個人事業主でも外国人雇用はできるのか?就労ビザ取得のポイントを解説
結論から断言します。個人事業主でも外国人を雇用することは十分に可能です。
「法人じゃないと難しいのでは…」「そもそも許可が下りないのでは…」そんな不安を感じる必要はもうありません。確かに法人とは違う準備が求められます。しかし、ビザ取得に必要な準備は「不可能な壁」ではなく「越えられるハードル」です。成功に必要な条件から具体的な手続き、そして揃えるべき書類の全てを分かりやすく解説。あなたの事業が次のステージへ進む確かな一歩を、この記事で踏み出しましょう。
目次
なぜ「できる」と言えるのか?個人事業主がビザ審査を通過する3つの要
個人事業主という理由だけで、外国人雇用の道が閉ざされることはありません。審査で本当に見られているのは、法人か個人かという形式ではなく、あなたの事業が信頼に足るものかという実態です。この本質を理解すれば、道は必ず開けます。外国人雇用を成功させるには、次の3つの「要(かなめ)」をしっかり押さえて証明することが許可への鍵となります。
要の1:【事業の証明】
あなたの事業が安定的かつ継続している事実を、客観的な書類で示しましょう。法人のように登記簿謄本がなくても、数年分の黒字を示す確定申告書や、継続的な取引先との契約書を揃えます。これらで「事業は確かに存在し、健全な経営状態にある」と証明できれば、審査の土台は万全です。
要の2:【雇用の証明】
次に「なぜ、その外国人が必要なのか」を合理的に説明します。あなたの事業内容と、採用したい外国人の持つ専門知識やスキルがいかに強く結びついているかを具体的に示してください。これが、「今回の外国人雇用は、事業の成長に不可欠な投資である」という強い説得力を生み出します。
要の3:【手続きの証明】
最後に、国が定めたルールを遵守する姿勢です。ビザ申請で必要な書類を漏れなく準備し、正しい様式で提出します。そして、雇用後も社会保険の手続きなどを誠実に行う。この一つひとつの丁寧な対応が、あなたが信頼できる雇用主であることの何よりの証左となるでしょう。
あなたに最適な方法が見つかる!外国人雇用の4つの実現パターン
外国人雇用と一口に言っても、その方法は一つではありません。採用したい方の状況によって、変わります。個人事業主であるあなたの事業計画や人材像に最も合った、最適なパターンを見つけることが成功への第一歩。ここでは、主な4つのパターンをご紹介します。
パターン1:【即戦力】就労制限のないビザを持つ外国人を採用する
最も手続きがシンプルなのが、すでに日本での活動に制限がない「永住者」や「日本人の配偶者等」のビザを持つ外国人を採用するパターンです。この場合、日本人を雇用するのと全く同じように、学歴や職種を問わず採用活動を行えます。ビザ取得のための複雑な手続きが不要なため、最も確実でスピーディーな方法と言えるでしょう。
パターン2:【経験者採用】すでに就労ビザで働く外国人を採用する
次に、他の企業で「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザを持って働く方を、転職者として採用するパターンです。あなたの事業で行ってもらう業務内容が、その方の現在のビザの範囲内であれば、比較的スムーズに雇用を進められます。ただし、職務内容が変わる場合は、後の更新で不利にならないための事前準備が重要になります。
パターン3:【ポテンシャル採用】留学生などを就労ビザに変更して採用する
日本の大学や専門学校で学んだ優秀な留学生も、有力な採用候補です。この場合、現在お持ちの「留学ビザ」から、就労を目的とした「技術・人文知識・国際業務」ビザなどへの変更手続きを行います。卒業後の将来性を見込み、事業と共に成長してくれる若い才能を確保できる点が魅力です。
パターン4:【海外から採用】海外在住の優秀な人材を日本へ呼び寄せる
まだ日本に住んでいない優秀な人材を、世界中から直接採用する方法もあります。この場合、まず個人事業主であるあなたが日本の出入国在留管理局へ「在留資格認定証明書」の交付申請を行うことから始まります。時間はかかりますが、国境を越えてあなたの事業に最適なスキルを持つ人材を探せるという大きなメリットがあります。
これをクリアすれば万全!外国人雇用を成功させる「5つの条件」
個人事業主の外国人雇用は、審査官に「この事業なら安心だ」と感じてもらうことがゴールです。そのために、これからご説明する5つの条件を、客観的な書類や事実で証明しなくてはいけません。一つひとつ着実にクリアすれば、ビザの許可はぐっと現実的になります。
条件1:事業の【安定性・継続性】
あなたの事業が安定しており、今後も継続していくことを示します。具体的には、数年分の黒字を計上している確定申告書や、将来の明確な収益見込みを立てた事業計画書が有効です。「この事業主なら、安心して外国人を任せられる」という本質的な信頼に繋がります。
