意します。ソムリエ本人には、経歴書や在職証明書、資格証明書などを準備してもらいます。 - ステップ3:日本の入管へ「在留資格認定証明書」を申請
全ての書類が揃ったら、日本の出入国在留管理局へ「在留資格認定証明書交付申請」をおこないます。審査には通常1ヶ月から3ヶ月ほどかかります。 - ステップ4:現地日本大使館でビザ取得、来日
証明書が交付されたら、それを本人に送り、本人が自国の日本大使館等でビザ(査証)を受け取ります。その後、そのビザで日本へ入国するという流れです。
ソムリエの技能ビザ申請に関するQ&A
ソムリエの技能ビザについて、経営者の皆様からよくいただく質問にお答えします。
Q1. 申請にワインの資格は絶対に必要ですか?
いいえ、必須ではありません。しかし、5年間の実務経験を客観的に証明するのは時に困難です。国際的に認知された資格は、その技能レベルを証明する強力な補強材料となり、審査を有利に進める上で非常に役立ちます。
Q2. レストランでの接客経験も実務経験に含まれますか?
一般的なホールスタッフとしての接客経験は、実務経験には含まれません。あくまで、ワインの専門家(ソムリエ)として、仕入れや品質管理、顧客への提案といった専門業務に従事していた期間が対象となります。
Q3. 申請から来日まで、どのくらいの期間がかかりますか?
書類の準備から入管の審査、現地でのビザ発給まで、全体で3ヶ月から半年程度を見ておくのが一般的です。採用計画は、この期間を考慮して余裕をもって進めることをお勧めします。
まとめ:ソムリエの技能ビザは要件理解が鍵。専門家と確実な採用を
海外から優秀なソムリエを呼び寄せる技能ビザは、調理師とは異なる専門的な要件が求められます。最後に、この記事の重要なポイントをまとめます。
1. ソムリエの技能ビザには「5年以上の実務経験」が必要
調理師の原則10年とは異なり、ソムリエは5年以上の実務経験が基本要件です。この年数を在職証明書で正確に立証することが第一歩となります。
2. 資格や受賞歴は、ソムリエとしての技能を客観的に示す上で有利に働く
必須ではないものの、国際的な資格やコンクールでの実績は、本人の高い専門性を証明する客観的な証拠として、審査で高く評価されます。
3. 受け入れ店舗の専門性や設備も重要な審査ポイントとなる
ソムリエ本人の経歴だけでなく、その技能を存分に発揮できるだけの本格的な店舗環境(ワインリスト、セラーなど)が整っているかも厳しく見られます。
4. 複雑な要件の確認と申請は、ビザ専門家である就労ビザ東京ドットコムに任せるのが最善策
ソムリエの技能ビザ申請は、独自のポイントが多く専門的な判断が不可欠です。不許可リスクを避け、確実な採用を実現するためには、ビザ専門の行政書士に相談することが最も賢明な選択です。
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行政書士法人35
代表行政書士 萩台 紘史
2021年4月 SANGO行政書士事務所を開業
2023年9月 法人化に伴い「行政書士法人35」を設立
外国人の就労ビザ申請に専門特化した事務所として年間350件超の就労ビザ申請をサポート