インターンシップビザ(特定活動)について|海外・国内学生別の必要手続きを専門家が解説
「海外の優秀な学生をインターンシップで受け入れたい」「留学生として、日本の企業で実務経験を積みたい」。グローバルな人材交流が活発になる中、インターンシップに関するビザのルールは、企業と学生の双方にとって重要な課題です。
しかし、「インターンシップビザ」で検索しても情報が複雑で、結局どの手続きが必要なのか分かりにくいのが実情です。
この記事では、インターンシップに関するビザ・在留資格の知識を、専門家が網羅的に解説します。学生の所属(海外か国内か)と報酬の有無というシンプルな視点で、必要な手続きが明確に分かります。
目次
結論|「インターンシップビザ」という在留資格は存在しない
まず最も重要な点として、日本の法律に「インターンシップビザ」という名前の独立した在留資格は存在しません。インターンシップは、学生の状況や活動内容に応じ、主に3つの異なる在留資格・許可を使い分ける必要があります。
1. 状況に応じて3つの在留資格・許可を使い分ける
外国人学生のインターンシップに関わる手続きは、主に以下の3つです。
- 特定活動ビザ(告示9号):海外の大学に在籍する学生が、報酬を受けて長期間のインターンシップをおこなう場合。
- 文化活動ビザ:海外の大学に在籍する学生が、報酬を受けずに長期間のインターンシップをおこなう場合。
- 資格外活動許可:日本の大学に在籍する留学生が、アルバイトとしてインターンシップをおこなう場合。
2. 必要な手続きはどれ?診断フローチャート
ご自身のケースでどの手続きが必要か、以下の質問に答えてみてください。
1. 学生の所属大学はどこですか?
* → 海外の大学 → ケース1へ
* → 日本の大学 → ケース2へ
このように、まず学生が「海外の大学」と「日本の大学」のどちらに所属しているかで、適用されるルールが大きく変わります。
ケース1:海外の大学に在籍する学生を受け入れる場合
海外の大学に在籍する学生を日本へ招き、インターンシップを実施するケースです。報酬の有無と期間によって、必要なビザが異なります。
1. 報酬あり:「特定活動ビザ(インターンシップ/告示9号)」
これが、一般的に「インターンシップビザ」と呼ばれる制度です。海外の大学生が、日本の企業で報酬を受けながら実務経験を積むための特別な在留資格です。
対象者と要件
対象は海外の大学(短期大学を除く)の学生で、インターンシップが学業の一環として、卒業単位の一部として認められるなどの要件があります。期間は最長1年です。
受入企業に求められること
企業側は、インターンシップが学業に資することを示す詳細な「インターンシップ計画書」や、学生を監督・指導する「指導員」の配置などが求められます。単純作業に従事させることはできません。
申請から来日までの流れ
日本の企業が代理人となり、日本国内の出入国在留管理庁へ「在留資格認定証明書」の交付を申請します。証明書が交付された後、学生本人が自国の日本大使館でビザを取得し、来日します。
2. 報酬なし・90日超:「文化活動ビザ」
学術的な研究や専門分野の実習を、無報酬でおこなう場合は「文化活動ビザ」の対象となる可能性があります。期間が90日を超える場合に検討される選択肢です。
対象者と要件
学術上・芸術上の研究や、専門家からの指導を受ける活動が対象です。生計を立てる活動ではないため、報酬を受け取ることは一切できません。
報酬の定義
交通費や食費、滞在費などの実費支給が報酬と見なされるかどうかの判断は、慎重を要します。原則として、企業からの金銭的な支給がないことが前提です。
3. 報酬なし・90日以内:「短期滞在ビザ」または「ビザ免除」
90日以内のごく短期間で、無報酬のインターンシップ(職場見学や簡単な実習など)であれば、特別なビザは不要な場合があります。観光目的などで来日する「短期滞在」の枠組みで活動可能です。査証免除国・地域の学生であれば、ビザ申請すら不要で来日できます。
ケース2:日本の大学に在籍する留学生を受け入れる場合
既に「留学」の在留資格を持って日本に住んでいる学生を、インターンシップで受け入れる場合です。これは、海外から学生を招くのとは全く異なるルールが適用されます。
1. 原則は「資格外活動許可(包括許可)」の範囲内
ほとんどの留学生は、アルバイトをするために「資格外活動許可」を事前に取得しています。この許可の範囲内でインターンシップをおこなうのが、最も一般的なケースです。
週28時間以内(長期休暇中は週40時間以内)のルール
この「包括許可」では、労働時間が週28時間以内に厳しく制限されています。ただし、大学の夏休みなどの長期休業期間中は、週40時間まで働くことが可能です。企業側は、この時間管理を徹底する必要があります。