条件2:事業の【実在性】
次に、事業がバーチャルなものでなく、確かに存在していることを物理的に証明します。自宅とは別の独立した事務所を構え、その賃貸借契約書を提出できれば、説得力が格段に増します。また、事業内容を詳細に記したWebサイトやパンフレットも、事業の実在性を補強する上で欠かせません。
条件3:外国人雇用の【必要性・合理性】
なぜ日本人ではなく、その外国人を採用するのか。この問いに「採用理由書」で明確に答えます。例えば「海外の特定国との取引拡大のため、その国の文化と商習慣に精通した彼(彼女)の力が不可欠です」といった、事業戦略と本人のスキルを結びつけた熱意ある説明が求められます。
条件4:業務内容の【専門性】
採用する外国人が担当する業務は、誰にでもできる単純作業では許可されません。大学での専攻や過去の職務経験を活かせる、専門的な知識や技術を要する仕事であることを、雇用契約書や職務記述書で具体的に示す必要があります。ITエンジニアや海外取引担当などが典型例です。
条件5:報酬の【妥当性】
支払う給与が、同じ業務に従事する日本人と同等額以上であることを約束します。これは外国人という理由で不当に安い賃金で雇用することを防ぐためです。適正な報酬を支払えるだけの経済的基盤があることは、結果的に事業の安定性の強力な証明にもなります。
迷わずできる!外国人雇用の手続き、全4ステップ完全ガイド
外国人雇用のプロセスは、一見複雑に見えるかもしれません。しかし、全体の流れを4つのステップに分解すれば、あなたのやるべきことは驚くほど明確になります。一つひとつのステップを着実にクリアすることが、成功への最短ルートです。
STEP1:採用計画と雇用契約の締結
まず、個人事業主であるあなたが、どの方法で外国人を採用するかを決定します。その上で、採用する方と労働条件を綿密にすり合わせ、雇用契約書を作成・締結しましょう。給与や業務内容を明記したこの契約書が、ビザ申請全体の土台となります。
STEP2:必要書類の準備
次に、ビザ申請に必要な書類を完璧に揃える工程です。個人事業主としてのあなたの事業を証明する書類と、採用する外国人本人に関する書類、その両方を集めます。次の章の詳細なチェックリストを使い、漏れなく準備を進めてください。ここでの準備の質が、審査のスピードと結果を直接左右します。
STEP3:出入国在留管理局へのビザ申請
書類が全て揃った段階で、管轄の出入国在留管理局へビザの申請を行います。海外から呼び寄せるなら「在留資格認定証明書交付申請」、日本在住者のビザを変更するなら「在留資格変更許可申請」です。審査には通常1ヶ月から3ヶ月ほど要するため、事業計画に影響が出ないよう、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
STEP4:【忘れずに!】雇用開始後の法的手続き
無事にビザが許可され、外国人が入社したら、ここからが信頼される雇用主としてのスタートです。日本人従業員と同様に、ハローワークへの「外国人雇用状況の届出」や、社会保険・雇用保険への加入手続きが法律で義務付けられています。雇用主としての信頼を損なわないためにも、これらの手続きは必ず行いましょう。
【チェックリスト付】個人事業主の外国人雇用|ビザ申請の必要書類一覧
ビザ申請の成否は、書類準備で9割決まると言っても過言ではありません。特に個人事業主の場合、事業の実態をご自身で証明する必要があるため、一つひとつの書類の質と量が審査結果を直接左右します。ここでは、基本的な必要書類をチェックリスト形式でご紹介します。
【事業主側】事業の信頼性を証明するための書類
個人事業主のビザ申請では、法人のように登記簿謄本が存在しないため、これらの書類で事業の信頼性を多角的に証明する必要があります。
事業の「概要」を証明する書類
- 給与支払事務所等の開設届出書の写し
- 給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(直近3か月分)
- 事業内容を説明する資料(Webサイトのコピー、サービス案内資料など)
事業の「安定性・継続性」を証明する書類
- 直近年度の確定申告書の控え
- 事業計画書(開業1年未満で確定申告書がない場合に特に重要)
- 取引先との基本契約書や請求書、納品書、通帳のコピーなど、事業の実態がわかるもの
【外国人本人側】経歴と能力を証明するための書類
採用する外国人本人には、学歴や職歴が、担当する専門業務の要件を満たしていることを証明する書類を準備してもらいます。
- 証明写真(縦4cm×横3cm、3ヶ月以内に撮影したもの)
- パスポート
- 在留カード(日本在住の場合)
- 履歴書(学歴・職歴を詳細に)
- 大学等の卒業証明書または卒業見込証明書
- 大学等の成績証明書
- 職務経歴書(転職の場合、担当業務と実績を具体的に)
