【特定活動12号】サマージョブビザとは?外国人学生の夏休みインターンシップについて
夏休みに日本の企業で実践的な経験を積みたい海外の学生と、グローバル人材に自社の魅力を伝えたい企業。双方のニーズに応えるのが、「特定活動12号」、通称「サマージョブビザ」です。
この制度は、海外の大学生が夏休みなどの長期休暇を利用し、日本の企業で報酬を受け取りながらインターンシップに参加するために設けられています。本記事では、就労ビザの専門家が、学生と企業の双方の視点から、特定活動12号ビザの基本ルール、申請手続き、成功のポイントを分かりやすく解説します。
結論:海外の大学生が夏休みに日本で働くためのビザ
特定活動12号ビザとは、海外の大学生が学業の一環として、日本の企業で報酬を得ながら従事するための在留資格です。
日本の大学に在籍する留学生のアルバイトとはルールが全く異なり、このビザによって、海外の学生は合法的に日本で働きながら学ぶ機会を得られます。
制度の目的は「学生のキャリア形成」
この制度の目的は、あくまで学生の「教育」と「キャリア形成」です。単なる労働力の確保や観光目的の滞在とは明確に区別されます。
学生にとっては専攻分野の知識を実践で深める絶好の機会となり、企業にとっては未来のグローバル人材を発掘・育成する場となります。そのため、申請時には活動内容がこの目的に沿っていることを明確に示す必要があります。
【重要】通常のアルバイトや無給インターンシップとの3つの違い
特定活動12号を理解する上で、通常のアルバイトや無給インターンシップとの主な違いは以下の3点です。
違い①:報酬の有無
特定活動12号では、企業から報酬を受け取ることが前提です。これは、学生が生活費の心配なく研修に集中できるようにするためです。報酬を伴わない無給インターンシップは、このビザの対象外となり、別の在留資格(短期滞在など)を検討する必要があります。
違い②:活動期間
活動期間は、原則として「3ヶ月以内」と定められています。夏休みや冬休みといった大学の長期休暇中の活動が想定されており、日本の留学生のように学業と並行して長期間働くことはできません。
違い③:活動目的
最大のポイントは、活動目的が「学業に関連した実務研修」である点です。日本の留学生の資格外活動(アルバイト)のように職種に制限がなく、単純労働も可能というわけではありません。学生の専攻と従事する内容に、明確な関連性が求められます。
【学生・企業必見】特定活動12号ビザ 対象となる3つの重要要件
ビザを取得するには、学生・企業・活動内容のそれぞれが以下の要件を満たす必要があります。申請前に必ず確認しましょう。
【学生側の要件】大学での学業が前提
対象は外国の大学に在学中の学生(休学中は不可)
このビザの対象は、外国の大学(短期大学を除く)に在学中の学生のみです。すでに卒業した方や休学中の方は対象になりません。「在学中」であることが絶対条件です。
履修内容とインターンシップ内容の関連性
大学での専攻や履修内容と、日本で行うインターンシップの業務内容に関連性があることが求められます。例えば、情報工学を専攻する学生がIT企業でプログラミングの研修を行う、といったケースです。専攻と全く関連のない業務は認められません。
【企業側の要件】受入れ体制と労働条件
学生への指導体制が整っていること
企業は、学生を単なる労働者としてではなく、研修生として指導・監督する体制を整える必要があります。指導担当者や研修プログラムを明確にしなくてはなりません。
日本人と同等額以上の報酬を支払うこと
報酬は、同じ業務に従事する日本人の従業員と同等額以上でなければなりません。外国人学生であることを理由に不当に低い賃金を設定することは、国籍による差別を防ぐ観点から固く禁じられています。
【活動内容の要件】期間は3ヶ月以内、かつ実務研修であること
活動期間は、大学の長期休暇を利用した3ヶ月以内のものに限られます。また、その内容は誰にでもできる単純作業ではなく、学生の専攻を活かした専門的な知識やスキルを要する「実務研修」でなくてはなりません。
申請から来日までの完全ロードマップ|特定活動12号ビザ手続きの4ステップ
要件を確認したら、次は申請手続きです。学生と企業が連携して進める必要があります。ここでは、全体の流れを4ステップで解説します。
【ステップ1】受入れ企業を探し、雇用契約を締結する
まず学生は、日本でサマージョブを受け入れる企業を探し、内定を得る必要があります。そして企業と学生の間で、業務内容、期間、報酬などを定めた雇用契約書(またはそれに準ずる書類)を交わします。この契約書が、後のビザ申請の根幹となります。
【ステップ2】日本国内で在留資格認定証明書(COE)を申請する
次に、受入れ企業が日本の出入国在留管理局に対し、「在留資格認定証明書(COE)」の交付を申請します。これは、受入れに先立ち「この学生は日本でサマージョブを行う要件を満たしている」という法務省の事前証明を受ける手続きです。審査には1か月から3か月程度かかるため、企業は早めに準備を進める必要があります。
【ステップ3】学生の母国でビザ(査証)を申請・取得する
COEが交付されたら、企業はそれを学生本人に国際郵便などで送付します。学生は、受け取ったCOEとパスポートなどを持参し、自国にある日本大使館や総領事館でビザ(査証)を申請します。通常、1週間から2週間ほどで発給されます。
【ステップ4】ビザを持って日本へ入国、サマージョブ開始
ビザが発給されたパスポートを携行し、日本へ入国します。空港の入国審査で上陸許可を受けると、在留資格「特定活動」が付与され、サマージョブを開始できます。このロードマップを念頭に、計画的に準備を進めましょう。