雇用主が注意すべき点(在留カードでの確認義務)
留学生を雇用する企業には、在留カードの裏面で「資格外活動許可」の有無を確認する義務があります。許可なく働かせると、不法就労助長罪に問われるリスクがあります。
2. 週28時間を超える場合や専攻と関連が深い場合
インターンシップの内容が大学の専攻と密接に関連し、かつ週28時間を超えて活動する必要があるなど、特別な事情がある場合は、別途「個別」の資格外活動許可が必要になるケースがあります。
有給インターンシップが「就労」と見なされるリスク
特に、長期間にわたり高額な報酬が支払われるインターンシップは、実質的な「就労」と見なされ、「留学」ビザの活動範囲からの逸脱を指摘されるリスクがあります。判断に迷う場合は、必ず専門家へ相談してください。
企業(受け入れ側)が準備すべきこと
どのパターンのインターンシップであっても、受け入れ企業側には共通して求められる姿勢や準備があります。
1. インターンシップ計画書の重要性
特に海外から学生を招く「特定活動ビザ」では、詳細なインターンシップ計画書の提出が必須です。どのような目的で、いつ、どこで、どのような実習をおこなうのかを具体的に記載し、学業への貢献度を明確にする必要があります。
2. 指導員と実習環境の整備
学生を監督・指導する日本人社員を明確に定め、実務を学べる適切な環境を整える必要があります。学生を放置したり、本来の目的から外れた業務をさせたりしないよう、社内の受け入れ体制構築が不可欠です。
3. 報酬と労働時間に関するコンプライアンス
報酬を支払う場合は、最低賃金を遵守し、労働時間管理を徹底する必要があります。無報酬の場合でも、実質的な労働と見なされないよう、活動内容には細心の注意を払わなくてはなりません。
インターンシップビザに関するQ&A
インターンシップに関するビザ手続きについて、よくある質問にお答えします。
Q1. インターンシップ終了後、そのまま就労ビザに変更できますか?
インターンシップで高い評価を得た学生を、卒業後にそのまま採用したいケースは多いでしょう。その場合、インターンシップの在留資格から、直接「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザへ変更する手続きが可能です。
Q2. 大学を卒業したばかりの人も対象になりますか?
海外の大学に在籍する学生を対象とする「特定活動ビザ(インターンシップ)」は、卒業後1年以内の者で、在学中に締結された契約に基づきインターンシップをおこなう場合も対象となることがあります。
Q3. 金銭以外の住居提供なども「報酬」にあたりますか?
金銭の支払いだけでなく、住居の無償提供といった現物支給も「報酬」と見なされる可能性が高いです。無報酬を前提とする「文化活動ビザ」などを検討する場合は、こうした金銭的価値のある提供は避けるのが安全です。
Q4. 特定活動ビザの申請から許可まで、どのくらい時間がかかりますか?
日本国内で「在留資格認定証明書」の交付申請をしてから交付されるまで、通常1ヶ月から3ヶ月程度の審査期間がかかります。学生の受け入れ時期から逆算し、余裕を持ったスケジュールで申請準備を始める必要があります。
まとめ:インターンシップの種類を正しく理解し、適切な手続きを
外国人学生のインターンシップは、その目的や条件によって、取るべき法的手続きが全く異なります。最後に、重要なポイントを振り返ります。
1. インターンシップの手続きは「学生の所属」と「報酬の有無」で決まる
まず、学生が海外の大学か日本の大学か、そして報酬を受け取るか否か、という2点で必要な手続きの方向性が決まります。
2. 海外の有給インターンは「特定活動ビザ」、国内の留学生は「資格外活動許可」が基本
これが最も基本的なルールです。一般に「インターンシップビザ」と言われるのは、前者の「特定活動ビザ」を指すことが多いです。
3. 受け入れ企業は、単純労働をさせないための計画と指導体制が不可欠
どのケースでも、インターンシップは学業や研修の一環でなければなりません。企業には、その目的を担保する体制を整える責任が課せられます。
4. 複雑なケースや判断に迷う場合は、専門家への相談が最善策
特に海外から学生を招く手続きは複雑です。安易な自己判断は、学生と企業双方にとって大きなリスクとなります。計画段階で専門家に相談することが、成功への一番の近道です。
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行政書士法人35
代表行政書士 萩台 紘史
2021年4月 SANGO行政書士事務所を開業
2023年9月 法人化に伴い「行政書士法人35」を設立
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