- 日本語能力を証明する書類(例:JLPT合格証明書など、職務で必要な場合)
注意!上記書類はあくまでも一例です。状況により他の資料の提出も必要になります。
専門家(行政書士)に依頼すべき?費用とメリットで考える判断基準
ここまで読み進め、個人事業主の外国人雇用が十分に可能であること、そして、そのためにやるべきことをご理解いただけたはずです。最後の判断のポイントは、「この複雑な手続きを、自分自身で進めるべきか、それとも専門家である行政書士に依頼すべきか」という点ではないでしょうか。ここでは、その意思決定に役立つ具体的な判断基準を解説します。
専門家に依頼する3つの大きなメリット
確かに費用はかかりますが、それを上回る価値あるリターンが期待できます。
メリット1:圧倒的な時間と労力の節約
最大のメリットは、あなたが事業の成長という最も重要な仕事に集中できることです。必要書類の収集から複雑な申請書の作成、出入国在留管理局との専門的なやり取りまで、ビザ申請には膨大な時間がかかります。多忙な個人事業主にとって、この時間を節約できる価値は計り知れません。
メリット2:不許可リスクの戦略的な低減
経験豊富な行政書士は、最新の法律や審査の傾向を熟知しています。個人事業主の申請でどこが厳しく見られるかを的確に把握し、あなたの事業の強みを最大限にアピールする申請戦略を立てます。これにより、単なる書類不備だけでなく、説明不足による不許可リスクを大幅に減らせます。
メリット3:精神的な安心感という大きな価値
「この書類で本当に万全だろうか」「もし不許可になったら、採用計画が白紙に戻ってしまう」このような不安は、事業主にとって大きなストレスです。全てのプロセスを熟知した専門家が伴走してくれることで得られる精神的な安心感は、見過ごせない大きなメリットと言えるでしょう。
失敗しない専門家の選び方
後悔しない選択をするために、最低でも次の3つの視点は欠かせません。
第一に、就労ビザ申請、特に個人事業主の案件を豊富に扱っているかという実績。ホームページで許可事例などを確認するのが有効です。
第二に、料金体系が明確であること。「〇〇円〜」といった曖昧な表示ではなく、どのサービスにいくらかかるのか、総額でいくらになる見込みなのかを事前に具体的に示してくれる事務所を選びましょう。
第三に、コミュニケーションがスムーズで、あなたの状況を親身に理解しようとしてくれるか。無料相談などを活用し、信頼できるパートナーかを見極めることが重要です。
※ ビザ申請の専門家「行政書士」とは?依頼するメリットについて
【まとめ】さあ、準備は整いました。個人事業主だからこそ、優秀な人材と共に未来を創りましょう。
個人事業主が外国人を雇用することは、決して不可能なことではありません。むしろ、あなたの事業を飛躍させるための、非常に有効な戦略の一つです。本記事で解説してきた通り、ビザ申請を成功させる鍵は、あなたの「事業の安定性」と「外国人雇用の必要性」を、客観的な書類でいかに具体的に証明できるかに尽きます。一つひとつの条件をクリアし、正しいステップを踏めば、あなたの熱意は必ず審査官に届くはずです。
しかし、本業で多忙なあなたが、これらの複雑な手続きを一人で抱え込む必要はありません。専門家への相談は、単なる手続きの代行ではなく、あなたの事業の未来への確かな投資です。より確実性を高めたい、あるいは少しでも不安を感じるなら、ぜひ専門家の力を活用してください。
私たちは外国人ビザ申請専門の行政書士法人35です。年間350件超のサポート実績。オンライン申請で全国の入国管理局への申請代行が可能です。失敗しないビザ申請ならお任せください。
関連するオススメ記事はこちら
- 在留カードの住所変更はどのような手続きが必要か?引越し後14日以内に届出が必要です!
- 飲食業で技術・人文知識・国際業務ビザを取得できる職種とは?
- 日本の就労ビザ19種類とは?対象者・活動内容・要件等を徹底解説
- ワーキングホリデービザから就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)への変更方法
- 特定技能「外食業」についての制度やビザ取得要件等を徹底解説!
- 関係法令:『入管法施行規則』
- 【特定活動】家事使用人ビザについて|高度専門職・特別高度専門職外国人などが雇用することが可能
- 就労ビザ申請時のポイント⁉:『審査のスピード』は会社の規模で変わるのか?
- 所属機関等に関する届出とは?外国人の方は義務です!ケース別で解説しています!
- 製造業で技術・人文知識・国際業務ビザを取得できる職種とは?

行政書士法人35
代表行政書士 萩台 紘史
2021年4月 SANGO行政書士事務所を開業
2023年9月 法人化に伴い「行政書士法人35」を設立
外国人の就労ビザ申請に専門特化した事務所として年間350件超の就労ビザ申請をサポート