【コピーして使える】学生・企業別の必要書類チェックリスト
ビザ申請をスムーズに進める鍵は、書類の不備をなくすことです。ここでは、学生側と企業側で準備すべき主な書類をリストアップしました。
学生が準備する必要書類
主に学生自身が大学などから取り寄せる書類です。
- 在学証明書: 現在、大学に在学中であることを証明する公式書類。
- 大学からの証明文書: インターンシップが単位取得の一環である、または学業に関連することを大学が証明する文書(推薦状など)。
- パスポートのコピー、写真: 有効なパスポートのコピーと、規定サイズの証明写真。
受入れ企業が準備する必要書類
主に受入れ企業が作成・準備する書類です。
- 在留資格認定証明書交付申請書: 出入国在留管理局の公式サイトからダウンロードできる申請フォーム。
- 受入れ理由書、滞在日程表: 学生の受入れ理由や研修スケジュールを説明する書類。
- 雇用契約書の写し: 学生と交わした契約書のコピー。報酬額や業務内容の明記が必須。
- 企業の登記事項証明書、決算書など: 企業の規模や安定性を示す公的書類。
【採用担当者向け】審査を有利に進める「受入れ計画書」作成3つのポイント
審査を通過し、学生にとって有意義な研修にするには、企業が作成する「受入れ計画書(理由書)」の内容が極めて重要です。ここでは、審査官の視点を踏まえた計画書作成のポイントを3つ解説します。
ポイント①:研修内容の具体性|「誰が、いつ、どこで、何を、どのように」教えるか
「営業に同行」「プログラミングを補助」といった曖昧な記述は避けましょう。「〇〇部の△△課長が、毎週月曜の午前中に本社で、顧客データ分析ツールの使い方をOJT形式で指導する」のように、5W1Hを意識して具体的に記述することが重要です。これにより、単なる労働ではなく「研修」であることが明確になります。
ポイント②:指導・サポート体制の明確化|指導担当者と相談窓口を必ず設定
業務を教える指導担当者(メンター)と、生活面や業務上の悩みを相談できる担当者をそれぞれ明記しましょう。これにより、企業として学生をサポートする体制が整っていることをアピールでき、審査での信頼性が高まります。学生本人にとっても、安心して日本での生活をスタートできるというメリットがあります。
ポイント③:待遇の適正な記載|住居や保険にも触れると万全
報酬額が日本人と同等以上であることを明確に示すのはもちろん、住居のサポート(社員寮の提供や家賃補助など)や、労働保険(労災保険)への加入について記載すると、非常に高く評価されます。企業のコンプライアンス意識の高さを示すと同時に、学生の生活基盤を安定させるという観点からも、審査において好印象を与えます。
特定活動12号ビザに関するよくある質問(Q&A)
最後に、特定活動12号ビザについてよく寄せられる質問にお答えします。
Q1. いつ頃から準備を始めればいいですか?
理想はインターンシップ開始の半年前です。企業探しや選考に加え、ビザ申請(特にCOEの審査)に1か月から3か月を要するためです。遅くとも、開始4か月前には企業から内定を得て、ビザ申請に入れる状態が望ましいでしょう。
Q2. インターンシップ終了後、そのまま日本で就職活動はできますか?
できません。このビザはインターンシップ活動に限定されています。在留期間が残っていても、終了後に就職活動を行うことは認められておらず、速やかに帰国する必要があります。日本での就職を希望する場合は、大学卒業後に改めて適切な就労ビザを申請してください。
Q3. 報酬は必ず支払う必要がありますか?無給ではダメですか?
はい、報酬の支払いは必須です。特定活動12号は「報酬を受ける活動」と定められているため、無給のインターンシップはこのビザの対象外です。無給の場合は「短期滞在」ビザなどで参加できるケースもありますが、活動内容に制限があるため、事前に専門家への確認をお勧めします。
Q4. 日本の大学に留学中の学生は対象になりますか?
いいえ、対象になりません。この制度は、あくまで「外国の大学」に在籍する学生のためのものです。日本の大学に在籍する留学生がインターンシップを行う場合は、現在保有する「留学」ビザと、それに付随する「資格外活動許可」の範囲で行うのが一般的です。
まとめ:計画的な準備で、学生と企業の双方に有益なサマージョブを実現しよう
本記事では、海外の大学生が夏休みなどを利用して日本で有給インターンシップを行うための「特定活動12号(サマージョブ)」ビザについて解説しました。
本記事の要点まとめ
サマージョブビザを成功させるための重要ポイントは以下の通りです。
- 学生、企業、活動内容のそれぞれに明確な要件がある。
- 手続きは「契約 → COE申請 → ビザ申請 → 入国」の順で進める。
- 企業が作成する「受入れ計画書」が審査の鍵を握る。
- インターンシップ開始の半年前には準備を始めるのが理想。
これらのポイントを押さえ、計画的に準備を進めることが成功への近道です。
複雑な手続きは、専門家への相談がスムーズです
手続きの進め方に不安がある、あるいは書類作成に時間を割けない担当者様は、ビザ申請の専門家にご相談ください。
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行政書士法人35
代表行政書士 萩台 紘史
2021年4月 SANGO行政書士事務所を開業
2023年9月 法人化に伴い「行政書士法人35」を設立
外国人の就労ビザ申請に専門特化した事務所として年間350件超の就労ビザ申請をサポート